![]() フレンチ・アンダーグラウンドの現在を俯瞰するにあたって、MR.Oizo から話を始めようと思います。
全世界を席巻した所謂フレンチ・タッチ真っ只中の 1999年、"F Communications" からリリースされた一枚の奇妙なシングル、『Flat Beat』。骨組みしかないハウス・トラックの上でひたすら時代錯誤のブリープ音がループするだけのこの曲は、リーバイス・ヨーロッパのキャンペーン・ソングに採用され、この年を代表するヒットを記録しました。しかし、それは、 Oizoこと映像作家(で、Laurent Garnier のヴィデオ・クリップなどで比較的知られた存在だった)Quentin Dupieux 自身が手掛ける CM・キャラクター Flat Eric 君(ref.)のキャッチーさあってこそ、という点は否めません。実際、そのあとリリースされた Oizo のファースト・アルバム『Analog Worms Attack』は大コケしましたが、Eric 君はいまだに大人気。つまり、"Flat Beat" は一般的にはノベルティ・ソングとしてしか理解されていなかっただろうと。その後、Dupieux が音楽家としては表舞台から姿を消してしまったこともその印象に拍車をかけました。いや、正確には“姿を消したようにみえた”、なのですが。
一方、フレンチ・タッチ、もしくはフィルター・ハウスがブイブイいわせる裏で、ジワジワとシーンを広げていたのがフレンチ・ミニマル・ハウスです。その中心となるアーティストがPepe Bradock(>Feature Article 017) と Ark で、Trankilou というユニットも組んでいた彼等は、それぞれ "Kif S.A." と "Blif" という国内レーベルを拠点としながら、Losoul や Herbert といった国外ミニマル・ハウス・アーティストとも親交を深めつつ、細々と活動していました。そんな所に現れたのが Oizo だったのです。もともと友人であったとはいえ、音楽家ではなかった Dupieux がつくった、冗談としか思えない、しかし圧倒的なオリジナリティがある音楽は、シーンに大きなインスピレーションを与えたのでしょう、それまではまだまだディープ・ハウスを引きずっていたフレンチ・ミニマル・ハウスも、しだいに彼のマナーに従って、独特のユーモラスな表情を身につけていきます。"Karat", "Circus Company", "Telegraph", "Kracked", "Dialect", "Grill" などのレーベルが次々と立ち上がり、スプリット盤も積極的にリリースされ、様々なユニットがスタートし(やはり Ark にはリーダーとしての自覚があるのでしょうか、Dupieux との Deperrissement Progressif、Shalom と の Shalark、Cabanne との Copacabannarkなど、彼を中心としたユニットは特に多いです)、シーンはムーブメントとしての熱を帯びていったのです。アンダーグラウンド・ハウスというカテゴリーにおいて、地味渋なクリック・ハウスが一段落つき、ミニマル・ハウスからエレクトロ・クラッシュへの回答とされる、キャラクター性の強いエレクトロ・ハウスというタームが浮上した今、フレンチ・ミニマル・ハウスのユーモラスな表情は、これ以上ないぐらいしっくりくるように聴こえます。 FRENCH ELECTRO HOUSE -
さて、話は変わっ(たように見せかけ)て、ヒップホップです。フランスのヒップホップといえば、MC Solar を始めとしたジャズ・ヒップホップや、IAM を始めとしたハードコア・ヒップホップなんかが知られていますが、そのカウンターとして登場してきたのが TTC。アメリカのヒップホップに当てはめてみれば、ミドル・スクールに対してのニュー・スクール、もしくはメジャーなサグ・ヒップホップに対してのアンダーグラウンド・ヒップホップ、ということになるのでしょうか、とにかくフレンチ・ヒップホップ・シーンの新世代であり、ウィットに富むリリックとドープなトラックを持つ彼らは、99年に "OZOME" からの『Game Over '99』でデビューし、01年にUKの "Big Dada" にライセンスされるや否や受けに受け……たというわけではなく、逆に、国外レーベルと契約するアーティストに対して過剰に冷たいプレスから総スカンを喰らってしまったようです。しかし、Tacteel や、Para One、Mr.Flash などといった国内のトラック・メーカーを積極的にフック・アップしていったことで信頼を回復し、今や彼らはブライテスト・ホープ!と持ち上げられるようにまでなりました。そう、TTC がフランスのことを考えていない、なんて勘違いもいい所です。彼らこそがフランスのさまざまなシーン同士を繋げる存在なのですから。実際、彼らを中心に据えると、フレンチ・アンダーグラウンドの地図は描きやすくなります。まず、TTC は "Active Suspention" や "Goom" のコンピレーションに参加した他、"Clapping Music" からは dDamage とのスプリット・EPをリリースするなど、エレクトロニカ〜ポスト・ロック・レーベルで積極的に録音。他にも、Tacteel と Para One が立ち上げたレーベル "Institubes" を拠点とする新ユニット L'atelier に、レーベル・オーナーやベテラン・ソロ・マイカーの James Delleck らと共に、メンバーの Teki が参加。アルバム『Buffet Des Anciens Eleves』は実に素晴らしく、TTC が結束を呼びかけてきたフレンチ・アンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンの最初の成果であり、金字塔であると言うことが出来るでしょう。そして、L'atelier も所属するレーベル "Institubes" からリリースされた Para One のサード・シングル『Beat Down EP』は、ヒップホップとエレクトロ・ハウスのクロス・オーヴァー。Oizo の『Analog Worms Attack』にもスクラッチで参加していた Feadz が、TTC たちとつるみながら、ドイツの "Bpitch Control" から発表している作品群や、Tacteel のミックス・CD も同趣向ですし、アンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンとミニマル・ハウス・シーンの交流も生まれつつあるようです(おー、繋がった)。FRENCH UNDERGROUND HIPHOP/FRENCH ELECTRO BREAKS -
それにしても、フレンチ・アンダーグラウンド。ここまでジャンル同士の交流が盛んなシーンも世界的に珍しく、まさに理想郷(まであと一歩)。この夏、いよいよリリースされる Oizo のセカンド・アルバムを受け入れる態勢もばっちり、といった所でしょうか。ちなみに、同シーンでは、Katapult("Karat"も運営)などのオープン・マインドなレコード・ショップが重要な役割を果たしているようです。JET SET も日本のアンダーグラウンドにおける Katapult になれるよう努力していく次第でありますので、次は店頭で、ホームページで、直接彼らの音に触れてみてくださいませ。そして、6月の "route" では、フランスから Tacteel、Para One、Feadz を招聘します。彼らはライヴ / DJ も素晴らしいですよ。お楽しみに!TEXT: RYO ISOBE(JET SET TOKYO)
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