*以下、ツジコ・ノリコさん=T、リョウ・アライさん=A、豆柴響(JET SET)=M、ヴェルベット渕上(JET SET)=Vと表記。
──────── 恋してることによる影響とかは、何かしらあるけどね。
M:今回、RATNという新たなプロジェクトを進めるにあたっての方向性というのはどういったものを考えていたんでしょうか?
A:僕のソロの音とは違うわけじゃん。僕のソロの音に歌がのっているってわけじゃないから、それなりに考えたことはいろいろあるよ。
M:作曲のプロセスとしてはどういったものがあったのでしょうか?
A:まずは彼女の曲が20ぐらいあったの。
M:もともと書かれていた曲があったんですか?
A:2人でゼロから一緒に作った曲というのは無い。もしゼロからやったら相当大変なことなったと思うよ。予めツジコが書いていた曲が20ぐらいあって、僕がその中から選んだんです。まあ、その時点で明確に僕のセンスによる振り分けが行われているわけだよね。それで、彼女自身が作ったマルチのデータをもらってそれを僕が再構築する、という流れですね。
M:じゃあ、けっこうリミックスぽい感じになるんでしょうか?
A:そう、作業(の段取り)的にはね。
M:アライさんの楽曲と言うかトラックがあって、それの上でツジコさんが歌ったということでは無いと。
T:うん。でもまあそれってリミックスということではないのよね。
A:もちろん、リミキサーとして彼女に頼まれたわけではないからね。ツジコが作ったものをもっとよくするために、僕のプロデュースで、ある違うものを作るために音を変えたりとか、音程を変えたりとかもしたわけ。
M:メロディー・ラインとか歌詞には、手を入れなかったんですか?
A:始めのセレクトの段階で僕が曲を選んでるわけだからね。これが良いってね。メロディーとか歌詞については基本的には何もしなかった。まあ、あまりにも長すぎると感じた曲については短くしたりはしたけれど。
M:最近の歌モノの所謂プロデュース・ワークと言うと、トラックメイカーがトラックを作って、ヴォーカリストがその上で歌って、というタイプが殆どだと思うのですが、今作に関してはまるっきりそういうものではなかったんですね?
A:もっと前の時代の、(DAVID)BOWIEを(BRIAN)ENOがプロデュースしたアルバム(
註1)そういうやり方の方が近いよね。
V:歌詞に関して、アライさんからのダメ出しのようなものは無かったんでしょうか?
A:歌詞はお任せです。僕はもともとインストものを作っているし、今作についても、僕がそんなに嫌いっていうようなことをツジコは歌っていないからね。もし仮に歌っていたとしても、今作にそういう曲は選んでいない。
V:ツジコさんに伺いたいのですが、今回の一連のリリースにおける歌詞について、青木さんとの共作アルバム『28』に収録されている『VINYL WORDS』の歌詞を聴いていると、今までツジコさんの歌詞には見られなかった、女心というか、女性らしさが、まあこんな紋切り型の表現で収まるものではないでしょうけど、垣間見ることが出来たような気がするんです。なにかしら心境の変化でもあったんでしょうか?
T:うーん。別になぁ。その曲も結構前に作ったからね。シャイで賢いこと言ってる人や、もう完全にシャットダウンしている人に対して怒って書いた曲とか。
V:恋しているとかじゃないんですね?てっきりそういう心情で書いたんだろうなと思っていました。
T:恋してることによる影響とかは、何かしらあるけどね。
M:ちなみに、歌詞の内容はノン・フィクションなんですか?
A:1人で作りあげる工程で、やはりどこかしらフィクションではなくなるよね。環境とか反映されるしね。あと、やっぱり精神状態が良くないと作れないよ。
T:そうやね。(自分が)満たされるときに曲を書くなぁ。
M:制作過程についての話に戻すと、最終的には、アライさんが手を入れた時点で完成ということになるのですか?その後に、ツジコさんからのフィードバックは無かったのですか?
A:そうだね。
T:微妙には(言ったよね)。
A:一応意見は聞いたけど、僕のほうで駄目ということもあるしね。まあ、歩み寄ってこうしましょうか、ということはあったね。逆に言えば、そうでなければ、彼女は自分で音を作ることもできるし、お互いやる必要も無いしね。実際冬には、ツジコはまたMEGOからソロを出すわけだし。
──────── 日本のカレーっぽい感じだったの。
M:この質問は今日だけでも何回も聞かれているかと思うんですけれど、ユニット名は、誰がつけたんでしょうか?
