村八分『Recorded Live '73』
1973年の2月4日に、村八分がフジテレビの『リブヤング』という番組へ出演した時の演奏を2000年に発掘、CD化したのが本作である。収録曲は「鼻からちょうちん」と「にげろ」の2曲のみで、定価1,100円。村八分の音源としては最も安価で手に入る一枚だろう。中古盤でも特にプレミアはついていないと思う。
村八分が実際に活動していた時期にリリースした音源は、実質上のラスト・ライブとも言えるコンサートを録音した(73年5月5日の京都大学西部講堂の)実況盤(「ライブ村八分」GOOD LOVIN' PRODUCTION / GOODLOV-006)のみだが、解散後ずいぶん経った91年に、初期の未発表スタジオ録音(71年録音のスタジオ・デモ)がCD化されて(「草枯れて」GATOR WOBBLE / GWCD-9105 / 廃盤)初めて聴くことが出来るようになった。2000年と2003年にも、複数の未発表スタジオ録音やライブ録音の貴重な音源がCD化され、さらに昨年の暮れには、CD8枚とDVDというヴォリュームのBOXセット(「村八分ボックス」GOOD LOVIN' PRODUCTION / GOODLOV-012)まで発売された。
今聴ける充実したそれらの音源の中でも、僕は本作をベストだと断言する。これを聴いてピンと来なかったら、他のどの音源を聴いても無駄だ。村八分とは縁が無かったとあきらめた方がいい。
『リブヤング』という番組は、日曜日の午前11時だったか、午後1時だったか、なにしろ、休日に寝坊した若者が観るのにちょうどよい時間にやっていた若者向け情報番組であった。当時、中学生だった僕も毎週欠かさず観ていたのだが、しかし、よりによって、この村八分が出演した週の放送は見逃してしまっているのだ。一生の不覚と言っても言い過ぎではない。
去年出た山口富士夫著「村八分」(K & B パブリッシャーズ)によれば、村八分が出演した前の週にはキャロルが出演したというが、それは僕も観た覚えがあるのだ。その他にも同番組ではウォッカ・コリンズのライブも観てるし、来日したアリス・クーパーに近田春夫さんが、通訳を交えず直接英語でインタビューしていたのも印象に残っている。加藤和彦が当時のデヴィッド・ボウイとそっくり同じ髪型、メイク、衣装で登場して驚かされたりもした。海外のアーティストだと、ブライアン・フェリーの動く姿を初めて観たのも『リブヤング』でのことだった。
まだ家庭用ビデオが普及していない時代である。動くロック・アーティストの姿を観ること自体が貴重だった。ロックに限った話ではないが、なにしろ、そうしたアーティストの動く姿を観るためには、映画館に行くかTVを観るしか方法がなかった時代だ。そのせいか当時のTVは、あらゆるものを伝えようとしていたように思う。村八分のようなまだレコード・デビューも決まっていない、芸能事務所にも所属していないバンドのライブが日曜の昼間に放送されるなんてことは、今の地上波TVでは考えられないことだろう。
当時はNHKにも『ヤング・ミュージック・ショー』という、不定期だがロック専門の番組があって、ピンク・フロイドやEL & P、ディープ・パープル等のライブの映像を夢中で観たものだった。同じNHKでは、1986年のRUN DMCの初来日の模様も収録し放映している。今ではもう、そんな(当時としては)先鋭的な映像を地上波で観ることは無い。TVが何から何まで伝えなくても、代りに伝えてくれるメディアが他にあるのだ。
僕がECDとして初めてTVに出た時の映像は今、WEB SITEの “YOU TUBE” (http://www.youtube.com/w/Japanese-Legendary-Artist-%22ECD%22-on-TV-Show?v=ONBtjqPyzZo&search=ecd/)でいつでも観ることができる。YOU TUBEで例えば“GRIME”と入力してサーチすると、M.I.AのPVから、どこだかわからないウェアハウスでのフリー・スタイルに至るまで、自分の部屋にいながらにしてGRIMEの現場を伝える豊富な映像にアクセスできる。
TVで新しい何かに出会う、なんてことにはもう期待していない。TVはもうサブ・カルチャーを紹介するなんてことからは解放されたのだ。それはそれで構わないとは思うのだけど、それにしても最近のTVは観ていてヘコまされることが多い。
竹中直人が、構造改革を推進しようという政府公報に出演している。かつて竹中直人といえば、まぎれもなくサブ・カルチャーの立役者のひとりであったのだ。彼はしばらく前から消費者金融のCMにも出演しているが、そのCMに一緒に出ているのは桃井かおりだ。竹中直人が80年代のサブ・カルチャーの立役者であったように、桃井かおりは70年代には「トンでる女」と呼ばれ、時代の新しい感性を代表する女優だった。TVなどに出続けるうちにこんなことになってしまったのだと思う。
病気で入院することや死ぬことなど、誰しもが避けられない不幸に対する不安をあおって金をふんだくろうとする保険のCM。タレントの、人気ではなく、人格や健康状態などのランク付けを趣旨とする番組。もはやTV全体がなにかしら隠された意味を持った政府公報にしか見えない。というか、僕はもう、TVをそんなふうにしか観れなくなってしまった。逆に言えば、TVを観ていると権力が何をしたいのか実によくわかる。その手に乗るもんか、と思うのである。
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