
「レゲエ」は数ある音楽の様式/ジャンルの1つだけど、同時にそれだけにはとどまらない力を秘めている。いろいろなものをひっくり返すパワーがある。レゲエの中で発明された「ダブ」という手法がハウス・ミュージックを生んだ、とか、ジャマイカ出身のクール・ハークがジャマイカのサウンドシステム文化をNYに持ち込んでヒップホップが産声を上げた、とか、語り継がれてきたイイ話はたくさんあるし、それだけじゃない。怪物コンピュータ・リディムSLENG TENG好きを公言するM.I.A.だったり、パブ・ロック気質でダブとディスコを混ぜ続けるIDJUT BOYSはじめ「ディスコ・ダブ」と括られる人達だったり、いまダンス・ミュージック・コーナーに置かれてるレコードの中にレゲエの遺伝子を見つけることは簡単だ。なにも「すべての音楽はレゲエに通じる」とか強引なことを言うつもりはないけど、ある意味「踏絵」的なものなのかも?とも思う。もしくは、レゲエの要素を取り入れていなくたっていい。「レゲエを通過してる」人の表現するものは、やはり何かが違うんだよなぁ。レゲエ好きの戯言だと言われてしまうかもしれないが、こじつけではなく、やはりレゲエはスペシャルな音楽に違いない。
「どこにレゲエを感じるか?」「レゲエのどこに惹かれるか?」は人によって様々で、そこがまた面白いところでもある。で、まさにそんなところに目をつけて形にしたのが「STRICTLY ROCKERS Revenge」というMIX CDシリーズだ。
Chapter.1〜3までは、ごく一部で流通しただけのカルトな作品だったが、2004年の秋に突然の再始動。「レゲエ専門じゃないDJによるレゲエMIX CDシリーズ」言い換えれば「非レゲエ専門DJによる俺流レゲエMIXショウ」として、岩城ケンタロウによるChapter.4から、井上薫によるChapter.15まで、なんと驚異の毎月リリース。「いわゆるレゲエの人」ではなく、もうちょっと広い角度でレゲエをとらえている人から、「え!?この人がレゲエを!?」と驚く人まで。人選だけでもすでに枠をハミ出ているのに、各DJがこれまた思う存分にレゲエを拡大解釈してMIXした結果、「レゲエ」という共通点だけを軸に、既成概念をブチ壊しまくったオモシロ・シリーズになった。中にはとんでもないところまで飛んでいったと思われる作品も。シリーズとしては惜しくも完結してしまったこのシリーズだが、各作品は今から聴いてももちろん遅くはない。全12作品を1つずつ紹介していこう。
TEXT: NORIO SHIMIZU(PART2STYLE)
STRICTLY ROCKERS Revenge Chapter.4 (EQPB-002)
Selected & Mixed by KENTARO IWAKI
DUB ARCHANOID REGGAE
記念すべき第1弾は、DUB ARCHANOID TRIMとしての作品も高い評価を得ている岩城ケンタロウ。彼のDJや作品を聴けば、そこにレゲエ〜ダブへの深い理解と愛情を感じるのは容易なこと。事実ディープなレゲエ・ラヴァーだが、作り出す世界はレゲエ畑の人が作るものとは明らかに異質。70年代のルーツ・ロック・レゲエからベーシック・チャンネル系ミニマル・ダブ、ダブ・ハウス、ラヴァーズ、ニュー・ウェーヴまでを絶妙の流れでスムースMIX。「ディープでドープかつ美しく、さらにスモーキー」な独特の岩城ワールド。世界に誇れる盛岡のクラブDJ BAR DAIでのシークレット・ライブ・ミックスで、ダイナミックなエフェクト・ワークも聴きどころ。「繰り返し聴くならコレ」との声も多数!
STRICTLY ROCKERS Revenge Chapter.5 (EQPB-003)
Selected & Mixed by L?K?O
?er's edit
シリーズ中、最も過激な大問題作。異端ターンテーブリストL?K?OによるChapter.5は、刺激MAX、怒涛の鬼レゲエEDIT。レゲエDJでは思いつかないどころか、世界中の誰も真似できないはず。超絶アイデア満載で縦横無尽かつ超アグレッシブにレゲエを解体→再構築。イントロ、スキット含め、なんと49トラック収録。キング・タビー&パブロのヘヴィー・ルーツを2枚使い&スクラッチでインパクト十分に始まり、驚くのはまだまだこれからで、徐々に怒涛の80'sダンスホール・エディット&過激スクラッチによるジャグリング・タイムへ突入!聴き慣れた有名曲もフレッシュに生まれ変わる。発売後すぐに完売となったため、05年末にリ・プレス。
STRICTLY ROCKERS Revenge Chapter.6 (EQPB-004)
Selected & Mixed by MASAHIRO KANO (BarbeQuest)
RADIO BBQ 2004 Last MHz.
