パリのROUGH TRADE SHOPからキャリアをスタートさせたIVAN SMAGGHEは、ROUGH TRADEの同僚だったARNAUD RABOTINIとのユニット、BLACK STROBEとして'97年にSOURCE LABのコンピレーションに参加。その曲がTREVOR JACKSONの目にとまり、2000年にOUT PUTからファースト・シングル"INNERSTRINGS"をリリース。続くシングル、"ME AND MADONNA"の大ヒットで注目を集めました。その後、BLACK STROBEとして、ALTER EGO"ROCKER"、ROYKSOPP"EPLE"、RAPTURE"SISTER SAVIOUR"などのリミックスも手掛け、高い評価を獲得。また、KILL THE DJとSETという2つのレーベルの運営、MARK COLLINとのユニット、VOLGA SELECTでの制作、パリやロンドン、ドイツなどの人気クラブでのレギュラー・パーティ出演、数々のミックスCDのリリースと、非常に多岐に渡る活動を続けています。現在、世界で最も旬で人気のアーティスト/DJの一人であると言えるでしょう。
BLACK STROBEとして活動を始めて数年後、フレンチ・ハウスが隆盛を極めた2000年初め、既存のクラブ・イヴェントに対するカウンターとしてIVANがパリで始めた"KILL THE DJ"は、じわじわと口コミで広がり、今では1000人を超える動員を記録するビッグ・イヴェントへと成長しました。今回、その中心メンバーで、KARAT、CRACK & SPEEDやBATTLE、GOMMAなどからリリースを重ねてきた女性クリエイター/DJ、CHLOEとのMIX CD『KILL THE DJ PRESENTS THE DYSFUNCTION FAMILY』のリリース・ツアーで来日していたIVAN SMAGGHEに、お話をお伺いすることができました。そのMIXCDはこれまでのイメージを根底から覆す、レフト・フィールドな仕上がりで、彼の新たな方向性を示すものでした。時代を先読むIVANの鋭い感性が提示した新しいMIX CDは、今後のシーンの方向性を示す、新たな指針となるはずです。
INTERVIEW + TEXT: KOZUE FUKUSHIMA(JET SET TOKYO)
INTERPRETER: RYOKO ITO
取材協力:MULE MUSIQ
昨年に続き、2回目の来日だと思うのですが、今回の日本の印象は?
IVAN SMAGGHE(以下I):去年、日本に来たときの第一印象は、本当にビックリだったよ!人も店も車も、すごく西洋っぽくて、インドやアフリカみたいなエキゾチックな感じは全くないよね。でも、アティテュードは西欧とは全然違うんだけどね。日本人は物腰が柔らかくて、穏やかだよ。渋谷はレコード屋で溢れてて、原宿には服屋がたくさんある。東急ハンズなんて、日本っていう国を表現するのにぴったりだよ。東急ハンズの中を一周するのに4時間も掛かったんだ。ヨーロッパじゃ、「探して見つからないものは東京に行って探せ」って言われてるくらいだよ。
確かに、日本は物に溢れてますね。東京は世界で一番レコードが集まっていると言われますが、そんな中でお気に入りのレコード屋はありますか?
I:実は今から行くんだけど、僕のおすすめのレコード屋は、SMALL PARADISE RECORDS。すごく小さな店だけど、いい店だよ。場所はCOSMIC WONDERやCISCO TECHNO店の近くだよ。あともう一つ、SLEEPING BAGSもなかなかいいよ。ストレンジなロックやインダストリアル物からイタロ・ディスコまで変な音楽ばっかりなんだ。あと、もちろんJET SETもいいし、CISCO TECHNO店もハードな品揃えだよね。たくさん店があるのはいいんだけど、時々ちょっと多すぎるようにも感じるね。例えば、ガラージュを売ってる店が多い。LARRY LEVAN的なディスコ・ミュージックを引きずり過ぎてる気がするんだよね。不健全だよ。ジャズも無駄に多いしね。
レコード屋では、必ず試聴をして買うと伺いましたが。
I:日本では基本的に新譜は買わないんだ。ヨーロッパで買うから。僕が買うか買わないかの基準は、純粋に音だけ。レーベルや、そのレコードにまつわる薀蓄はどうでもいいんだ。音だけに集中して買う。だからいいな、と思ったら、嫌いなアーティストのレコードだった、なんて事もあれば、好きなアーティストなんだけど、買わないって事もあるんだ。好きか嫌いか、そのどちらかしかない。すごくシンプルなことだよ。渋谷で買い物するなら、あらかじめ的を絞っておかないとね。少ない日数で全部は回れないし、それで結局欲しいものを買えずに終わってしまったら困るからね。
あなたは20年という長いキャリアの中で、たくさんのレコードを聴いてきたと思うのですが、何か一つを突き詰めてやろう、という時期はありましたか?
