
TEXT: TARO KAWANO(JET SET ONDE)
結局、ヒップホップのバイブルというレッテルが貼られたコンピレイション"ULTIMATE BREAKS & BEATS"に、ヒップホップはたったの1曲も収録されていない。ソウル、ファンク、ディスコ、ジャズ、フュージョン、ニュー・ウェーヴ、果てはメイン・ストリームのロック、カントリー、ソフト・ロックなど、ありとあらゆるジャンルのありとあらゆるヒップな音楽が詰め込まれていのるだが、実は、ヒップホップとカテゴライズされる楽曲はそこにはないのだ。ヒップホップのバイブルというイメージを持つ事で、現在もこの80年代初頭のニューヨークの空気を詰め込んだコンピレーションが多くのリスナーに素通りされているとしたら、なんとももったいないことだ。
≪ブレイク・ビーツ≫。このキーワードの持つ意味をもう一度考えてみよう。ダンス・ミュージックの動向とリンクしながら、時代に埋もれてしまったロックやソウル、ジャズ等が、クラブという場を通して発掘され再評価されるようになって十余年。現在ではヒップホップに限らず、ハウス、テクノ、今日のロックに至るまで、サンプリング・ソースやルーツとしての新たなスタンダードが日々発見されている。この今では当たり前になってしまった温故知新の概念こそが、"ULTIMATE BREAKS & BEATS"が初めて提示したまったく新しい音楽の聴き方であり、≪ブレイク・ビーツ≫の持つ重要な意味なのである。
全ての始まりはヒップホップの黎明期、NYブロンクスの片隅で毎週末に行われていたブロック・パーティーに遡る。野外にサウンド・システムを組み立て、DJたちは2台のターン・テーブルを使用し、違う種類の2枚のレコードの一部分同士を混ぜ合わせたり、同じ種類の2枚のレコードの一部分を交互にプレイすることで繰り返したり、という現在では普遍的なサンプリング + ミックス、ループというアイディアを子供の遊びのような原始的な手法で行い始めた。
MC(MASTERS OF CELEMONY…マイクでオーディエンスを煽動してパーティーをコントロールする存在。ラップ・アーティストの雛型)とのコンビネーションを考慮して、時にファンク、ディスコ、ロック、ニュー・ウェーヴ、その他様々な音楽の前奏や間奏あたりによく存在する、音数が減ってドラム・トラック等のみが残るインスト部分を執拗に繰り返すのが流行であった。
そうした既存の音楽製作の手法からは全く考えられない、それゆえ衝動的かつ刺激的なグルーヴと、それを追い求める精神性(AFRIKA BAMBAATAA"LOOKING FOR THE PERFECT BEATS")。その部分に注目した二人の男が、"SUPER DISCO BREAKS"シリーズを考案したPAUL WINLEYと、"ULTIMATE BREAKS & BEATS"シリーズ産みの親であるLENNY ROBERTSである。特にLENNYはこのブロック・パーティーの空気を、出来る限りそのまま伝えようと考えていた。
この取り組みの行程において、二人の重要な協力者がLENNYの下に集まった。一人はアーティストのKEV FROM TM-7。野外のブロック・パーティーの会場に限らず、その頃のニューヨークの日常的な街角の風景として見られたグラフティ(スプレー・アート)。そのシーンでは知る人ぞ知る存在だった彼がジャケット・デザイナーとして力を添えた事が、シリーズの人気を支える要因になっていることは言うまでも無い。そしてもう一人忘れてならないのが、あの"LITTLE" LOUIE VEGA。"ULTIMATE BREAKS & BEATS"に収録された楽曲の多くは、そこでのみ聴く事が出来る特殊なエディット(ドラム・ブレイク部分の延長やシーケンスのアレンジ)が施されているが、その一部を実際に手掛けたそのマニュピレーターこそが、後にM.A.W名義でKENNY DOPEという稀有な存在と共にNYハウス・シーンの最重要人物となったLOUIE VEGA、その人である。
1981年。産声をあげた伝説のコンピレイション"ULTIMATE BREAKS & BEATS"は、1991年に至る10年間で、プロモとして極少プレスがなされた2種類のプレ・ホワイト盤を経て、そこに続くレギュラー・シリーズが24タイトル、そして総監督/プロデューサーであったLENNY ROBERTSの早過ぎた死を悼んでLOUIE VEGAが制作した"VOL.25"の計27タイトルが、ヒップホップの黎明期を捉えた貴重な音源として残っている。
そして、今、レコード・プレス工場でまさに出来たてホヤホヤの一枚のコンピレイションがプレスされた。LENNY ROBERTSの意志を継いだ面々が再び"ULTIMATE BREAKS & BEATS"の続編を制作!!何と"VOL.26"が発表されたのだ。既に収録曲も公表され渋いブロック・パーティー・マナーを受け継ぎながら、現在のディープ・ファンク・シーンにも呼応する良質なセレクション!! "ULTIMATE BREAKS & BEATS"入門に最適な一枚としてもお見逃しなく!!
V.A. / ULTIMATE BREAKS & BEATS VOL.26
"ULTIMATE BREAKS & BEATS"第26番(SBR256) / DJ SHADOWネタ"SEXY COFFEE POT"収録!!