A:僕がつけたんですよ。ただ、イニシャルを足しだだけなんだけれど。
M:それはいつ、どのタイミングで?
A:それは全部出来てからだね。
M:それをツジコさんは反対しなかったんですか?
T:しなかったね。したっけ!?(アライさんの方を見て)しなかったよね。
A:それでタイトルは、今度はツジコが直感で『J』って言ったんですが、始めはやっぱり抵抗しましたね。あまりにもちょっと…。もうちょっとなんか無いのかってね。いきなり『J』って言われてもねぇ。
M:直感で『J』、って言われても普通は面食らうだけだと思うんですが、ツジコさんとしてはそれを提案した理由は何だったんですか?
T:それは、でも本当になんとなくね。仕上がりが、『J』、『JAPAN』ぽいかなぁと思って。まあ、『JAPAN』っぽいって言うよりも、カレーっぽいな。
M:カレー!?(愕然)
A:今日、これまでのインタビューで3回ぐらいこの事を説明したんだけど毎回(唖然!)って感じのリアクションだった(笑)カレーって、インド・カレーだけではなくて、日本のカレーってのもあるわけじゃん。
T:そう。日本のカレーは日本にしか無い。今回の仕上がりが、日本のカレーっぽい感じだったの。
M:それでは、強いて言えば、ジャンル的には、『J・カレー』ですかね?
A:ジャンルじゃないんだよ(笑)テイストだよ。
M:じゃあ、それはアライさんの作る曲のテイストがカレーっぽいっていうことなんですね?
T:そう、日本っぽい感じがするなぁ。
A:別に意図的にエキゾティックな音にしたわけでもないし、日本っぽい音を入れたわけでもない。和楽器を使ったわけでもないしね。彼女は、純粋にヨーロッパの人達と作っているし。そういうのと比較した場合に、
T:(カット・インして)日本っぽいって印象やな。海外の人が聴いたらそう思うかもしれない。
M:それは、どの辺なんですかね?
A:どの辺とかじゃなくて…。
T:(唐突に)J・MAGIC!!!
A:最終的な仕上がりじゃない。
M:でも、確かにそういうのってありますよね。例えば、フランス人が作った音と日本人が作った音の違いとか。日本人の作る音はきめ細かい感じはしますよね。緻密に作り込まれている感じ。その反面、完成度は高いのだけれども、聴いて凄く驚かされるというものは少なかったり。真面目な感じがしますよね。
T:このアルバムよりもアオキ君とのアルバムに、その日本人っぽい真面目さを感じるなぁ。でも、アオキくんと一緒にやったのは『J』(日本っぽく)じゃないなぁ。きめ細かさは、日本っぽいけどね。
M:そうなんですか。
──────── 50曲近くはあった。
M:ところで、アオキさんとはどういったやりとりがあったのですか?実際に会って作業を進めたんですか?
T:会ったり会わなかったりだね。段取りは似た感じやけど、アライさんのとは違って、アオキ君がもとから作った曲も入っていたりするなぁ。
M:それに対してアライさんとの制作は、会わずにデータのやりとりのみで制作していった感じなんですよね?
T:私の出来ていた曲を殆どアライさんにデータで渡したなぁ。
M:すると、今回ほぼ同時期にアルバムを3枚リリースして、冬にはMEGOからソロ・アルバムが出る予定、ということから考えると、ツジコさんの曲のストックは100曲近くあったんじゃないか、ということになるのですが。
T:まあ100曲はないけど、50曲近くはあった。でも、もう今、ストックはほとんど無いけどね。
M:大量のストックがあったんですね。ちなみに、お2人のボツ曲の割合は、どんな感じなのですか?
T:私は結構少ないよ。まあ、50曲作ったらその内の15曲ぐらいの割合かな。
A:僕の場合は、もう気に入らなかったら途中でやめるね。そう言えば今回、アオキ君のアルバムと僕のアルバムとで2曲ダブってるんですよ。
M:素材が一緒なんですか?
T:(曲の)出だしが一緒で、でも終わりが違ったりもするけど。
A:まあ完成形が違っているんだよね。それは、聴き比べてみると面白いところなのかもね
M:今回の同時リリースについては、そこを意識して聴いてみるという面白味もあると。
A:今回ツジコが、アオキ君と僕とで別々に振り分けて(素材を)渡していったっていうわけじゃないからねぇ。
M:それで、たまたま選んだ内の2曲が一緒だったっていうことなんですね?