I:それはないね。それって止まるだけだと思うんだ。何かをマスターしたいと思ったこともない。色々知ると解釈が深くなるんだけど、新鮮味だったり驚きだったりは、どんどん少なくなっていく。それに、僕はどんなに知識が増えても、全てわかったとは思わないんだ。それって馬鹿げてると思うよ。音楽のセオリーを知りたいだけなら簡単だよ。本を読めばいいし、1000枚くらいのレコードを聴けばいいのさ。でもオープンなアティテュードはエンドレスなんだ。一つのことに固執すればマスターは出来るだろうけど、音楽は学問じゃないんだから。オープンでいるってそういうことじゃないから。
新しくリリースされたMIX CD、『KILL THE DJ PRESENTS THE DYSFUNCTION FAMILY』についてお聞きします。今回はCHLOEさんとの共作ということですが、選曲はどのように行なったのですか?
I:全工程をCHLOEと2人で作業したんだ。まず2人で選曲リストを作って、ミックスも2人でやったし。あと、スリーヴの文章や写真、アート・ワークまで全部ね。どんな決断も2人が納得するまで煮詰めて決めたんだ。
今回の収録曲を見ると、本当にヴァラエティに富んでいますよね。振り幅が広いけれど、統一感があって。すごくクールでした。最後の曲がBILLY CHILDISHっていうのも興味深いです。
I:BILLYは僕のアイドルなんだ。究極のパンクさ!彼は妥協を知らないんだよ。お金がないのに、20年も音楽活動を続けてるんだ。しかも、ずっと同じようにお金が儲からないことをやり続けてる。今でも毎週、ロンドンでプレイしてるんだよ!すごいことだと思わないかい?!彼は本も書いてるんだ。不遇な幼年期の思い出を綴った彼の本に、僕はひどく心を動かされたんだ。
あなた自身は、BILLYみたいに生きたいと思っているのですか?
I:僕は何かを目指したりはしないんだ。なったらなったでいいし、ならなかったらそれまでだしね。BILLYみたいになるってことより僕には守らなくちゃいけないことがあるんだ。FAITHFULであること、妥協をしないこと、お金や名誉に動かされない一貫したアティテュード、STAY TRUEであること。これが僕の信念さ。
では、あなたが主宰するイベント"KILL THE DJ"についてお伺いします。このイヴェントを始めたいきさつは?
I:始めたのは5年くらい前なんだけど、その頃のパリがひどくつまらなかったのさ。ハウス・シーンは盛り上がってたけどね。どこに行っても同じ選曲で、同じ雰囲気、同じ客。何か違うものが欲しかったんだ。で、ロックをかけようって。もっとダークで、ハードで、バンドのライヴも交えてやろう!って話になったんだ。成功したのはタイミングが良かったんだろうね。ずっと続けてきた僕らのスタイルをみんなが求めるようになってきたんだ。最初はこんな大きいイヴェントになるなんて思ってなかったしね。だけど、ノー・チャージでやってるから、このイヴェントから得た収入なんてほとんどないよ。毎回400人から1000人くらい入ってるから、入場料をとってれば僕は今ごろ大金持ちだったはずだよ(笑)まぁ、大きなクラブでやる時は入場料を取る場合もあるけど、基本的にイヴェントは金儲けが目的じゃないんだよね。
DJはどなたが?
I:僕とCLEMENTの2人だよ。このイヴェントを発足させるにあたって中心となったメンバーは、CHLOEとJENNIFERと僕だけどね。でも実際にプレイしてるのは僕とCLEMENTだよ。
今のフランスの音楽シーンはどうですか?小さいけど面白いレーベルがたくさんありますよね。
I:フランスのレーベルと言っても色々あるからね。僕はロンドンに住んでるから、今の状況はよく分からないんだけど。例えば、TIGERSUSHIがこっちなら、ED BANGERは遥かあっちの方にあるって感じかな。アメリカのシーンと言ったって、JOE CLAUSSELLとJEFF MILLSを同じようには括れないだろ?KITSUNEとED BANGERは、DAFT PUNK繋がりで近い関係にある、くらいなら言えるけどね。僕に関しては、どちらかと言えばTIGERSUSHI寄りだと思う。一緒に仕事もしてるし、個人的な交流もある。とにかく、「フレンチ」って言葉で一括りにする時代はもう終わったんじゃないかな。
最後に、日本の女の子のファンに一言お願いします。
I:まあ、この世界は未だに何かと男性優位ではあるからね。音楽業界もDJも男が多い世界だし、レコード屋に限って言えば、もっと、、、そうだな、9割が男だからね。女の子だってTRAINSPOTTINGできると思うし、女の子は踊ってればいいっていうのは共感できないね。僕の周りにもたくさんの女の子がいるけど、気が細やかだし楽しいよ。男は集まると音楽の話ばっかりだし、理屈ばっかりで最悪なんだ。ぜひ女の子にも好きなことを追求していってもらいたいな。