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vol.141
Turntable Films
2010-02-16
京都のヤング・インディ・カントリー・バンド★激最高デビュー・ミニ・アルバム!!
- まず、今振り返ってみて前作は自分たちにとってどういう作品だったと思う?
- ぶっちゃけると、あのアルバムはバンド結成2ヶ月目で作った作品で。自分が(留学先の)カナダから帰ってきたばっかり。だから、なにも固まってない状態で作ったから、メンバー4人のその時のアイデアが率直に入ってる作品って感じ。僕がカナダで作りためてた曲を、今のバンドで鳴らしてみた、その第一歩の記録というか。
- ただ、あの作品をリリースしたことによっていろんな状況の変化があったと思うんだけど、自分たちにとって一番大きかった出来事はなに?
- それはやっぱり…小山内さん(@secondroyal)との出会いかなあ。今回のCDも小山内さんが出したいってところからはじまっているし。多分、自主制作だったらあと4年後くらいだったと思う(笑)実際、前のアルバムをリリースしたときは、どっかのレーベルから自分たちの CDを出すことになるとかは一切思ってなかったし。ライヴやるならCDあったほうがいいし、それが売れれば活動の資金にもなるなくらいにしか。まあ、残るものがあれば繋がりも広がるかなーっていうのはあったし、それでモナ・レコードとか他の京都のバンドと仲良くなったりもしたけど。
- 実際、小山内さんと知り合う前は〈セカンド・ロイヤル〉にはにどういうイメージを持ってた?
- いや、特にない。というか知らなかった。ロイヤリティーズのライヴに誘ってもらう前にメールをもらって、それで、ああ〈セカンド・ロイヤル〉ってレーベルが京都にあるんや~って。で、どんな人たちがいるんやろと思ってみたらハーフビーとかハンサムボーイ・テクニークとかがいて。でも、ハーフビーとかも名前くらいしか知らなかったなー。もともとクラブ・カルチャーとかに接点がなかったんで、イベントとかも全然知らなかったし。だから、最初の感想は「なんでここから?」
- (笑)
- で、みんなレコード屋で働いてたりとか、音楽にうるさい人が多いじゃない?だから、リリースが決まってからセカロイのイベントとかでライヴやるのも心の底では嫌やな~と思ってて(笑)
- じゃあ、まったくゼロの地点からバンドとレーベルの関係は始まったわけだけど、リリースにいたるまでの仲を築き上げていくなかで、〈セカンド・ロイヤル〉のどういったところに共感や魅力を見出していったの?
- はっきりとここからみたいなポイントはないんだけど…ただ、ニュー・ハウスを出すっていう話をしてもらったときに、今の〈サブ・ポップ〉とか〈ドミノ〉、〈XL〉みたいな、いろんなおもしろいバンドがいるレーベル、「これも○○のバンドなんやー」みたいなレーベルにしたいっていうのを聞いて、僕の中ではピースが繋がったというか。僕らがここから出しても別におかしくないんやなーと。ちょっと前に出たコンピレーション(『セカンド・ロイヤル Vol.5』)にしても、正直外の人間から見たら、どういうレーベルやねんって絶対思うし(笑)コンピレーションって普通はもうちょっと統一性があるやん。でも、いろんなジャンルのところにいろんなおもしろい人がいるっていうなかに、自分たちもいたいと思うし。それに、実際引いた場所から見ても、今の〈セカンド・ロイヤル〉はおもしろいと思うしね。
- 前作はかなりアメリカン・ルーツ寄りだったじゃない?だから、最初に〈セカンド・ロイヤル〉からリリースするっていうのを聞いたときは確かにびっくりしたよね。ただ、今作は今のインディ感もすごく出ているので、実際に今回の音源を聴くと、すんなり伝わりそうな感じもするけどね。
- そう、今思い出したんだけど、実はハンサムボーイ・テクニークの「リーチ・フォー・トゥモロー」が結構ターニング・ポイントになってて。前作のとき、僕はアメリカン・フォーク、オルタナ・カントリー、シンガー・ソングライターのことしか頭になくて、正直、打ち込みとかサンプリングで作った音楽とかとかまったく聞いてなかった。でも、〈セカンド・ロイヤル〉行ったり、JET SETで働きながらBBCのラジオとかを聴くなかで、そういうのも自然にいいなーって思うようになって。で、はじめて「リーチ・フォー・トゥモロー」を聴いたとき、めちゃめちゃ良い曲やと感動して。〈セカンド・ロイヤル〉ってこんな曲もあるんやーってなって、それでレーベルの株価がむちゃくちゃ急上昇した (笑)
- じゃあ、JET SETでの勤労も貢献してるんだ(笑)
- そうそう。まあ、勤労ってよりも、そこで流れてる音楽とかが耳に入ってくるから、それを自然と組み合わせれるようになって。それが、前作のときと比べて僕の中で一番変わったところじゃないかと。
- 今回のミニ・アルバムの制作当初は、どんな作品にしようって思っていたの?