A:そうだね。
M:アオキさんとの方は、アライさんとの制作方法と違ってそもそも曲があって、その上でツジコさんが歌うという段取りで作った曲もあったんですよね?
T:そう。
A:僕のとった方法論として、いつもの僕のトラックの上にツジコの歌が乗るっていうやり方を敢えて避けたんですよ。
M:それはそれで、聴いてみたい気もしますけれども。今回、お2人のユニットとしてのアルバムを聴かせて頂いて一番印象的だったのは、アライさんの音がこれまでのものとは、全然違うということだったりもするんですが。
A:僕がやっていると言わなければ、多分分からないぐらいだと思う。それはそれでいいと思ってやったんだよね。
M:今までアライさんの音は一聴ですぐにアライさんだとわかったじゃないですか。
A:まあ、ソロ作とはアプローチを変えてね。
M:今作を作るにあたっては、プロデューサー的な意識が強かったと。
A:完璧にそう。僕のカラーっていうのは、今回、2人でやっていく上で、全く出なくてもいいと思ったくらいだったんだよね。僕なりに、ツジコ・ノリコの音楽はこうだったらいいな、というのがあって、今回はそれを目指して一緒に作った。あと、リョウ・アライはビートものしか作れないと思われるのもなんだな、というのもあったしね。
M:今後もし、ツジコさんとは違って曲を作れないラッパーやシンガーからオファーが来ることがあったとしたら、それはそれでアライさんとしては、ウェルカムなんでしょうか?
A:まあ、別に面白そうなやつがきたらやるって感じだね。
V:以前にアライさんのHPで見たんですが、あるラッパーが、アライさんのアップしているトラックにラップを乗せて送ってきて、というやりとりがあったじゃないですか。そのラッパーとは、その後何かしらの進展は無いのですか?
A:あー、そうそう。SHADOW HUNTAZなんだけど。
V:SKAMのSHADOW HUNTAZ(
註2)ですか!?
A:僕はもともと彼らのことを知らなかったんだけど、いきなり彼らのメンバーの1人が僕のトラックにラップを乗っけて送ってきてくれたわけ。でさ、そいつに『僕を知っていて、送ってきたのか?』と聞いてみるとさ、あっちはあっちで全く知らないんだよ。まあ、それはそれで面白いから、データをやりとりしあって今アルバムを制作している最中なんだよ。
M:それは凄く聴いてみたいですね。
A:逆に、ソロはソロでその世界があって、例えば、イルリメとやったとき(
註3)と僕のソロ・アルバムのトラックとでは、また全然違うんだよ。あれは、イルリメのことを考えてイルリメの為だけに作ったトラックなんだよね。
M:とは言え、あれは完全なるリョウ・アライのサウンドですよね?
A:まあビートがあるからね。でも、今回はツジコの音楽性にビートを持ってきてぶつけようとは思わなかった。ツジコの音楽性を最優先に考えてやったからね。
M:ちょっとこれを言うと、アライさんは怒るかも知れないんですけども、今までのアライさんのインタビューを読んだりしていて思っていたのは、いろいろコンセプトだとか、こう見せていきたいとかいうビジョンを口にしているのに、結局出てくる音がいつもの『バッキン・バッキン』(
註4)であるというか、まあでも、それが、アライさんのいいところなんですけれど。今回のコラボでも、最終的にアライさんのところで終わっていたら、また、『バッキン・バッキン』サウンドに仕上がるに違いないと思っていたんですけれど…。
A:そう(『バッキンバッキン』に)なってないのは狙いだよね。でも、僕のFROGMANから出した1枚目(
註5)とか聴いたら、全然『バッキンバッキン』じゃないからね。
M:でも少なくとも、ここ5年は『バッキンバッキン』だったわけじゃないですか。しかも、エッジの立ち方が作品を重ねるごとに強くなってきた気がするし。しかしだからこそ、今回のコラボレートは、まさに新境地を告げる第一章となる作品ということにもなるわけなんですよね。
A:そうだね。
──────── LAWRENCEがオレはオレは、でなぁ。
M:話は変わるんですが、今回、ツジコさんのリリースが全部同じ時期になったのは、どういう経緯があってのことなんですか?