これは、20余年の時を経た「Radio Clash」の再来か。 東京世田谷某所から発信される海賊ラジオ・プログラム「Radio BBQ 2004 Last MHz.」。セレクターは知る人ぞ知るフリー・ペーパー『BBQ』の発行で知られる『BarbeQuest』のドン、狩野昌宏。ファンキー・ラガマフィンでナビゲートするのはRUB-A-DUB MARKETのジャーゲジョージ。ヒップホップ・レゲエのダブや秘蔵のB-BOYレコーズもの、伝説のアニマル声ラジオDJウルフマン・ジャックが割り込んで来たかと思えば、モッズ・アンセム「Sweet Pea」までも、ジャイブトークを乗せてレゲエにしちゃう?後半にはいよいよピュンピュン・マシーンも楽器の一部と化し男気ヘヴィー・ルーツでハイライト。サプライズ当たり前、ライブ感満点。不敵な選曲も含めて、海賊ラジオならではの内容となった。
STRICTLY ROCKERS Revenge Chapter.7 (EQPB-005)
Selected & Mixed by DJ BEN THE ACE
WAR INA BABYLON
男、漢、オトコのレゲエ・グルーヴ in a ドープ・ヒップホップ・スタイリーーーー。かつてYOU THE ROCK & DJ BENとして日本のハードコア・ヒップホップの中核を担った、超実力派ヒップホップDJ/プロデューサー、BEN THE ACE。レゲエMIXを人前で披露したのは初めて(!)という今作、ド頭から、ふ、太い〜〜!!そしてドFUNK!さらに「お〜さすが、これをレゲエととらえるのかー!」という新鮮さもあり。ラフ&タフ&ストロングなヒップホップDJ的スキルを織り交ぜながら、Mid 90'sのヒップホップ・ミーツ・レゲエやBEN氏のフェイヴァリットBDPのダブなどをMIXしていく前半、そして80's初期のワンドロップ・ダブや男気ルーツ連発の中盤にビックリ!さらにミッシーやアウトキャストの隠れレゲエチューンをさらりと混ぜている点もサスガ。
STRICTLY ROCKERS Revenge Chapter.8 (EQPB-006)
Selected & Mixed by Dr.IHARA
VERSION CITY 00
酒と泪のロッカーズMIXショウ!!「LONDON NITE」や「CLUB SKA」でレジデントを務め続け、いわゆる「レゲエ・セレクター」とは違うスタンスで一貫してレベル・ミュージックをプレイし続けてきたロッカーズ・ジャイアント。U・ロイなどの古典レゲエ声ネタを随所に挟みながら、JAMAICAN R'n'B〜JAMAICAN FUNK〜CALYPSO〜DEEJAY〜HEAVY ROOTSと男臭さたっぷりに展開するレゲエ・オールディーズ。酒が似合うマイナー・メロディ、陽気なカリビアン・メロディ、ルードなジャイヴ・トーク、どのボトムにもベースはヘヴィーに響き、ゴツゴツした中にも「THE CLASHを通過したレゲエ好き」ならではの粋が光る。曲の持ち味を引き出しながら「念」を込めた選曲で流れを作っていく男気DJスタイル。「ロッカーズ in 新宿ミッドナイト」な1時間。
STRICTLY ROCKERS Revenge Chapter.9 (EQPB-007)
Selected & Mixed by TETZ MATSUOKA
Ragamuffin HipHop early years Vol.1
これは世界に誇るべき『ヒップホップ・レゲエ大全』だ!! ややこしいけど、これは「ラガ・ヒップホップ」とはちょっと違う。「ラガマフィン・ヒップホップ」もしくは「ヒップホップ・レゲエ」と言った方がしっくりくる。つまりレゲエとヒップホップが接近し、混ざり合ったごく初期の音。混ざり合った瞬間だからこそ匂い立つイナタさ、荒削りだけど初期衝動全開でドキドキする「初期ラガマフィン・ヒップホップ」ならではのカッコ良さをここまでハッキリ形にした作品はなかったハズ!80年代半ばにTool's BarでDJデビュー、青山MIXを中心に活動してきた「東京クラブ・レジェンド」松岡徹氏、当時、生まれたてホヤホヤのこれら初期ラガマフィン・ヒップホップを「青春をかけて本気で集めた」と言う通りの究極のセレクション!