既に伝説!?LOUIE VEGAがエディットを担当した"ULTIMATE BREAKS & BEATS"の最新作が奇跡の登場(T T)/!!ニューヨーク80'Sストリートの魅力が満載+DJ SHADOWネタ・ディープ・ファンクまで搭載した好選曲!!
故LENNY ROBERTの意志を継承する"ULTIMATE BREAKS & BEATS"最新版VOL.26が登場!!SUPER LOVER CEE & CASANOVA RUD"SUPER CASANOVA"やUGLY DUCKLING"POTTY MOUTH"でもサンプルされたダンディ・ファンク・ソウル"YOU SAID A BD WORD"(JOE TEX)!!バトルDJ & ブレイカー定番になりつつあるJOHNNY TAYLOR"EVER READY"!!名曲"KEEP ON PUSHING"(IMPRESSIONS)!!米・西海岸ベイ・エリア・ファンク"THE JAM"(GRAHAM CENTRAL STATION)!!更にワシントンGO-GO傑作ブレイクス"LET'S GET SMALL"(TROUBLE FUNK)!!JAMES BROWN"HOT PANTS PT2"!!極め付けにDJ SHADOWネタにもなったディープ・ファンク最強ブレイクス"SEXY COFFEE POT"(TONY ALVON & THE BELAIRS)も搭載の猛烈≪ブレイク・ビーツ≫集!!
収録内容
JOE TEX / YOU SAID A BAD WORD
JOHNNIE TAYLOR / EVERY READY
IMPRESSIONS / KEEP ON PUSHING
GRAHAM CENTRAL STATION / THE JAM
TROUBLE FUNK / LET'S GET SMALL
TONY ALVON & THE BELAIRS / SEXY COFFEE POT
JAMES BROWN / HOT PANTS PT2
LOUIE VEGAが監督/制作したLENNY ROBERTS追悼盤的タイトル"VOL.25"を含む、"ULTIMATE BREAKS & BEATS"のオリジナル・シリーズ全25タイトル。そこでのみ聴く事が出来る特殊なエディットが施された楽曲…JIMMY CASTOR BUNCH"IT'S JUST BEGUN"、ESTHER WILLIAMS"LAST NIGHT CHANGED IT ALL"、JACKSON 5"IT'S GREAT TO BE HERE"、HONEY DRIPPERS"IMPREACH THE PRESIDENT"、LYN COLLINS"THINK(ABOUT IT)"、DENNIS COFFEY"SON OF SCORPIO"といったヒップホップ〜レア・グルーヴ〜ファンク・クラシックスのみならず、COKE ESCOVEDOやINCRESIBLE BONGO BAND、MOHAWKS、BABY HUEY辺りの定番曲、ニュー・ウェーヴ系ディスコ再評価で知られる99 RECORDSのESGやLIQUID LIQUID、ロック〜ソフト・ロック人気のMONKEES"MARY MARY"、ROLLING STONES"HONKY TONK WOMAN"、BABE RUTH"THE MEXICAN"、更にガラージ〜ハウス・ファンからも人気のJOHN DAVIS ORCHESTRA、DEXTER WANSEL、ORANGE KRUSH、EAST SIDE CONNECTION、BLACKBYRDS、DONALD BYRD他、ダンス・ミュージック全般の現在進行形へと繋がっている、ありとあらゆるルーツ音楽が満載なのだ!!
レコード屋の片隅から、元々、忘れ去られようとしていたDJによって拾い上げられた≪ブレイク・ビーツ≫達。勿論"ULTIMATE BREAKS & BEATS"収録曲にもそれぞれ、元々それらが収録されていたオリジナル・アルバム、12"シングル、7"シングルが存在する。同コンピ・シリーズを耳に出来た人なら、これらの音源を探求し、そこに始まる様々な音楽との出会いの中で自分だけの≪ブレイク・ビーツ≫を発見することが出来るだろう。発売当時のオリジナル盤を探すのも良いが、再発類が充実している今日においては労せずこれらの音源を入手する事も可能だ。HERMAN KELLY & LIFE"DANCE TO THE DRUMMER BEAT"('78年)や、FREEDOM"FARTHER THAN IMAGINATION"('79年)、MIAMI"PARTY FREAK"('74年)、更に数多くのサンプル源として知られるJIMMY CASTOR BUNCH"IT’S JUST BEGUN"('72年)、そしてBABY HUEY"THE LIVING LEGEND"('70年)…。並べてみて分かるように、これらは"ULTIMATE..."シリーズにチョイスされた楽曲が元々収録されていたオリジナル・アルバム群だが、その全てが原盤にかなり忠実な仕様で再発されている。加えて、サンプリング・ソースの宝庫として定番化しているJAMES BROWNとその関連作品、或いはROY AYERSといったアーティストの諸作品に至っては、驚くべき事にほとんどのタイトルが再発盤で揃うのだ。この幸福な機会を見逃す手は無いと言えるだろう。
今回は、"ULTIMATE BREAKS & BEATS"収録のオリジナル・アルバム再発と、ブレイクス&ビーツ・マナーのファンク、ソウルも合わせて紹介。