T:それは私が仕組んだことじゃなくて、たまたま一緒の時期になったの。それで、迷惑なことも起こるんやろうなぁって思ってるの。周りがね。
A:プロモーションも大変だし。バイヤーも大変だし。アオキ君だって、同時よりは少しは違った(タイミングでリリースされた)方が良かったと思っていると思うんだよね。CDを買ってくれる人が両方とも買ってくれればそりゃあいいと思うんだけど。どっちかしか買わないってこともあるだろうしね。
T:まあ、結局私もそうやねん。冬に出るし。
V:あと、ROOM40からも出ますからね。
T:でも、あれは、あたしの中ではソロじゃない。
M:?とすると何なんでしょう?
T:何やろな。LAWRENCEがプロデュースしはったんやけど、LAWRENCEが、オレはオレは、でなぁ。
M:LAWRENCEがぐいぐい迫ってきたんですか?
T:そう、ぐいぐい(笑)
M:それでは、あんまり出来に納得いってないんですか?
T:好きよ。でも全然(私は作ってない)。まあ1.5曲ぐらい音とかやっているけどなぁ。
M:そんなに少ないんですか?
T:殆ど何にもしてない。ただホテルの部屋で、(鼻歌を歌う)『ふふーん』と30分ぐらい歌ったものを録音しただけ。あとから、その素材にLAWRENCEが根性で音をつけてくれたの。
M:それはそれですごいですね。
T:私も凄い感心したんやけど。でも、それをコラボって言うのはLAWRENCEが嫌だって言って、どうしてもツジコ・ノリコのソロとして今回リリースしたかったんだって。
M:そうなんですか。ところで、LAWRENCEとはどういうきっかけで一緒にやることになったんですか?
T:去年オーストラリアにツアーに行ったの。そんで、ある大きいフェスティバルのオーガナイザーが、いきなり『声を録音させてよ』って言ってきて、そんで私は、『いいよ』って言って。ちなみに歌ったときは、寝起きでまだ酔っ払っていたの。
M:でも、その状態からアルバムとして形にまで仕上げたのは相当凄いですね。
T:そうなん。あの人は、ほんま感心した。仕上がりも結構好きやし。
A:それで、僕らの曲はLAWRENCEのやったそれとも何曲か被ってるんだよね。
T:歌は違うんやけど、音とかメロディーが一緒。
M:じゃあそれもまた聴き比べてみると面白いですね。まあ、同じアーティストが同時期に3つも作品を作ったら、そうなることは不思議では無いですよね。
──────── そん時は、彼氏じゃなかった。
V:ところでいきなりなんですが、ツジコさんの幼少時代ってどんな感じなんですか?
T:そやね。小さい頃は、みんなのうた(
註6)とか聴いていた。で、その後はオフコースを聴いてたなぁ。あとは、スイミングの帰り道で、松田聖子や安全地帯やユーミンのテープを聴いて帰っていた覚えがある。そうそう、スポーツ少女やったよ。
M:かなり意外ですね。どんなスポーツやってたんですか?
T:結構何でもやってたよ。陸上で100M走っていたし、サッカー、バスケットもしてた。休みの日には、テニスとかもしてたしなぁ。まあ、そん時から歌が好きやったけど、コーラス部に入るとかは、ありえへんかった。それで、大学生になって、歌が好きやし、音楽も興味あったし、なんかね、バンドのサークルに入ったの。
M:軽音楽部みたいな感じの?
T:そう、軽音楽部。そこでは、つまんない音楽ばっかりなわけ。
M:時期的にはバンド・ブーム後期位ですよね?
T:バンド・ブームとかあったよね。高校の時とか。(急に思いついたように)そういえば、バンドやったことあるわ。1週間ぐらいやっただけだけど。女の子バンドでみんな興味なかったから、すぐ飽きて終わったんだけど…。そん時のパートはヴォーカルで、そういえば、レベッカのカヴァーやったわ(笑)
M:ツジコさんの歌うレベッカ、聴いてみたいですね(笑)
T:思い出すといろいろとおもろいな。そのうちに、いろいろ聴くようになって、そんでね、ノイズ音楽を聴くようになったの。その当時は、灰野敬二(
註7)さんとかは、あんまり知らなくて…。
A:今となっては競演も果たしているけどね。
T:そんで、お友達のお家にCDとかレコードがあって、いろいろそこで聴かしてもらったんやけど、『何それ、すごいいいね。』と思ったのが、MEGOのPITAの音楽だったの。いろいろ聴かせてもらったんだけど、今でも覚えてるのは、そのくらいかな。
M:その友達って実は彼氏ですよね?(笑)
T:彼氏。でも、そん時は、彼氏じゃなかった(笑)
M:女の子が家に遊びに来て居る時にPITAをかけるのってかなりハードコアな彼氏だと思うんですけど…。
──────── エキゾチィックな部分に萌えたんだよ。
V:まあ、PITA繋がりということで。2枚目のアルバム『少女都市』でMEGOから鮮烈なリリースを飾ったわけですが、それにはどういった経緯があったんですか?
