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Column » LATIN RAS KAZ: "WRITTEN LASKAZ" » vol.3 [2006-08-04]

「Here I am!」

レコード屋(未だに『レコ屋』って言う省略の仕方には馴染めない為、略しません。)発のフリー・ペーパー用のテキストなのに毎回音楽の事にはほとんど触れなくて申し訳ないのですが、個人的には、最近ますます五感で言う所の味覚と嗅覚が「キテ」るのです。余りにも長い間、耳で聴いたり目で見たりするものが刺激的で楽しかったので、聴覚や視覚、つまり音楽だったり様々なヴィジュアル方面を優先にしてきましたが、ここにきてようやく、年齢的なゆとりからか?音楽に飽きたから?なのか…五感のそれ以外の部分である味覚、嗅覚、触覚であるところ、すなわち、喰う、嗅ぐ、触る事に以前より敏感なのです。

去年はさほど気にも留めなかった桜に溜め息を漏らしたり、我ながら感傷的過ぎて気持ち悪いのですが、改めて考えると、五感の内のこの三つの感覚はネットなんかのメディアではカバーできないって事に今さらながら、気が付いて驚いたりもしています。
先日気のおけない仲間との近況報告をも兼ねたいつものパーティーでの事。益々DJ文脈的な選曲から遠のく今のフィーリングに合う曲は何かと選んだその一曲は、宮川愛さんの「Here I am!」(僕にしては極めて珍しい邦楽新譜)。本当に良い曲なので2回掛けました。この曲を始めとして、以前気に入っていたタイプの曲と最近琴線に触れるタイプの曲とでは、自分のなかで共鳴する部分が異なる。聴くと効く。そんな感じの曲だ。
自分でも不思議でおかしな話なのだが、自分と音楽的価値観が同じで同じ方向を狙っている作り手が、自分よりも先に自分がやりたかった事をズバリ提示した時に嫉妬するように、食事に行ったお店で自分が「美味しい」と舌鼓を打った時に、それを作った人に同じ様に嫉妬(ジェラシー)してしまう。ニュアンスが伝わるか不安であるが「憎いねー」と言った感じであって「憎らしい」訳ではない。つまり美味しい物を作れる人=かっこいい音を作る人。音楽を作る事や絵を描く事と同じ様に、美味しい物を作ると言う事は何とクリエイティブな作業なんだろう。

音楽であれ食べ物であれ、自分はこの音もしくはこの味(見た目、香り、歯触り含む)が心地良い(美味しい)と思うのですが?どうですか?と、客に、オーディエンスに料理や音楽を提供する…それで共感されるorされない。僕はこのよくあるプレゼンの際に無理目の(分っかるかなー?分っかんねーだろうなーくらいすれすれな)プレゼンをされて、自分がばっちり当てはまった時には(少数意見なら尚更)、音はもちろん時には味や臭い(香り)等でも感動する。時には目頭も熱くなる。

良いライブを見た時はできるだけそのパフォーマ?に直接「良かった」と伝えたい。それと同じように「美味しい物」を食べた後は作った人に「美味しかった」と言いたい。コンサートにスタンデング・オべ?ジョンはあっても食べ物屋には無いのだから。だから、美味しいお店に行った際、帰り際には直接「美味しかった」を伝えるのである。本当は興奮ぎみに調理した人と握手でもして、「最高!」と唸りたい時も有るけど、バカだと思われるから、しないけど、本当に美味しくて、気持ちの良いサービスには、素直に「ありがとう」を言いたい。海外にはチップなんかがあるが、そんなシステムがない日本は尚の事そう思う。だって、チップ目当てではない純粋な「もてなし」なわけだから。ホスピタリティー。
話を戻すと前述したように僕は、最近では味や臭いにすごく敏感なんだよっ、という訳で最近その「感じた物」をランダムに挙げてみる。

オランチョ、モヒート、シャルトリューズ、PICON(以上リュ?ル)、CHERRY VANILLA、Dr PEPPER、SPARKLING COFFEE(以上炭酸飲料)、ダウニ?柔軟剤(トロピカル・クリーンが新たに仲間入り。お薦めはクリーン・ブリーズ)、SUAVEシャンプー&コンディショナ?(トロピカル・ココナッツ)、ライオン・コーヒー(フレイバー・コーヒーorチョコレート・マカダミア)、それと、雨降りの六月のある日、線路沿いに咲く朝顔のあたりから漂う甘い香り。
「Here I am!」 おまえはそこにもいた。

 
 

AUTHOR PROFILE:
LATIN RAS KAZ

80年代にテクノポップや初期のヒップポップ・ムーブメントに影響をうけ音楽製作を始める。DJとしては過去にBEASTIE BOYS、AFRIKA BAMBAATAAのフロントアクトをつとめた他、様々なオールドスクール/エレクトロ・イベントにも出演。RHYMESTER、TOKONA-X等の楽曲製作、またLL COOL J太郎(杉作J太郎)/"RADIO"ではサウンドプロデュースをつとめた。ヒップホップを中心しつつも素材を選ばない『EDIT』スタイルを得意とするクリエイター。最近では邦楽、洋楽問わずに類似楽曲を独自の手法で斬る、サウンド版モーフィングを提唱中。音楽製作のみならず執筆からラジオ番組の構成から出演までと『聴く』以外のすべての五感をも満たすべく、活動のフィールドを拡大中である。