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本題に入る前に、まずは、下記のレコードを見て欲しい。この時代の音楽シーンのトレンドを大雑把に振り返ってもらう為に、ジャンルに関係なく多くのリスナーが知っているであろう、エポック・メイキングな名盤とされるアルバムをいくつか挙げてみた。

+++ 1967 +++

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PINK FLOYD / THE PIPER AT THE GATES OF DAWN(1ST)
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PIERRE HENRY / MESSE POUR LE TEMPS PRESENT

+++ 1968 +++

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SOFT MACHINE / ST(1ST)
CREAM / WHEELS OF FIRE
JIMI HENDRIX / ELECTRIC LADYLAND

+++ 1969 +++

MILES DAVIS / BITCHES BREW
CAN / MONSTER MOVIES(1ST)
KING CRIMSON / IN THE COURT OF THE CRIMSON KING(1ST)
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JANE BIRKIN ET SERGE GAINSBOURG / ST

書店で買える音楽ガイド本などを見ても、縦軸であるカテゴリー、例えば、サイケ、カンタベリー、フリー・ジャズ、プログレといった文脈での名盤紹介などはしているが、横軸である、同時代の文化・風俗からの影響をうまく伝えることが出来ず、当時、これらの作品にリアルタイムで触れた人々の興奮やダイナミズムを伝え切れていないように感じることが多い。
例えばブリティッシュ・ロックとブラジルのように異なった地域の異なったジャンルのものでも、時を同じくして製作されたものは、10年後の同じジャンル、例えばジャズ同士のものよりも遥かに近いフィーリングを備えていると感じることが少なくない。それは、録音機材や演奏楽器が共通していることも大きな理由ではあるが、ほとんどのアーティストは、過去の同タイプの作品をお手本にするよりも、他ジャンルではあっても、同時代の優れた表現者から刺激を受けることが多いからだろう。何十年も経った後に聴き始める今のリスナーの中には、上のリストを眺めて、「へえ、これとこれが同じ年に発表されたのかあ」と感嘆し、思いを新たにする方もいるのではないだろうか。

さて、上記に挙げたアルバムであるが、バラバラのジャンルから名盤と言うことだけで寄せ集めたようでいて、実は意図があってチョイスしている。前衛的であり、ポップでありながら、ジャンルをクロスオーバーする要素を備えているものばかりなのだ。そして、その多くがジャズの自由な柔軟性とロックが持つエネルギッシュな突破力を孕むことに成功している。デヴュー作が多く、初期衝動に満ちていることも特徴だ。さらに言えば、その作品が結果的にそのアーティストのピークであったことも少なくないのだが。

本稿の主軸は、非常に実験的でややもするととっつきにくい印象のあるフリー・ジャズに関することであるが、フリー・ジャズの一番の魅力は、コルトレーンに端を発するような、卓越した技術で、深みを感じさせる精神性などよりもむしろ、もっとシンプルに破壊志向的なスノビズムの中にあったのではないか、と仮定してみたい。そうした俗っぽさが、当時、最新モードであったフリー・ジャズの魅力の一面であり、多くのアーティストが追求した大きな理由になっていたと考えてみると、小難しく捉えられがちなフリー・ジャズが、なんだか粋がった、とりあえずぶちまけて、あとから辻褄を合わせるような勢いに満ちた音楽に思えてくる。そして、そうした性質は最初に挙げたような、同時代の初期のプログレやサイケにも共通するものであると思うのだ。
そんな見方で最初に挙げたアルバムを意識しつつ、後述する当時レフトフィールドであったと思われるアルバム郡を吟味すると、よりその魅力が伝わるのではないだろうか。当時のアーティストや熱心なファンが、フリー・ジャズやそれに類した音楽を、粋がって「アウト・ミュージック」なんて言っていたのも、なんだか、そうしたスノビズムの現れであるように思う。

そうした性質を証明するかのように、フリー・ジャズは、アメリカにおいては東海岸都市部のインテリ、芸術家、学生に支持され、黒人層や多くの一般的なアメリカ人に聴かれることはほとんどなかった。アメリカ国内よりもむしろ、日本やイギリス、フランスなどで幅広く評価され、60年代後半には、アメリカ国内よりもパリやロンドンなど、海外で仕事をするミュージシャンが多かったことも事実だ。

アイディアやセンスにたいして、追いつかない演奏技術のもどかしさ、自分の目指す高みのあまりの眩しさに眩暈を起こしているような、混沌。時々訪れる奇跡的な瞬間。ゴールが見えない故に全員、最初から全力疾走。故に、多くのアーティストがやがては息切れを起こす。乱暴を承知で言い切ってしまうと、フリー・ジャズの実験性がポップであり、ヒップであると多くの若者達が感じた季節は、そのコンセプトが内包した運命ゆえに短かったのではないか。