T:'00年に青山のCAYであったMEGOのコンサート(
註8)に行った時、PITAに渡したん。その頃まだ曲を作り始めたばっかりで、パソコンとか無くてカセットテープで作っていたなぁ。あと、その時には日本の人にもいろいろ渡したんよ。
A:で、日本のレーベルは無視したんだよ。
T:私ね、たぶん5人くらいに渡したよ。まあ、レーベルかどうか分かんない(!!)けどね。そんで、その後PITAからメールで返信があったの。
M:まあ、今でこそFENNESZのブレイク以降辺りからレーベルのリリースのレンジが広がったわけですけれども、MEGOってツジコさんが出すまでは、本当にハードコアなレーベルでしたよね。甘ったれたこと言ってんじゃねー!!って感じのレーベルでしたよね。
T:だから私もびっくりしたよ。
A:しかもさあ、聴いていいと思ったその本人に渡して、その人が反応してくれたっていうのは運命的な繋がりだよね。
T:ほんまや(本当に嬉しそうな声で)。
M:そこで下世話な、そうだと面白いなぁっていう視点で見ると、ヨーロッパ人が日本人のオンナノコの少女性に萌えてるっていうところもある程度はあるんじゃないかって気がするんですが、そこんところはどうなんですか?
T:それは、無い。たぶん無いよ。まあ、きっとね…。
A:エキゾティックな部分に萌えたんだよ。
T:PITAはね、あの人凄い迷惑なぐらいはっきりしているの。でも、私が作る作品はまあ絶対じゃないけれど、ちょっと間違いがあったとしても、いつも信頼してくれる。『何でも(ツジコの)楽しく作ればいいよ』って私に言ってくれるの。
M:でも疑問に思ったんですが、もともとPITAは、ツジコさんみたいな?歌モノを聴いているんですか?
T:聴く、聴く!!何でも聴くよPITA。
M:そうなんですか。それでPITAがアジアのエキゾティックな可愛らしいオンナノコに対して萌えたみたいなものは無いんですかね?しつこいかも知れないですけど。
T:でもPITAは、いろんなアジアのオンナノコのミュージシャン知ってるもん。そんなにたくさんは、いないけどね…。
M:他のアジアのアーティスト達は、出してないじゃないですか。とすると、特にツジコさんに対して萌えだったんじゃないですか?
A:でも、萌えだけじゃなくて彼女の才能を感じとったからリリースすることになったと思うんだよね。普通に萌えだけだったら、さっきのアジアのミュージシャンも出してると思うけどな。まあ最初は萌えだったかもしれないけど。
T:そう。一応FENNESZとかも一緒にみんなで会議したってよ。
A: これは面白いじゃないか、と思ったのは音だということだね。
M:でも今思うと、あれがMEGOのリリースが広がりを見せた分岐点でしたよね。ツジコさんが出たから、FENNESZの"ENDLESS SUMMER"(
註9)が出せたってのはありますよね!?
T:う〜ん。
M:あれ(ツジコさんがMEGOからリリースしたこと)は、かなり衝撃的だったですからね。
T:FENNESZもすごく気に入ってくれて、出せるようになったの。
M:そうなんですか。インタビューとかを読んでも、何を言っているか分からないようなレヴェルの話ばかりしていた凄腕プログラマーの人たちに、これは格好良いなって思われたのは凄いことですよね。非ミュージシャン的な、サウンド・デザイナーとしての側面が強かった人たちが、ツジコさんのような歌が乗っている所謂ポップな、勿論全然異質なものではありますが、音をリリースしたということは、よっぽど彼らが気に入ったってことですよね。
A:会議までしたって言うからね。単に、彼女に萌えという感情だけではなく、それ以上に何かを感じとったんだろうね。
──────── 写真のモデルをやっていたの。
V:'03年には、TOMLABからリリースされましたが、それはどういった経緯から出すことになったんですか?あと、先ほど出てきたように運命的な出会いであったはずのMEGO以外からリリースする理由というのは、何だったんですか?