STRICTLY ROCKERS Revenge Chapter.10 (EQPB-008)
Selected & Mixed by KINKA
Massive Pieces
東京アンダーグラウンド熟練DJ/トラックメイカーの意外なルーツがココに!なんとビッグチューン連発のスムース・ダンスホールMIX。でも、accaやKEY OF KNOWLEDGEでのダビーでトライバルな作風のルーツの1つにこんなダンスホール・サウンドがあるってビックリ&嬉しくない?スムースなMIX、流れを重視した構成、巧みなエフェクター使いは、ダンスホール・レゲエとハウスが一番勢いのあった時期にリアルタイムでその双方に触れて大きな影響を受けたKINKA氏ならでは。アシッド・ハウスとダンスホール・レゲエを同等に捉えてリリースしていたニューヨークの白人DJ、BOBBY KONDERS(MASSIVE B)に影響を受けたというのも納得。KENNY DOPEのレゲエMIXテープに通ずるものもあり、ダンスホールの入口としてもオススメ!
STRICTLY ROCKERS Revenge Chapter.11 (EQPB-009)
Selected & Mixed by NORIYOSHI SASANUMA(SLY MONGOOSE)
BIBLE
コレがSLY MONGOOSEの素かぁ〜!先日、待望のNEWアルバムをリリースしたSLY MONGOOSEのリーダーにして「NO JOKE」の異名を持つベーシスト笹沼位吉氏。ディープでコアなレゲエ・コレクションと、SLY MONGOOSEの音同様「まんまレゲエ」をやらないセンスでMIXした今作の内容は・・・70年代中〜後期を中心としたルーツ・ロック・レゲエ!極太男気ステッパーズと、哀愁ルーツソングが、絶妙な流れで展開。印象的なベース・ラインを持ったマイナー・トーンの渋い曲・・・まさにSLY MONGOOSEに通じる世界観。アフリカン・レゲエ、KILLERなラガマフィン・ヒップホップや初期コンピュータライズド・ダンスホール、アフロ・ニューウェーヴなども混ぜていく後半も聴き所。こんな曲達がマングースの血肉となっているのだ!
STRICTLY ROCKERS Revenge Chapter.12 (EQPB-010)
Selected & Mixed by MOODMAN
MINIMAL MIX
MOODMAN通算2枚目のMIX CDは当シリーズ12番。こんなレゲエMIX CDありですか?ずばりアリ!レゲエの常識、セオリーなんてものはハナっから無視。まさに新たな解釈、捉え直し。「80'sダンスホールのヴァージョンのミニマルさを生かしてハウス的手法でミックス」これが今作のコンセプト。そもそもダンスホールのヴァージョンなんて「おまけ」的扱いだけど…MOODMANはその「ミニマルさ」「派手な展開のなさ」にこそ魅力を見出した!延々ワン・フレーズ・ループ、たま〜にヘンテコな転調、声ネタ。上モノだけ残して次の曲のベースラインをミックス、かと思ったらヌボ〜っとボーカルが浮き沈みしたり・・・・。こんな風にロング・ミックスされているものだから、パッと聴き単調だけど、ジワリジワリと効いてくる。中毒者すでに多数の名作!