70年代以降、時代と共に変節を試みたアーティストの多くが、勢いを失う。音楽的な側面のみを評価の対象とすれば、決して創造性を失ったものばかりではないが、時代に添い寝した瞬間の眩いばかりのスパークは確実に遠のいていってしまった。
しかし、それでも、いや、それゆえ、初期衝動が時代とリンクして爆発した諸作品の輝きは永遠の魅力に溢れていて、決して錆付くことが無いのだ。

TEXT: KCMT(JET SET KYOTO)

ESP-DISKは1966年、NYにおいて、BERNARD STOLLMANにより、当初エスペラント語のレコードをリリースする為に設立された。最初のカタログ『NI KANTU EN ESPERANTO』こそ目的に合致したものであったが、2枚目のリリースであるALBERT AYLERの『SPIRITUAL UNITY』がジャズ界のみならず、全音楽シーンにインパクトを与える大傑作にして問題作であったので、一躍、NYアンダーグラウンド・シーンの大注目レーベルとなる。その後たった1年半の間に45枚ものアルバムをリリース。しかも、このレーベルからのリリースが初リーダー作となったアーティストの名前を列記すると、恐ろしいまでに充実のラインナップになる。先のアイラーもそうだが、SUN RA、GATO BARBIERI、BOB JAMESもこのレーベルから、リーダーとしてのキャリアをスタートさせている。

ジャズ以外でも、THE FUGS、THE GODZ、PEARLS BEFORE SWINEといったロック〜サイケの鬼才を発掘し、世に出している。あのVELVET UNDERGROUNDも最初はここが目を付けて、積極的にリリースを働きかけたらしい。結局、彼らはメジャー傘下のVERVEからデビューして、カリスマになるのはご承知の通りだが、もしも、ここからリリースしていたら、その後のロック界は今とは違うものになったかもしれない。

それだけの先見の明がありながら、このレーベルはたった3年で一旦、その幕を閉じてしまう。その原因は、彼らのあまりのビジネスへの無頓着さにあった。アーティストとの契約は、全くそのアーティストを縛るものではなく、版権すら管理していなかった為、アーティスト達はすぐにメジャー会社に引き抜かれ、その貴重な音源もあっという間に無数のブートレッグが作成されてしまい。この奇跡的に優れたレーベルは一旦、長い休止を余儀なくされる。

ESP-DISK

BYGはパリにて、1967年にFERNAND BORUSO、JEAN LUC YOUNG、JEAN GEORGAKARAKOSの3人によって設立された。BYGは3人の頭文字である。当初彼らは、レコード・ショップを経営しつつ、SAVOY音源のフランス盤のリリースを手がけていたが、68年の5月革命を経たパリの先鋭的な文化風土の中、翌年の夏には、本場アメリカのジャズ・ミュージシャンを大挙招聘し、セッションを録音・リリースするようになる。そのシリーズがACTUELである。このシリーズは3年をかけて52枚リリースされた。

興味深いのは、その多くのアーティストが先のESP-DISKと重なることだ。BYGの3人は、遠くNYのレーベルから、矢継ぎ早にリリースされる、世界中の音楽シーンを震撼させるような革新的作品の数々に相当刺激を受けていたのではないだろうか。そして、奇しくもESP-DISKが活動停止してしまう同年にセッションが開始されているが、創造性のピークにありながら、アメリカで仕事がさほどなくなってしまっていたアンダーグラウンド・ジャズ・シーンのミュージシャン達を呼ぶには絶好のタイミングであったかもしれない。緊張感と創造性の高い傑作が目白押しで、非常に濃密なアルバムがごく短い期間で量産された。

BYGは同時に電子実験音楽や、SOFT MACHINEのオリジナル・メンバーのDEAVID ALLENが結成したフレンチ・プログレの雄、GONGの作品もリリースしており、そうしたクロスオーバーな視点もESP-DISKと共通すると言えるだろう。

加えて、BYGが興味深いのは、60年代を代表するフランスのインディ・レーベル"SARAVAH"との繋がりである。SARAVAHは、映画界でも音楽界でも希有の才能を発揮するPIERRE BAROUHが、時を同じくしてパリで設立したレーベルであり、ブラジル音楽や現代音楽に影響を受けた新進気鋭のミュージシャンが数多く在籍したことで知られる。ACTUELシリーズの多くが、"STUDIO SARAVAH"録音であるので、兄弟レーベルのように捉えている音楽ファンも少なからずいるだろう。実は、BYGのFERNAND BORUSOが、SARAVAH出身であることから、資本に乏しいインディ同士、スタジオを共有したのは自然な流れであったのだろう。また、SARAVAHに諸作を残すARESKI & BRIGITTE FONTAINEがBYGからもアルバムをリリースをしたり、SARAVAHからのリリース作品である名盤『COMME A LA RADIO』のバックバンドがART ENSEMBLE OF CHICAGOであったり、といったことからも互いに刺激を与え合うような近しい間柄であったことが想像できる。

BYG ACTUEL

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