第1回
初めまして。下北沢の寂れた場所で高級な中古レコードを扱う店、『ひよこレコード』の社長です。よそのレコ屋の社長が、他店のHPにコラムを書くなんてユルいね。最初はテーマも無いって聞いていたから相当ユルい。テーマだけは「後生だから、そちらで決めて下さい」と担当者に頼みました。それで出たお題が、『ひよこ~』の前身である、『WEEKEND RECORDS』について。要は『ひよこ~』 の誕生以前の回想録(というか、私の自慢話)。『WEEKEND~』閉店後は、あの店についての海外からのメディア取材(自慢#1)はあったけど、日本では初めて。自分自身で書くとはいえ。関係ないけど、ユルい依頼(と私が勝手に思っている)だったので、こちらもユルく締切りがもう5日も過ぎてます。ごめんねー、ラークやん。ネット原稿だからいいじゃん。
さて、本題。『ひよこ~』の前身である『WEEKEND~』は、’99年(位かな?)米国はNYで創業しました。その店の誕生秘話(悲話?)はQ.J.誌にて磯部涼氏が書いているので割愛。というより、正直、創業理由を思い出したくない。個人的過ぎるツマらん理由だし、凄く嫌な思い出なんでカンベンを。とにかく嫌々ながら仕方なくNYでレコード屋を始めたってこと。
自分が住んでいたアパート、というかロフト(映画に出てくる芸術家が住んでいるような、倉庫風の天井がバカ高い部屋ね。自慢#2)を改造して店の部分を作り、内装は道端で拾った廃材でエサ箱、キャッシャー台を作って始めた。これぞホントのストリート系ショップ。おかげで英語よりも先に大工のスキルを身につけました。ロケーションは、今でこそNYの代官山的存在であるウィリアムズバーグ(今ではP・DIDDYの家とかもある。自慢#3)。が、当時はオシャレな場所でも何でもなく(ブレイク前のラプチャ-のメンバーとかは住んでいたが)、というか、どちらかというと危険な場所でした。歩道に注射器が落ちてたり、娼婦もいっぱいいて娼婦連続殺人事件とかあったし、結構、香ばしい事もありました。レコード店、とはいっても路面店ではなく、ロフトの2階。ビルの入口にはカギが掛かっていて、おまけにインターホンもない。違法でやっていたので、外に看板も立てられないし、フライヤーなど宣伝も出来ない。ビルの外観はどうみたってただの倉庫。ないないつくしの店で、予約制でもないのに電話してもらわないと店に入れなかった。なので、始めの頃の客は全てロフトの住人。「お前、こんなところで店をやるなんて狂ってんなー」って言いながら買いにきてくれていた。その住人の中にデイヴ・トンプキンという業界では超有名(おまけに超変人)な音楽ライターの友人がいて、そのデイヴがやって来て店を気に入ってくれたあたりから、『WEEKEND~』のサクセスストーリーが始まるのだ!
彼がDJシャドウ、カット・ケミスト、Z-TRIPなどを連れてきて、彼らの口が「NYの凄い場所に凄いレコ屋」がある、と全米に広めてくれたのである(自慢#4)。そのちょっと前に友人のM君がチェアマン・マオやケニ-・ドープ、スピナなどを既に連れて来ていて、セレブが集まる店(って自分で書くか? 自慢#5)になりつつあったのだが。とりあえず米国、欧州の有名人は大概来たね。実名は挙げないけど、日本の有名DJ、クリエイタ-も大概来た。店の売り上げも超右肩上がりで脱臼しそうでしたよ。もうここから先は、この店については本当に嫌味な自慢話しか書けません。自慢をカウントしている場合じゃないわい。
が、世の中、良い事ばかりじゃないよね。3年近くたった頃にビザ切れの問題が起って全てが変わった。転落への道、第一章。ビザが切れる時期は当然知っていたから、スポンサーになってくれる日本の出版社を見つけて、米国人弁護士を高額なお金で雇って、何とかジャーナリストビザを取って滞在出来ることになってたんですよ。しかーし、あるダブルトラブルがあって、スポンサーがビザ申請直前、というかその当日に降りることになってしまったから、さあ大変。そのまま米国に滞在すると違法滞在になるので家財道具を残したままロフトのカギを友人に渡し慌てて帰国。それから2年程、NY?東京?神戸?宮崎を転々として、家なき子状態で虎視眈々と米国に戻っての『WEEKEND~』復活を狙っていたんだけど、結局は大失敗ですわ。米国人との偽装結婚まで視野にいれていたんですけどなー。
『WEEKEND~』では楽しい思い出ばかり。その思い出を大切にパンドラの箱に収めておきたくて、「日本に戻っても、もうレコード屋はやらん!」と決めていたんだけど、もう9時5時の仕事は出来ない汚れた身体になっていました。それで再び嫌々ながら仕方なく東京は下北沢に『ひよこ~』をかまえたのです。やるからには「この道の 他に我の行く道なし、この道を行く」の心境でドンドコドンとやっているし、品揃えも日本一、高級店ながら価格も適正、と自負もしています。でもやっぱし、『ひよこ~』オープンが転落への道、第ニ章でした、、、、カックン。
* 以下は'99年(位)当時のWEEKEND RECORDS店内の様子を描いたイラストです。WEEKEND RECORDSの常連さんの一人で、かつてJET/"GET BORN"(全世界で300万枚の大ヒットを記録したデビュー・アルバム)のジャケット・アートワークも手掛けた、NY在住のJUNE KIMさんによる作品(!)だそうです。