- まあ、前作はあったにせよ、今回で始めて知ってくれる人が多いと思うから、まずは名刺代わりになる1枚ってのは思ってて。で、前の作品よりもポップにというのはあった。前のが茶色とか灰色とかだとしたら、今回は原色とか綺麗な色を足したいと思ってた。でも、失敗するんじゃないかな~ってめちゃめちゃ不安やったけど(笑)
- じゃあ、ポップさであったり色味を加えるために、具体的どんな工夫をしていったの?
- とりあえず友達のLAのアーティストにブラスとかオルガンを入れてもらって、それでまず僕一人では出せないようなカラフルさを足せた。あと、今回プロデューサーの上田さん(ルーファス)に音作りやアレンジの面ではかなり助けてもらった。
- ただ、上田さんが自分の制作で1ヶ月くらいスウェーデンに行ってしまうときがあって、その期間の僕の課題が、リード・トラックになるような曲を作ることになって。そのときにできあがったのが「2ステップス」。もともと、あの曲はマイモーニング・ジャケットみたいな、ちょっとビッグな曲だった。でも、ちょっと違うなーとは感じてて。で、なんとなく考えてたときに思いついたのは、この曲にアフロ・ビートを乗せたら完成するんじゃない?って。それをベースにメロディを変えたりキーボード・パートを加えたりしつつ、あのヴァージョンで完成したって感じで。そういう新しいアイデアってのは、そのタイミングで一つでてきた。
- じゃあそのタイミングで、井上くんの持っているルーツにいかに同時代性を加味していくかっていうのの雛形が一つできたのかもしれないね。でも、おもしろいのは、この曲にアフロ・ビートを乗せたらどうだろうっていう考えとか、すごくDJ的なところだよね。ハーフビーの高橋さんとかも、そういう発想ベースでやってるって言ってたよ。
- もともと、そういうありえへんアイデアとかを考えるのは好きで。前にも言ったけど、ダーティ・プロジェクターズをバンジョーでカヴァーしたりとかね。たぶん、カナダでめちゃめちゃいろんなライヴ見た経験も関係してる。どのバンドも自分のルーツを持ちつつも、それをひねった形で提示してたんよね。だから、そういう感覚を楽しむ姿勢はあるかもしれない。
- じゃあ、次からは1曲ごとに訊いていきたいんだけど。まずは、1曲目の「ホット・ティー・アフター・ザ・ランチ」。この曲は大々的にホーンが入ってたり、ビーチ・ボーイズ風のコーラスがあったりと、良い意味でのポップス感がもっとも強く出たアレンジだけど、制作していくうえでの方向性は?