STRICTLY ROCKERS Revenge Chapter.13 (EQPB-011)
Selected & Mixed by コンピューマ(スマーフ男組)
BETRAYAL 〜随ィ喜!随ィ喜!MIX〜
「こんな解釈アリ!?」の連発でレゲエ解釈の幅を拡げまくってきた当シリーズ、10枚めにして強烈な爆弾が・・・。なぜならレゲエがあんまり入ってない……!完全に独自の解釈で、普段まったくレゲエととらえられていない音楽のそこかしこに「レゲエ感覚」を見出して表現した怪作。マイキー・ドレッド→XTC(!)とか、バンバータ→ピアソラ→初期メジャーフォース→JBとか、イナタいビートに「GODFATHER」サントラの荘厳なストリングスが絡み、自然音、かもめの鳴き声、奇妙な電子音・・・スゴイ。もちろんレゲエも(少ないながら)入ってて、リー・ペリーの超異色エレクトロ・チューンやロボ声ジャズ・カバー・ダンスホールなどなど珍種&カッコいいセレクション。めくるめくドラマが展開する80分間の音楽物語!随喜の涙、流してください。
STRICTLY ROCKERS Revenge Chapter.14 (EQPB-012)
Selected & Mixed by DJ SENORINA
MELODY & BASS
シリーズ初の女性セレクター登場。トラックメイカー/シンガー/DJ...とマルチな才能を発揮、稀有なクリエイト・スタイルが光るアーティスト、G.RINAのもう1つの顔、DJセニョリーナ。G.RINAとしての表現からは意外と思えるほど、肉体的で陽性、さらにナスティで黒いダンス・トラックが満載。現在進行形のダンスホール〜サイバーなドラムンベースやイケイケのジャングル、そしてアキネリのあのXXXチューンなんてビックリするものまで。またRUB-A-DUB MARKETとの「System」やTakuji a.k.a.Geetek「Rakuen」など自身が参加した曲もナイスなタイミングで挿入。「もろレゲエ」ではなくて、そこから派生したダンス・ミュージックを中心に、ポジティブな雰囲気と女性ならではのしなやかさ満載にMIXした快作!
STRICTLY ROCKERS Revenge Chapter.15 (EQPB-013)
Selected & Mixed by KAORU INOUE
Night Times
残念ながらこれがシリーズ最終作。岩城氏で始まったシリーズが盟友・井上薫氏で終わる、という結果的に美しい締めに。内容の方もこれまた美しく、「Night Times」の副題通り「ピーク・タイムじゃなく深夜2時というイメージ」で作られた75分は、ディープなミッドナイト・フレイヴァー、洗練されつつプリミティヴ、大人味だけどしっかりと芯の通った貫禄の内容。3 GENERATIONS WALKINGのナイヤビンギで幻想的に幕を開けてから、テック・ハウスを中心にミニマルな快楽にハメていき、トライバルな感覚を増しながら、徐々にレゲエ/ダブ色が濃厚に!派手さはないけどこのストーリー展開、アフロ・トライバルな隠し味、そして、あえてわかりやすくない感じで貫かれた「レゲエ/ダブ」というテーマでスペシャルな1枚に。
気になる作品があったら、今からでもぜひ聴いてみてほしい。どれも、一過性のものではなく、いつまでも聴ける価値のあるものだから。しかし、「もっといろんな人のレゲエMIXを聴きたかったのに〜」「終わっちゃって残念」という声もちらほら。そんな方に朗報。残念ながらMIX CDシリーズとしては完結してしまったが、この「STRICTLY ROCKERS」がパーティー版としてお目見え。実は、すでに今年の3月から代官山SALOONにて第1火曜日にスタートしている。CDに参加した人はもちろん、惜しくも参加できなかった人、「この人がレゲエをテーマにやったら面白そう!」と今後気づく人も含めて、登場予定。MIX CDという「作品」ではなく「現場」だけに、レゲエ解釈の幅はさらにもっと拡がるはず。「NEW CHAPTER OF OUTLAW DUB」パーティーへ、ぜひ!!
2006 4/4 (TUE)
[STRICTLY ROCKERS]
at 代官山SALOON
OPEN/START 23:00
Entrance : 1500 yen (1drink) / w.flyer 1000 yen (1drink)
[GUEST SELEKTA]
DJ SENORINA a.k.a. G.RINA
[MUZIK BY]
RUB-A-DUB MARKET (BIM-ONE,JA-GE,MAL)
Norio Shimizu (PART2STYLE)
※毎月第1火曜日に代官山SALOON(UNIT B3F)にて開催。ただし5月は第2週(5/9)に開催。
WRITER: 清水紀雄
レーベル<PART2STYLE>の運営、DJ、執筆業の3つを軸に、「レゲエやその他イロイロの新しい楽しみ方」を提示/発信中。レゲエ好きの感覚でセレクト&ミックスした、中近東〜アラブ〜オリエンタル・ダンスMIX CD「CRAZY CASBAH CRUISIN'」が好評発売中。ライターとしては、「定本リー“スクラッチ”ペリー」、最新号「SPECTATOR」ドン・レッツ特集などに参加。<PART2STYLE>からは春にRUB-A-DUB MARKETの新作をリリース予定!
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