Column » ECD: 失われたWANT LIST » vol.1 [2005-01-07]

タージ・マハル旅行団『July 15.1972』

00年から02年くらいの間に家にあったレコードのほとんどを売ってしまった。それらは大体80年代後半から90年代を通して買ったものだ。ヒップホップやレゲエ、ハウス等のクラブ・ミュージックの新譜として買ったもの、あるいはネタ物として買った中古盤。それらは買ってきた日に家で針を降ろしてチェックして使えるか使えないかを判断して、クラブでかけたければレコード・バッグの中に入れられた。サンプルにしたいブレイクやグルーヴが見つかればサンプル候補用レコードをまとめた箱に入れられた。そのどちらにもひっかからなかったレコードは一度針を降ろしただけでその後ほとんどかえりみられることはなかった。そんな風にろくに聞きもしないで売ってしまったレコードは数えきれない。チェックを通過したレコードだって聞いたのは使ったところだけだ。アルバムを通して聞くなんてことをほとんどしなかった。
そんな十数年間の音楽生活を反省したわけでもないが、最近は買ってきたレコードは必ず、通して最後まで聞くようになった。とにかくレコードを聞くのが楽しくてしょうがない。思えば、90年代の僕は自分が聞くためではなく、他人に聞かせるためにレコードを買っていたのだと思う。それはそれで楽しかったのだが、行き過ぎると、仕事=労働になってしまう。それはやはりよいことではない。その週の新譜をあれはよかったね、あれはダメだったねと知り合いと情報交換するのは楽しいことだったけれど。
アルバムを通してちゃんと聞くようになって初めてCDというものに愛着が持てるようになった。一度売ってしまった80年代後半のヒップホップやハウスを今になってCDで買い直して聞いたりしている。和モノはなるべくアナログで買うようにしているのだがアナログもあなどれない。レア盤がどんどんCD化されている。しかも、デジタル・リマスターされて音もよい。オリジナルのアナログ盤を手に入れようとしたら数万円もするようなものが3000円弱で買える。よいことずくめのようだがひとつだけ問題がある。そうした復刻もののCDは売り場から姿を消すのが早い。廃盤になってしまうわけではないようだが、初回の入荷分が売り切れてしまうとそれっきりになってしまう。その手のレコードは逆にアナログならしかるべきレコード店にいけば、壁に飾られていたりして、金さえ出せば手に入れるのは難しいことではない場合が多い。マーケットが確立しているから姿を消してしまうことはない。CDの方が一度姿を消してしまうと探すのが難しいのが現状だ。一度買い逃してしまったら、中古で出るのを待つしかない。見つけたらすかさず買う。昔のヒップホップのCDなんかもそうだ。きちんと再評価されていないから、どこを探しても見つからない。金さえ出せば手に入るというわけにもいかない。例えば、ジャスト・アイスの一枚目、二枚目、それにスティーゾのアルバム……今だからこそCDで聞きたいのだ。<TRAX>の復刻みたいのがヒップホップでも始まらないだろうか。
この連載はそんな、今のうちに買っておかないとなくなってしまいそうなCDを紹介してゆくことになると思う。たった今、そう決めた。
で、最初に紹介するのはこれ。

『July 15.1972』タージ・マハル旅行団 SWAX-501 STEREO(TDCD90621)

以下、一柳慧氏のライナー・ノーツから引用。
「タージ・マハル旅行団の音には、どこかできいたような音は、全くでてこないと言ってよい。ヨーロッパ的音体系の上にのっとった現代音楽的な音型とか、ロック的なビートとか、邦楽的な間と持続とかというような、ともすれば即興グループにとって逃げ込む場になりやすい既存の音形態は、タージ・マハル旅行団には無縁なもののようだ」。
この文の通りだとすれば、これは素晴らしい音楽ではないだろうか。そして、実際にそのように素晴らしいのだった。読者の想像の手助けになるためにこれに似た音楽を僕がここで挙げるとしたら、やはり、KLFの『Chill Out』になるだろう。といっても僕自身『Chill Out』をここしばらく聞いていない。ただでさえおぼろげなあの音像をおぼろげに思い出して書いてみただけだ。それではちょっと無責任な気もしたので、実は、昨晩聞いてみた。いや、ほんとに似てる。『Chill Out』が好きなひとはだまされたと思って是非聞いてみてほしい。あと、日本人が作る音楽というだけで理由もなくバカにしてしまうようなひとにも一度聞いてみて欲しい作品だ。いわゆる和物DJがかける踊れるGSや和製R&Bみたいのだけが和モノではない! と、声を大にして言いたい。まだ、廃盤ではないみたいだけど。僕はユニオンで2200円で買いました。

 
 

AUTHOR PROFILE:
ECD

ジャパニーズ・ヒップホップ黎明期から活動を続けるオールド・スクーラー。2007年11月には自身の半生を振り返った著書『いるべき場所』を出版。そして、2008年2月21日、通算11作目となるアルバム『FUN CLUB』(FJCD003)をリリース。その中から「L.A.M.F.」と「FINAL JUNKYのテーマ」の2曲が、自身のレーベルFINAL JUNKYとJET SETとのダブルネームにて絶賛発売中。
 

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