/
ROOTS CANDY
DREAMLETS、DRY & HEAVYでヴォーカリストとして活動し、国内外のフェスティバルに出演。ADRIAN SHERWOOD、MAD PROFESSOR、PRIMAL SCREAMなど90年代以降のダブ・シーンに多大な足跡を残した大御所たちとの競演も果たした歌姫リクルマイが、昨年の暮れ、ソロ活動を開始。待望のフル・アルバム『ROOTS CANDY』をドロップしたばかりの彼女にインタビューしました。
レゲエをベースとして根強く持ちながらも、ロック、カントリー、ジプシー・ミュージック等のフレイバーを盛り込んだリズム。女性らしい繊細さの中に内包される、原初的ななタフネスさや、メランコリズムを強く感じさせる豊かな表現力。LITTLE TEMPO、GOMA .. 等との豪華共演など。アルバムを聴くとそれらの要素が渾然一体となった豊穣で、包み込むようなサウンドに耳を奪われます。今回のインタビューでは、アルバム『ROOTS CANDY』に込められたメッセージや、大きな音楽愛を持った彼女自身の魅力に触れることが出来ました。
INTERVIEW + TEXT: RANKO MATSUMOTO(JET SET KYOTO)
PHOTO: Hiroto Sakaguchi
フル・アルバム『ROOTS CANDY』完成、そして発売おめでとうございます。
ありがとうございます!
まずは、ソロ活動に至るまでの経緯を簡単に教えていただけますか?
もともとバンド加入以前からシンガー、リクルマイとして自作の曲を歌っていました。DRY & HEAVYに加入して『フル・コンタクト』をリリースした直後(6年ほど前)に、事務所からソロ・アルバムを出してみないかと言われたのですが、その時点ではまだいろいろ勉強が必要だと思い、バンドで経験を積みました。いずれはソロでやっていこうと言う気持ちは強かったので、今に至るのは(自分にとっては)自然な流れです。あくまで前向きな脱退なので、ドラヘビのメンバーとは地元で会って話をしたりしますよ。
アルバムについて、お伺いしたいのですが、『ROOTS CANDY』という響きから、女性らしさと、そこに存在する強さも同時に感じました。タイトルに込められた意味、意図するものを教えていただけますか?
第一に、私の愛してやまない70年代のシンガー、JOHNNY CLARKEの“SUGAR COATED VOICE”と、HORACE ANDYの“COOL AS CANDY”という、彼らのボーカルを形容する呼称にインスパイアされました。私も個性的なハイトーン・ヴォイスという点は彼らと共通しているし、彼らのようにオリジナル・スタイルをもったシンガーでありたいという希望もこめて。第二に、飴玉のように、もしくは宇宙の星屑のように自分がちっぽけな人間だという謙虚な気持ちであるときに、はじめて地に根を張った人間になる、と。その逆に「自分は、自分は」と尊大になると飴玉くらいちっぽけな存在に成り下がる、というラスタ的な戒めのメッセージもこめました。
アルバムを通して、リスナーに一番伝えたいメッセージはなんでしょう?
このアルバム全編、ゆったりした空気が流れているでしょう?私達はこの情報化社会に翻弄され、BPMの速すぎる音楽に急がされ、立ち止まって考えることを遠ざけられているように思います。私のアルバムを聴いて歌詞を立ち止まってじっくりと考えてみてほしい。自分のことがわかれば、他人のことも、世界のことも見えてくる…。あ、これって裏メッセージかな。
ルーツ・レゲエをベースに、カントリー、ロック、ファンク等の要素が含まれた独自の世界感ですね。やはりご自身の音楽背景の多彩さが、作用してると思いますか?
もちろん、レゲエ以外にも雑食的に聴いていますので。最近はライなど中近東ものを好んで聴いています。このアルバムにもいくつかオリエンタルなムードの曲があって、そんな好みが反映されていると思います。
どれも素晴らしい曲ですが、あえて1曲お気に入りを選ぶとしたらどれですか?
全曲好きで選べません。あえて選ぶなら「朽ち果てぬ光」かな。歌っていて心が浄化されるような気がします。あ、最近アコースティックのアレンジで歌う「WHY ARE YOU IN A HURRY?」も潔くってかなり好きです。やはり1曲に絞れませんでしたね(笑)
初のソロ・ワークになる訳ですが、楽曲制作や、ライヴ活動においてバンドDRY & HEAVYのヴォーカリストとして活動していた時と比べて、心境の変化などはありますか?