T:今でもそうなんだけど、MEGOから出すのは1人でやる時っていうのがあるの。まあ、馬鹿な話やけども。
M:それは誰がジャッジしているんですか?
T:私がそう決めているの。(TOM LABから出したのは)恩田さん(
註10)とやってたのもあって。でも、いろんな人は別にMEGOから出したいとは思って無い。なかなか売れへんし。
A:コアなレーベルだしね。
M:恩田さんとはどういうきっかけで知り合ったんですか?
T:恩田さんにもカセットテープを渡したの。'00年ぐらいだったかな。当時恩田さんは写真撮っていて、知り合った当初は、恩田さんの写真のモデルをやっていたの。
M:そうなんですか。その写真は世に出ていないんですか?
T:NYとかで展示してたな。そしてそれからは自然の流れで一緒に音楽をやるようになったの。
M:それで恩田さんが、SOFTL MUSIC(
註11)からリリースしていたこともあって、TOMLABからなんですね。ではその作品にどうしてアライさんが参加されることになったんですか?
T:そん時からアライさんの音とか知ってて、なんとなく私が、頼んだの。
M:でも、アライさんのスタイルは『バッキンバッキン』じゃないですか。自分の曲も『バッキンバッキン』にされたいと思って頼んだのですか?
T:私、『バッキンバッキン』好きやもん(笑)あと、『バッキンバッキン』の人は、いつもバッキンバッキンするとも思ってないしな。
M:でも、プロデューサーを起用するという時には普通、まずそのプロデューサーのサウンドのイメージというものがあって、やっぱりそれらしいサウンドに仕上げて欲しいと思って起用する、というのが多いと思うのですが。では、今回のツジコさんの場合はそうではなくて、単にアライさんの音が格好良いから、何を頼んでも格好良くなるだろうと思ったから頼んだということになるわけですよね。
T:そうそう。
A:それは、彼女なりの勘。センスだね。
M:でも、まあ逆にもしかしたら、アライさんがお構い無しにツジコさんの曲を『バッキンバッキン』なサウンドに仕上げてくる可能性も無いわけでもないじゃですか?
A:だけど、僕は僕でプロデュースということをしっかりと考えて制作しているから、自分のアーティスト・エゴをぶつけるわけではないんだよ。もともとのツジコの音楽があって、それを僕が理解した上でそれではこういうアプローチはどうかなって考えてやったからね。
M:そうして前作でのそういった経緯を踏まえ、更にその流れを押し進めた形として今回のコラボレーションが実現していくわけですね?
A:そう。
M:"FROM TOKYO TO NAIAGARA"では恩田さんの参加にも驚かされましたが、それ以上にアライさんが参加されていたということが、一番の衝撃でしたしね。
A:僕は、意外とストライク・ゾーンが広いんですよ。自分のソロ作は意識してある一定のカラーに仕上げているけれども、本当はもっといろいろやりたいくちなんですよ。
──────── 親衛隊の声援がすごいんですよ。
M:アライさんは、歌謡曲も大好きじゃないですか?今後、歌謡曲的なアプローチをとってみる予定というのは無いんですか?
A:好きだよね。でも、なかなか自分がやろうというところまではね。ああいう歌謡曲のような音楽は、やろうっていう一言じゃ(簡単には)出来ないですからね。
M:(井上)陽水みたいな曲を作りたいとは思わないんですか?
A:陽水が凄いのは、僕のメガ・ミックス(
註12)とか聴いてくれると分かると思うんだけど、最初はフォーク・サウンドだったりするんだけど、そこからものすごく変化していっている。そこが本当に凄いんだよね。でもそんな大きな変化があるにも関わらず、陽水っていう1つの器に収まっているって事が凄いんだよ。例えば吉田拓郎とかだと、サウンドがあんまり変化してないんですよ。全然(変化の)規模が違う。それが陽水の凄みです。
M:愛情があり余って、陽水をリミックスしてみようかなという流れにはならないんですか?