- まず、ブルー・アイド・ソウルっていうイメージが全体にあった。で、リズムはモータウン。それからシティ・ポップスっぽい感じはホーンで出してもらって。ビーチ・ボーイズ風のコーラスに関しては、ハッピーでかわいらしいヴァイブを持たせたかったってところかな。
- 男の子と女の子のよくあるすれ違いをモチーフにした歌詞もポップス・マナーだよね。
- しょうもないっちゃしょうもない(笑)主人公の男の子にありがちな勘違いしてる人で、お金や名声で好きな女の子の心を手に入れられると思ってる。でも女子が求めてるのはそういうことじゃなくって、想ってくれる気持ちだけでいいんですよっていう。ただ、そういうことを女の子が思ってくれてたらいいなーっていう僕の思いなんです。だから。桂正和が描く理想の女の子みたいなもんよ。でも、実はあの歌詞には最初続きがあって、コーラスの「ユア・ラヴ/ユア・ラヴ」ってところで、その思いに男の子が気づいて、結果的に恋が成就して、二人で暖かいお茶を飲みながらハッピーエンドってところまであった。曲の構成上削ったんだけどね。
- へー。でも、そこの歌詞はないほうが良い気がするね。男の子の勘違いや妄想も含めて、男女の恋愛感の違いみたいなものをポップに描いた歌詞としてよくできてるから。
- そう言われるとよかったです。
- じゃあ、次の「2ステップス」について。この曲は PVも作られたりと、いわば今作のリード・トラック的な1曲だよね。今作の6曲は全部曲調が違ってるわけだけど、そのなかでこの曲をリード・トラックにしたのはどうして?
- これはねー…小山内社長に言われたから(笑)でも、僕も「2ステップス」は入り口としてすごくいいんじゃないかなーと思って。
- 今の海外インディと一番わかりやすくリンクしている曲だから、〈セカンド・ロイヤル〉のターンテーブル・フィルムスとしてとっかかりになりやすい曲だって気はする。
- うんうん。あの曲作ったとき、これは絶対クラブで受けると思った。最初はライヴハウスでやったらダダすべりしたんだけど(笑)でも、そのあと〈セカンド・ロイヤル〉でやったときに、あの曲だけ反応が良い意味で違って。まあ、それはお客さんってよりもレーベルの人たちからって感じやったんやけど。それで、ああ狙い通りやって。自分たち的にもそこで〈セカンド・ロイヤル〉と繋がれたって実感があったというか。
- では、3曲目の「ウォンツ・レット・ユー・ダウン」。これだけ前の自主制作盤にも入ってた曲なんだけど、この曲を録り直して収録したわけは?
- これもねー、小山内社長に言われたから(笑)まあ、前の作品は流通に乗せてないから、今後もなかなか人目にふれないかもしれないし、今作にそこから入ることで、ちょっとは前作の存在もアピールできるかなーって。で、個人的にも気に入っている曲だったし、新しいアレンジでって考えたときもあの曲はぱっと思い浮かんだんだよね。
- スウィングしてるところは共通してるけれど、前のはジャズっぽくて今回のはモータウンっぽいよね。恋はあせらずビートというか。
- うん、自分でもうまくいったと思ってる。ただ、一番試行錯誤した気もするね。メンバーのなかで前のヴァージョンのイメージが強かったところもあって。
- じゃ次、「ウェルカム・トゥ・ミー」は?
- これはねー、正直こんなにうまく録れるとは思ってなかった。ああいう勢いのある曲って録音するのすごい難しいから。散々無理無理っていろんな人に言った記憶がある。これがライヴの勢いのままパッケージできたのが一番の奇跡ちゃうかなあ。
- おめでとう(笑)「ホエア・イズ・マイ・リトル・ハート」について。これは黒人霊歌というかゴスペルっぽく感じたけど。
- お、そうか。僕の中ではね、これはアパラチアン・フォークというか、山の中で昔の民謡を歌っているっていうイメージなんよね。だから、アメリカに移民してきた頃の白人の感じかな。
- なるほど。井上くん自身はこの曲が一番好きなんだよね?その理由は?
- この曲で目指してたのは、ジム・オルークとかMウォードがやっているような、トラッド・ソングっぽいメロディ・ラインと現代的な音の質感を混ぜるってことだった。それを、自分なりに達成できた曲だから。
- そのサウンド面での現代性ってのをもう少し詳しく言うと?