心境の変化も歌いたい内容もそれほど変化はないです。そのかわり、バンドの醍醐味は「ベースがこう来たか、歌はこんな感じで!」というようなそれぞれの個性が化学反応によって新しい一つの曲を生むこと。それに対しソロ・ワークは自分の責任で全てやっていくこと。バンドでの活動をしっかりとやってきたからこそ“自分でやれる”という自信、それと、たとえ自分の音楽を全否定されても自分の音楽をやり遂げるぞ、というタフネスさが身についたと思います。
ケイ・ホリグチ氏をはじめ、LITTLE TEMPOの土岐“TICO”剛氏、同じく田鹿健太氏、ディジュリドゥー奏者のGOMA氏、REGGAE DISCO ROCKERSの西内徹氏他、豪華なメンバーが脇を固めていますが、製作はどのように進められたのでしょう?
このアルバムに参加してくれたミュージシャン達は私が信頼する人ばかり。私達ミュージシャンは言葉とは違う言語でコミュニケーションできるもの。私が彼らに対してあれこれ注文することはなく、彼らも私の曲のイメージをしっかりと捉えて演奏してくれたので、終始スムーズにいきました。
セルフ・プロデュースの面白さ、また難しさはどんな所ですか?
30代なので、いろんな引き出しがあるという点では、アイディアに事欠くことはありませんでした。納得いくまでいろんな事を試せるのが面白かったです。反面、一人でやっていると判断が鈍ってくることがあります。独りよがりでない風通しのよい作品をつくるには第三者の意見も聞くことが大事だと思います。もちろん最終的には自分が判断することですが。
声色、歌唱法ともにとても独特ですが、影響されたシンガーはいますか?
先ほども触れましたが、HORACE ANDYに代表されるようなハイトーン・ヴォイスのルーツ・シンガーの影響は大きいですね。あの声と野太いベースは本当にしびれる組み合わせだと思います。女性ではJUDY MOWATT。でも実はBOB MARLEYに一番影響受けたかもしれません。しょっちゅう歌っているので、レパートリーは何十曲もありますよ。ボブの音楽はあまりに有名で“王道”ですが、歌唱法は“超個性派”です。小節を無視した自由奔放な歌いだしやスキャットなど、聴いていて楽しくて真似したものです。
LEE PERRY、MAD PROFESSOR、ADRIAN SHARWOODといったルーツ、ダブの重鎮とも共演されてますが、彼等から影響うけたことがあれば教えてください。
私よりはるかに年上なのにエキサイティングなショウをして、パワフルな録音をしている。自分達の音楽に誇りをもって、音楽を全身で表現する。もちろんそのための体と気力が彼らには備わっている。適当に生きていない証拠ですよね。優れたミュージシャンである前に優れた人間なのだと思います。
ルーツ・レゲエに限らず、シーン全体でまだまだ女性アーティストは少ないですが、その中で活動していくことで考えることはありますか?
そうですね、本当に少ないですよね。もっと女性が出てきて欲しいと私も思います。女性は子供を持つとなかなか活動を続けられなくて、それでやめていった人を何人も知っています。本当に残念なことです。家族や周りの人たちの理解とサポートも大事だし、女性自身も音楽を何としても続けていくんだという強い意志を持たなくては、と思います。ずーっと活動している女性が増えればシーンもよりよくなるだろうし、私にとっても心強いことです。
注目している女性アーティストがいたら教えてください。
自作自演のアーティストが気になりますね。以前イヴェントで一緒だった、佐藤歩さんというギターを引きながら歌う若手のシンガーが印象に残っています。
筋金入りのレコ−ド・コレクターだとお伺いしました、特に思い入れのある3枚を挙げていただけますか?またそれにまつわるエピソードもあれば、教えてください。
ルーツ・レゲエの7インチでいえばBURNING SPEAR「MARCUS GARVEY」(FOX)、KEITH HUDSON「TRUE TO MY HEART」(MAFIA)、RANKING TOYAN「KILL NO MAN」(ROOTS TRADITION)は全てオリジナル盤で持ってますね(笑)音も太くてDJする時もよくプレイします。ロンドンに行った際にまとめ買いしたり、地方のレゲエ専門店で買ったりしています。でも実は一番数持っているのはJAMES BROWN(!)の7インチだったりします。その次がBOB MARLEY。
DJもされているそうですが、レコードは月にどれぐらい買いますか?
今はそんなに買いませんね〜、恥ずかしながら。毎月コンスタントに買うことはないです。昔は異常なほどに買っていましたが。
今後の展望をおしえてください。
ライブに力を入れます!!3月16日より始まるレコ発ツアーは、ガッツリとバンド・サウンドで。4月以降はしっとりとアコースティック・スタイルでもライブします。1曲で2度おいしいリクルマイの世界を味わってくださいね。
HORACE ANDY ::
JOHNNY CLARKE ::
BURNING SPEAR ::
TOYAN ::
KEITH HUDSON ::
JAMES BROWN ::