「マン・パリッシュ」の巻

■高円寺のグラスルーツで半定期的なニュー・パーティーをスタートしたのですが、久しぶりのグラスルーツだったからか、はたまた久しぶりにゆるーくレゲエをかけることができた嬉しさからか。トップ・ギアで飲み続けてしまい、最終的にはトルコの酒ラクに手をのばしながら、コンピューマさん(スマーフ男組)らとスクリューの話をしつつ…よく憶えていませんが…まさに腰からスクリュー状態で崩れ落ち、朝を迎えさせていただきました。とほほです。スクリューとはご存知の通り、ピッチを極限までさげる&さげる&さげまくる技のことでして、発明者はその技の名前の元ともなったヒューストンのDJ、スクリューさんです。00年11月16日にコデイン配合の咳止めシロップの服用過多で永眠したこの孤高の天才は、90年代に約1000本にものぼるミックス・テープを制作し、後にスクリュード&チョップドと呼ばれるようになるこの新しいスタイルを布教。今となっては南部のヒップホップのスタンダード・スタイルとしてすっかり定着をみせています。個人的には00年に御大が他界して以降はぐっとおさまっていたスクリュー熱…ですが、いやはや、『スクリュード&チョップドDVD』の存在に気づいてしまったことが原因でここんところ、すっかり再燃してしまっています…。ほんと、キリがないですね。■『スクリュード&チョップドDVD』…というのはまんま、映像版のスクリューものとお考えください。様々なヒップホップのプロモーション・ビデオがスローで再生され、ところどころ細かいエディット(チョップ)がほどこされ、ピッチを合わせてつなげられている。そんなオムニバスDVDがいつからか、数多くリリースされています。使われているプロモーション・ビデオが新曲の場合は画質が奇麗なので、どれだけスロー再生してもある意味、ビル・ビオラの初期作品を見ているかのようなハマり方ができます。…が、昔のプロモーション・ビデオをミックスの素材としている場合は正直、かなり気持ちが悪いです。場末の喫茶店の片隅で、しかも受像機能の壊れたテレビを前に『YO! MTV RAPS』を見続けている…そんな感覚に陥ります。お薦めなのは、南部のヒップホップ・アーティストのインタビューやフリー・スタイルなどを織り交ぜて展開する現場レポート的な作品でして、DJスクリューを失ってもなお進化を遂げている、現行のスクリュー・シーンを臨場感をもって垣間みることができます。特にチェックしていただきたいのは様々なDJの生ミックスの映像で、例えば、先日見たDVD『THE DAY HOUSTON BROKE LOOSE VOL.7』では、チョッパホリックスのDJクールエイドとオーバードーズのお二人が、CDJを2台使って、激遅?い音楽を素早?くミックス。見事なスクリュー&チョップ技を披露していました。いやはや。個人的にはCDJをもっと使いこなさなくては…と改めて考えさせられた映像でございました(笑)。■TOKYO SOURCE(http://www.tokyo-source.com/)のインタビューでもちょこっとだけ触れさせていただきましたが、ここ1?2年ぐらいでしょうか、こうしたミックスDVDをはじめとする、いわゆる海賊盤のDVDにハマっています。海賊…なんていうと格好がいいですが、要はマニアの方々が自分の集めた映像をオムニバス形式でお好みで編集し、DVD-Rに焼いて個人売買している…そういう代物であります。小生がチェックしているのは主に70?80年代にリリースされたプロモーション・ビデオです。なので、ただ単に数年前にエア・チェックしたMTVの映像をさくっと編集しただけのもの…も多いです。それでもなぜだか興味深いんです。■その興味は、友人から手渡されたミックスCDを聞く時の楽しみに似ているかもしれません。レアな映像をただ眺めたいのであれば今や、YOUTUBE(http://youtube.com/)をはじめとする様々なサイトをこまめにチェックすればフォローできてしまう訳なのですが、知らない誰かがアーカイブ化したDVD-Rを買う…という行為にはまた違った面白みがあるんです。そこで楽しんでいるのはおそらく、そのアーカイブを可能にした、いちマニアの視点だったり、体力だったり、思い入れだったり、もっといえば思い違い…でして、過去作品のアーカイブ化ってやはり誰かの強引な編集的視点があった方が素敵なのかもしれない…と考えたりしてしまう今日この頃です。■ゲットしたのは昨年の夏ぐらいでしょうか。やはりネット経由で横流ししていただきヘビー・ローテーションで楽しんでいる一枚の海賊盤DVDがありまして、それは、初期のエレクトリック・ヒップホップのプロモーション・ビデオばかりを集めたDVD-Rなのですが、初期サイボトロンのプロモなんかまでしっかり収録されている優れものなんですね。で、毎日毎日飽きもせず、全篇に漂うエセSFっぷりに、くらくらしながら眺めている訳なのですが、後半でいつもハッと真剣に見入ってしまう映像に行き当たります。それは、マン・パリッシュさんの『HIP HOP BE BOP』のミュージック・ビデオです。■マン・パリッシュさんの映像といえば最近では、クラウス・ノミさんのDVD『ノミ・ソング(THE NOMI SONG』にさらりと出演されていて気になってはいたのですが、長々としっかりと、当時のマンさんの映像に触れたのは実は、この誰かが編集した海賊盤DVDがはじめてでした。これがまた全くもって、ヒップホップではない映像作品…。いや、ヒップホップが本来持っていながら早い段階で切り捨ててしまったいくつかの可能性…のみでできているミュージック・ビデオ…といえるかもしれません。で、みなさまにもぜひ見ていただきたいので、ネット上で探してみました。でてきました。便利な世の中です。もちろんYOUTUBEにもアップされていましたし、マン・パリッシュさん自身のホーム・ページ(http://www.manparrish.com/)で、簡単に見れることが発覚しました。ぜひ、チェックを。しかもこちらのホーム・ページでは、84年にリリースされたエレクトロ・クラッシック『HIP HOP BE BOP』のミュージック・ビデオだけでなく、ジョン・セックスさんの『ROCK YOUR BODY』なんかもご覧になれます。そしてなんと、SHOX LUMANIAの78年の映像『RUSSIA』、『STRANGER』までアップされているのには驚きました。感動しました。SHOX LUMANIAとは、マン・パリッシュさんが参加していたアート・ロックのバンドでありまして、リーダーは当時のNYでシンセ・マニアとして知られていたミュージシャン、あのリチャード・ボーンさん(現役!!)です。他にも、ウォーホールさんを筆頭に、バンバータさん、マイケル・ジャクソンさん、ボーイ・ジョージさん、ヴィレッジ・ピープル…などなどの名前が次々とでてくるバイオグラフィーが兎に角面白いので、ぜひ一読をお勧めします。それにしても急速に進んできましたね、映像のアーカイブ化。DVDJがもっと安くなったら増えるんでしょうね、ミックスDVDも。いやはや。

 
 

AUTHOR PROFILE:
MOODMAN

パーティ"HOUSE OF LIQUID", "GOD FATHER","SLOWMOTION"などのレジデンツDJとして活動中。世の中の新しいクラブ・ムーブメントと常にシンクロしつつ、バトルDJやマイアミ・ベースの発掘などつねにフレッシュなアイデアをパーティに持ち込み続けている。2006年には東京地下シーンを詰め込んだコンピ『NOSTALGIA OF MAD』への楽曲提供や、元スーパーカーの古川 美季のリミックスなども発表。
 

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