Column » LATIN RAS KAZ: "WRITTEN LASKAZ" » vol.1 [2006-04-06]

そうだ、食べてみよう。

そこに行けば、どんな夢も叶うと言うよ…先日、友達が催してくれた僕の誕生会でDJをした際、三十四歳になった今の心境を歌った曲は無いかと選んだ曲は、ゴダイゴの78年のヒット曲『ガンダーラ』なのだが、ガンダーラとはインド北西部ペルシャワルを中心とする地域の古名で、曲中では心のユートピアを意味している。と歌詞カードにあるのだが、三十四歳。僕の心のユートピアは何処?ってそんな大袈裟なもんではないのですが、基本的に面白探究人間な僕は最近少し退屈ぎみで…人間常に面白い事の一つも無いとつまらないですからね。音楽も最近は、正直何を聴いても、あまりグッとこない。特に以前は夢中になっていたHIPHOPをはじめとしたDJ音楽(クラブ・ミュージック?)に関しては、すっかり食傷気味で所謂クラブ・ミュージック以外の方が最近は琴線に響いたりと(少し前にNHKで見た美輪明宏の『ヨイトマケの唄』には本当に感涙。)…さすがにおっさんになってきたからか、飽きたというより、以前とは少し趣向が変わってきているのかも。
これは音楽に限った話では無く、味覚も変化してきたようにも思う。長年吸っていた煙草をやめたと言う事にも関係しているんであろうが、昔は好んで食べなかった物も試しに食べてみると「意外にイケル」という感じから、「ハマる」までにそう時間は掛からなかった。具体的にはジンジャー、バジル、セロリ、パクチー、レモングラスといったイタリアンやタイ料理でポピュラーなものから、ラム、 シナモン、リカール、ピニャコラータ、コアントロー等のカクテルやデザートでお馴染みな物まで所謂スパイシーな味にすっかりハマっている。この辺の癖の強い味は、子供の頃は他聞にもれず僕も嫌いだったが、それが今では無いと困る味になっているから不思議だ。 考えてみるとビールなんかと同じで、言ってみれば訓練して食べられるようになるというのも面白い。とは言っても訓練しても嫌いな人は嫌いな味でしか無い訳で、万人受けする味では無い日本人の味覚で言えば、マイノリティ味か!? でも性質が悪い物で、そんな癖がある味の中でも、とりわけリスク?を伴う支障をきたす物程ハマってしまう。辛いけど止められないといった類いのやつだ。僕がそんな「面白味」を意識するようになった物の一つに、ウィルキンソン社のジンジャーエール(正しくはジンジャエールらしい。)があるのだが、コレ、知る人ぞ知る飲み物で(ネットで検索したらファン・サイトまであった!)辛いジンジャーエールで、今どき200mlの瓶入りだけしか無い所といい、栓抜きが必要な蓋といい、限り無く流通しにくい所が玉に傷なのだが驚く味なので、でかいスーパー等探して欲しい。
と、まあそんな感じでここ最近は音楽よりも食べたり飲んだりで、HIPHOPというよりもTONGUEをHOPさせている訳なのですが、このどちらかといえばマイノリティな味覚、不思議な事に音楽の趣味が合う周りの知り合いにカミング・アウトすると、味覚も趣味が一緒だったりするのには驚いた。もしかしたら僕の乱文にここまで付き合ってくれてる貴方もイケルくちですか? 思えば長い事、音楽に始まりファッションやアート等のトッポイ若者文化に興味を持ち続けているけれど、そのトッポイ部分にもそろそろ飽きが来たのか? 否、むしろ食文化こそが一番トッポイ部分であって、音楽やファッション、アート以上に年令性別国籍全て関係無しの文化でありながら、そのすべての要素も兼ね備えたもしかしたら、カウンターカルチャーでもあるのかもしれないですね。そういえば忘れていた五感、味覚。音楽は聴かなくても死なないけど、食べない人はいないですから、「NO MUSIC NO LIFE」のまえに「NO EAT NO LIFE」ですね。聴いてダメなら喰ってみろ。そうだ喰ってみようという訳で、僕のライフワークでもある、レコード屋、古着屋巡りにスーパーマーケットが加わり、僕の家では度々そんな面白食べ物を持ち寄っては試食会が催されている。三四歳。僕のガンダーラはスーパーマーケットなのかも知れない。

 
 

AUTHOR PROFILE:
LATIN RAS KAZ

80年代にテクノポップや初期のヒップポップ・ムーブメントに影響をうけ音楽製作を始める。DJとしては過去にBEASTIE BOYS、AFRIKA BAMBAATAAのフロントアクトをつとめた他、様々なオールドスクール/エレクトロ・イベントにも出演。RHYMESTER、TOKONA-X等の楽曲製作、またLL COOL J太郎(杉作J太郎)/"RADIO"ではサウンドプロデュースをつとめた。ヒップホップを中心しつつも素材を選ばない『EDIT』スタイルを得意とするクリエイター。最近では邦楽、洋楽問わずに類似楽曲を独自の手法で斬る、サウンド版モーフィングを提唱中。音楽製作のみならず執筆からラジオ番組の構成から出演までと『聴く』以外のすべての五感をも満たすべく、活動のフィールドを拡大中である。