A:僕は、愛情があり余ってリミックスをするという方向にはいかないんだよね。それよりも、メガ・ミックスみたいなかたちで僕の好きな陽水の部分を凝縮させたいって思う。例えばYMOとか凄く好きだけど、あまりリミックスはしたくないし、いじりたくないんだよね。そういえば、僕が作った松田聖子のメガ・ミックス(
註13)あるじゃない!?今回あれを、ツジコに送ったんだよね。
T:そう。あれよかった。なんか変な曲や有名じゃない曲とかいっぱい入ってたなぁ。
M:僕も、なんとなく知っている曲が満載なんだろうと思って聴いたんですけれど、全然知らない曲も多かったです。
A:(松田聖子の)アルバムの曲を普通に入れてるんだよ。
M:あれを聴いて、オタク的な感じがするというか、本当に松田聖子が好きな人が作ったミックスっていう感じがしました。
T:声援とか入ってて、凄い楽しかったしな。
A:そう。そのミックスのボーナス・トラックで親衛隊ミックスってのが、入ってるんですけど、それがまた凄い!!!
M:ええ!!!!
A:あ、最後まで聴いていないんじゃん!
M:あ、すいません(笑)
A:松田聖子がテレビで歌った時の音源も入っているから。テレビだから松田聖子の親衛隊の声援とかが入っているんだよ。で、最後におまけでそれをエディットしたものを入れたわけ。とにかく、親衛隊の声援が凄いんだよ。もう本当に尋常じゃない。
M:まあ、アライさんも尋常じゃないですけどね(笑)
T:アライさんそういうとこがほんとおもろいなぁ(笑)
A:それを聴いていると思うんですけど、こいつら(親衛隊)こうやっている限り不良にはならないなぁと。
T:そんでそれをな、お家でフランス人の彼氏と一緒に聴いていたの。私は凄い喜んで聴いているんだけど、彼氏が、『やめてくれ。やめてくれ』って言うの。
M:フランス人にはやっぱり松田聖子の魅力は伝わらないと。
T:お家でも何度も日本人の曲を聴こうとするんだけど、もう完全シャットアウト。
M:家で聴こうとする、彼氏に聴かせようとする日本人の曲って例えばレベッカですか?(笑)
T:レベッカはさすがに持ってへんな。フィッシュマンズとか井上陽水とかを聴いてるよ。
M:その辺のアルバムはやっぱり買って持っているわけですよね?
T:井上陽水は好きやから、日本に帰ってきた時買ったの。アルバムのタイトルが『カシス・オレンジ』みたいな…。なんだっけあのタイトル?
A:『カシス』(
註14)だね。最新アルバムですよ。
T:そうそう。それで、彼氏は駄目とは言わないけど、『ちょっとやめない?』って言われるわけ。聴いている内に退屈しちゃうんだって。
A:まあ、僕らが、韓国のポップスとかアラブの音楽とかを好んで聴かないのと一緒だよね。でも、松田聖子のあのサウンドの密度は、洋楽には無いものなんですよ。全盛期のアレンジとかは、本当にもうカオスだから。あれは日本ならではっていうか、密度が濃すぎるんだよね。洋楽だったら、あの当時はもうちょっとすっきりとしている。まあそれがたまんないんですけどね。でも、その感覚は、日本に住んでいないと分からないと思う。その国のその時代の空気を知っていないとね。
T:松田聖子は良かったんよ。
V:アライさんは、当時、松田聖子の大ファンだったんですか?
A:僕は、別に大ファンじゃないんですよ。
M:大ファンじゃないけど、ああいうものを作ったと。
T:それって別に松田聖子に萌えじゃないでしょ?
A:萌えではないなあ。当時、親衛隊の気分じゃなかったんですよ(笑)でも、音楽的に凄い評価しているんだよ。歌もそうだけど、バックのアレンジとか、総合的に凄くよく出来ている。ロックがどうとかポップスがどうとかは関係無い。一応、立ち位置としてはアイドルなんだけど、作ってる方も、もう最初からアイドルという粋を超えるように作っている。
M:とすると、萌えではないから今の松田聖子はさすがに気になっていないわけですよね?
A:そうだね。聴いてみたいとは思うけれど、何が何でも聴くって訳じゃないよね。
M:松田聖子を聴くとしたら、どのアルバムがお勧めなんですか?
A:まあ、僕のミックスでいうと、デビューから'84年まで、正確にいうと'83年(
註15)までだね。
M:陽水はオール・タイム良いんですか?
