ラップ熱そしてワンモッツ新百合ヶ丘で

奇跡的に続いているこの連載。今後もヨロシクお願いいたします。もう本当に記憶が曖昧になってきていて、予想通り軽くフィクション入ってきてる感アリアリですが、忘れる前にとっとと前回の続きからいきましょう。今回、取材に協力してくれたリアルナオヒロック氏に多大なる感謝を込めて。

時は1980年代後半、神戸市のニュー・タウンにあった中学に通っていたオレとヨッチャン、フルで結成したラップ・グループ「スクールズ・アウト・プロダクションズ」。途中で、ヒロセックスが加わるもフルとの大流血事件で2人は脱退。オレとヨッチャン2人でお別れ会@体育館等におけるライブを経て、みんな中学校を卒業して、その春休みに…。
なんと、あのパブリック・エネミーがオレ達の街にやって来たのだった。ライブ会場は神戸フィッシュ・ダンス・ホール。受験も終わり、完全に時間をもてあましていたオレやよっちゃん達がおこした行動はズバリ!リハーサルの出待ちだった。
昼ぐらいからライブ会場の回りを取り囲んでいた、水の流れる溝的なもの(深さ30cmくらい)を何回も往復ジャンプしては時間を潰すという、モロ中学生的手法でいつ終わるかもわからないリハを待つオレ達。しかし、この建物の中にチャックDやフレイヴァー・フレイヴ、ターミネーターXがいるかと思うと夢みたいな気分、あっグリフも。もはや、オレ達の住んでる駅にあったショピング・モール「須磨パティオ」に中山美穂が来たときよりも確実に興奮していた。
しばらくすると、ガチャリという音とともに裏口が開いた。まさかと思ったが爆音がもれる会場から颯爽と登場したのはチャックDだった。「おお!」、そしてターミネーターXがラジカセを担いで出てきた。「うわ!まじでラジカセ担いでるで!!」と思わず口に出てしまう。ターミネーターXが日本語わからなくて良かったネ。そして、フレイヴァー・フレイヴがいつものあの調子でヨタヨタと現れた。その時、よっちゃんがすかさずフレイヴァー・フレイヴにこう言った「ドープ…」。わぁ、よっちゃんスゲエ!心の中でそう思ったのもつかの間、フレイヴァーから「オ?ライ、ドープ!メェ?ン!!」のお言葉をいただく。「おおおおおお!!!」オレ達はもうダメだった。さらに一緒に神戸に来ていたMAJOR FORCE軍団の姿にも、当然ダメ押しの興奮をいただいてしまうのだった。
そして肝心のライブは、もうS1Wの持つUZIに打たれて死んでもいい、と何回も思うような、決して忘れられないとんでもないシロモノだった。
中3の夏休みからオレ達が患っていたラップ熱。結局、それぞれバラバラの高校に通うことになったり人数が減ってしまったりしたオレ達だったが、パブリック・エネミーのライブのせいもあって、まだまだそう簡単に冷めるわけにはいかなかった。まず、よっちゃんから名前を変えようという話が出る。デ・ラ・ソウルには“DE LA SOUL from the SOUL”というパンチ・ラインがあるから、ほなオレ達は「ワンモッツ from イチモッツ」ちゃうか、という提案。下ネタにリアルかつパンクな想いを寄せていたオレ達には、そのテンションをモダンに表現しているこの名前かなりイイ!という話になって、「スクールズ・アウト・プロダクションズ」はついに「ワンモッツ」になった。
また、その頃、おそらく雑誌「FINE」に第2回DJアンダーグラウンド・コンテストの話が載っていて、はじめて「スチャダラパー」の存在を知ることになる。それは「太陽にほえろ」をバック・トラックにラップいう衝撃的なニュースだった。なんだか、デ・ラ・ソウルやスチャダラパーという確実に新しい動きを、神戸という、東京から500km以上離れている街で感じることになったオレ達だったが、同じ中学から同じ高校に行くことになったゴローが、またしても何の脈絡もなく加入する、なんちゅうことにもなったりもしていた。思えば、特にヒップホップになんの思い入れもなかったはずのゴロー。しかし、何かオモロそうやな、という10代特有の動物的嗅覚のみで参加を決めたと思われたワンモッツに事件はおこる。その嗅覚、それは間違いではなかった。
まず、その頃から見事なリーダー・シップを発揮しはじめたよっちゃんが(そもそもよっちゃん軍団を小5の時に結成していただけあって当然といえば当然である)、たしか高校入学祝いとしてMTRを入手。ついにワンモッツはオリジナルのトラックでラップするという、「スクールズ・アウト・プロダクションズ」からは到底考えられないほどの音楽的進歩を遂げることとなった。それからしばらくして、某コンテスト(ここの記憶が最高にあやふやです…)にデモ・テープを送ることとなる。そしてなんと、「テープ審査を通過したで」との衝撃の報告を、よっちゃんから電話越しに受けることになったのがその数日後。もう、「スクールズ・アウト・プロダクションズ」時代とは明らかに異なる、妙な手応えをヒシヒシと感じる日々だった。
しかしそんなイキオイをかき消す一言がオレの前に立ちはだかる。そう、ここにきてウチのオカンの、「東京?ラップ?コンテスト?何?ダメ、ゼッタイ」の一言に端を発した親子BEEF。結果、交通費の捻出が完全無理となってしまった情けないオレの、東京行きはオジャンとなってしまったのだった。嗚呼、目の前真っ暗とはこのことです。
それからめちゃくちゃ悩んだあげく、その事実をよっちゃんとゴローに告げたることができたのが東京行きの2、3日前。こんな、とんでもない話をぶつけられてしまったよっちゃん達だが、しかし「とりあえずオレらヤリに行くわ」という心強い一言を残し、マルコム・マクラーレンの12インチ2枚片手に深夜バスで東京へ旅立っていったのだった。
そして翌日、オレの家のベルが鳴る。玄関に立っていたのはよっちゃんとゴロー。わ?。とりあえず部屋に二人を招き話を聞いた。主催者に「直前で一人参加できなくなったので、やっぱりオレ達出場できません」と言ったこと、他の出場者のリハを見て、レベル高すぎてアセッたこと、そんな話をちょっとオモロく話してくれる二人に、オレはただあやまることしかできなかった。そして何事もなかったかのように、翌日から平穏無事な日々が続いたのだった。