- うーんとねえ、もともとサウンド的には、野外で演奏したものをそのままパッケージしたような感じを出したかったんですよ。イメージ的には、曲の最初と最後に自然音が入ってて、ただ曲自体の音はめちゃめちゃ綺麗にマスタリングされてるっていう。だから、古くさい雰囲気を出しつつも、時代が入り交じったような感じというか。
- バンドとして、井上君として、ルーツを探求しつつ、それを現代的にアップデートして表現するというのは、ライフテーマって感じがするね。
- うんうん、そうだと思う。
- その新旧の時代性の対比が一番レンジとして広かったのがこの曲なんじゃないかな?
- そうそう!そうです。だから一番好きなんかもしれん。
- じゃあ、最後の「グッドバイ・マイ・フレンズ」。これはいかにも終幕を飾るムードの曲ですね。サウンド的にはアンビエントなところもあるよね?
- そう。まあ、そこはちょっとトライしてみた。ほんとはもっとスッキリした感じだったけど、ほんとうに最後になって上田さんと、声を4回録ったりとかいろいろやってみて、ちょっとサイケデリック感じにしてみました。
- それにしても6つバラバラの曲が収録されてていずれもよく出来たっていうのはすごいよね。
- 僕はもともと全曲テイストが違うっていうアルバムが好き。だから、自分の作品でも1回使ったテイストとか手法はできるだけ使わないようにしてる。
- じゃあ、ちょっと気が早いですが、次にリリースされるであろうフル・アルバムも、そうした井上くんの志向を反映した作品になりそう?
- 僕としては、3つ、いや4つの方向性を軸にしようと思ってて。モータウンのリズムの曲と、「2ステップス」みたいなインディ寄りのやつ、であとはカントリー・ロックとか60年代、70年代のロックっぽいやつ。この3種の神器のフル・アルバムにしようかと思ってて。で、その合間をぬって弾き語りの曲とかを2、3 曲入れていくようなね。
- なるほど。楽しみに待ってます。じゃあ、リリース云々も含めたこれからのバンドの活動において、音楽性、活動スタンスなどのロールモデルになっているようなバンドはいますか?
- 日本で?
- 海外だとたくさんいるでしょ?日本で。
- う~ん……正直特に思いつかない。あんまり知らないです。
- 同じ〈セカンド・ロイヤル〉の新世代バンドとして、ニュー・ハウスについてはどういう印象を持っていますか?
- ああいう感じで、フラットにああいう音楽をやってかっこいい存在なんてこれまでいなかったよね。これまでの日本のバンドとは全然違う感じはする。演奏技術はまだ拙いところもあるけれど、そんなんたぶん今のペースでライヴやってたらうまくなるし、今のセンスを崩さすにバンドとしてスキルアップしていけばいいと思う。本人たちも見せ方とかもわかってるだろうし。
- じゃあ、こないだイベントの「セカンド・ロイヤル」でデビュー・ライヴをしたホテル・メキシコはどうだった?彼らも局所的に噂が噂を呼んでるけど。
- 風貌からは想像もできないほど(笑)センスが良くて。ニュー・ハウスとはまた違った日本人離れしたセンスを持ってるよね。周りの人たちが絶賛するのも納得できるし。すごいと思う。彼らはダース・ベイダーみたいなレーベルの暗黒面の王になっていってほしい。ホテル・メキシコって陽気な名前やのに(笑)
- (笑)じゃあ、そうしたレーベル・メイトの存在も含めて、若いバンドのシーンがおもしろくなってきてるていう感覚はある?
- うん、ある。でも、まだみんなバラバラに活動してるだけだから、もっと繋がっていかないととは思う。ボブ・ディランのローリング・サンダー・レビューみたいに、似たような音楽性のバンドが集まってずっとツアーしたりとかね。そういう中くらいスケールのシーンみたいなのがたくさんできて、それぞれにお客さんがついてて、たまにフェスティバルとかで集まって、お客さん同士もお互いに刺激を受ける、みたいなことがもっと頻繁になれば、おもしろくなるんじゃないかと思います。
- じゃあ、その先陣を切る存在になってください。
- ありがとうございます!
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