A:何年までなのかは忘れたけど、一つの区切りとしては'90年まで、だよね。アルバムで言うと『ハンサム・ボーイ』(
註16)までだね。90年代はさすがにもう…って感じ。僕のミックスもこの『ハンサム・ボーイ』までだしね。
M:ツジコさんは松田聖子のどの曲が好きなんですか?
T:いろいろあるよね。私は、A面とかやね。あんましB面とか知らへんで。えーとねぇ、秋の、秋がどうじゃら…っていう曲なんやけど。
A:『風立ちぬ』?
T:『風立ちぬ』もいいけど、常夏みたいな曲、『天国のキッス』みたいな。あっ、そういえば『天国のキッス』もいいね。
A:だってそれ、作曲が細野晴臣で作詞が松本隆ですからね(
註17)。それで悪いわけ無いんだよ。最高のスタッフが松田聖子をバック・アップしていたんだよ。あとユーミンとかも参加してるしね。そういう人が、寄ってたかって松田聖子に曲を提供しているわけですらね。それは、もう凄いですよ。
M:その時代のトップ・アイドルだけが許される特権ですよね。その当時の一番良いプロデューサーを起用出来るって。
V:さっき、フィッシュマンズを家で聴いているっていうお話だったんですけれども、初めてツジコさんを聴いた時、すごくフィッシュマンズの佐藤伸治の声を思い出したんです。フィッシュマンズについてはどう思いますか?
T:フィッシュマンズなんて存在も知らへんかったの。でも、他の人に私がフィッシュマンズってぽいねって言われて、ほんで聴いてみたら、好きやったの。それが、'00年~'01年かな。でも、よう似ているとは言われるなぁ。
M:アライさん的には、フィッシュマンズはどうなんですか?
A:嫌いですね。声が(忌野)清志郎(
註18)に似ているから。俺はもうRC世代(
註19)だから、フィッシュマンズを聴くんだったら、『シングル・マン』を聴けっていう感じですよ。
T:清志郎に似てる?
A:うーん。あと、声だけじゃなく、レゲエとかダブとか嫌いじゃないんだけど、ちょっとそれに偏り過ぎかな…。
M:でもそれって、MUTE BEAT(
註20)と言うかこだま和文とかがプロデュースしていた初期の頃の音ですよね。後半になっていくにつれて、ブレイクビーツだったり、どちらかといえば、ポスト・ロック的な要素が強くなっていった。で、その度合いが増していくにつれて、ヴォーカルのフワフワ感も増していったという感じはしてましたけれど。
A:まあでもそんなにきっちりとは聴いていないからあんまり言えないんですけどね。
──────── 僕のDJは終始MICHAEL JACKSONだったんですよ。
A:今、中野のHEAVY SICK ZERO(
註21)で、イルリメとかやけのはら(
註22)とかとイベントを一緒にやっているんだよね。『MODE DOWN』(
註23)っていうイベントなんだけど、もうすぐ始めてから1年経つんです。実はこのイベントの初回にはツジコに出てもらったんだよ。
T:そうそう。凄い楽しかったん。
A:最初の頃は、それこそ30人くらいお客さんが来てくれていたんだけど、回を重ねるごとにどんどん集客は減っていってるんだよね。でも、出演者のテンションはそれに反比例して盛り上がっていっていて、最近は本当にもうもの凄いことになってるんですよ。前回やった時は5人くらいしか来てなかった(笑)んだけど、もう100人以上来てるんじゃないかと錯覚するぐらい盛り上がってる。(おもむろに持っていたパワーブックを起動させ)実は、毎回きっちりフルで7時間録音しているだけど聴いてみる?
M:是非!お願いします。
A:この時の僕のDJは、終始MICHAEL JACKSON(
註24)だったんですよ(笑)
M:確かにこの歓声は凄いですね。とてもフロアに5人しか居ない状況とは思えない。(1人がもの凄い声で叫んでいるのを聞いて)これってやけのはらくんの声ですよね(笑)本当に100人も居るんじゃないかと錯覚するぐらいの盛り上がり。(この盛り上がりっぷりを、凄まじいという言葉でしかお伝えすることが出来ないのが残念です。)
T:ほんまやな。楽しそうやわ。
A:今度大阪に行ってやるんですよ、
M:おお、すごい!!!僕も次に東京でやるときは、必ず参加します。
T:私も、多分東京居るから次の回は行けるはず。楽しみやわ。
M:じゃあもう朝になったことですし、そろそろ終了にしましょうか。今日は、長い時間本当にありがとうございました。
A&T:こちらこそ。