ここで、話は一気に2001年頃へ飛ぶ。
その頃オレは、自分がバンマスを勤めているバンドが、長年やってきたものの迷走してしまい、しかし、やっとそこから抜け出し、ヤリたいことがヤレるという手応えを感じていた時期だったが、なぜか、あのコンテストのことが引っかかっていた。なんというか、当時のよっちゃんにその時の自分が重なってしまう感じ…。
そんな時に、神戸の先輩の結婚パーティーがあり、よっちゃんやシュウゴにおそらく会えるだろうと、お祝いついでに会場に足に運んでみた。そして予想通り、会場には二人の姿があった。久しぶりに会ったオレ達は、これでもかと懐かしい話で大いに盛り上がり、話はあのコンテストの事になった。その時、酔っぱらっていたいきおいもあって、オレはあらためてよっちゃんに当時の事を詫び、聞かれてもいないのに今のバンドの現状を告げた。それを聞いたよっちゃんは、あのコンテストの時みたいに笑っていた。
DJが回していたMIGHTY SPALLOWのメロディも手伝ってか、オレの目からはとめどなく涙がポロポロとこぼれてしまうのだった。

 
 

AUTHOR PROFILE:
サイトウジュン(YOUR SONG IS GOOD オルガン担当)

ファンキーかつルーディー、東京発カリブ経由(行ったことなし)な雑多的ダンス・ミュージックを演奏する6人組YOUR SONG IS GOODのオルガン担当でたまに唄う。タギりまくったライブ・ステージングはジャンルを越えてホメられ中。2004年には結成7年目にしてついに待望のファースト・フル・アルバムをリリース。これも各方面からホメられ、2005年にはフジロック、ライジング・サンほか怒涛の夏フェス連続参加。それから、2006年。待望の新音源に向けて激烈なレコーディングの日々開始!
で、その第1弾としてBEAT CRUSADERSとのスプリット・ミニ・アルバム『BOOOTSY』が5/3に発売決定!!
 

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