'03年、過激すぎる1ST.アルバム"AFRO FINGER AND GEL"が、ここ日本でも大ブレイク。パンキッシュで日本語訛りの強いMUのヴォーカルと、MAURICEの編み出す独特な音響効果を持ったエレクトロニック・ミュージックとが出会った奇跡のようなサウンドは、そのヴィジュアルと共にもはやどのようなカテゴリーにも収まり切らないオリジナリティで、世界中の度肝を抜いた。'04年1月にはJET SET PRESENTS "route#4"で記念すべき初来日を果たし、その小柄な体からは想像もつかないほどの常軌を逸した、正に儀式的ともいえるライブ・パフォーマンスで更にメディアやクラブ・シーンを仰天させたのだった。
あれから1年...、また今年もあの2人が日本にやって来た。OUTPUTからリリースされた2ND.アルバムとなる"OUT OF BREACH"のジャケット(ライナーノーツの写真にはなんとroute京都公演CLUB METROでのショットも!)で顔を歪ませているMUは、やはり今年のライブでもステージ上を走りまくって、転がりまくって、力の限り叫び踊り、全身全霊でエネルギーを発したライブで東京での会場となるLIQUIDROOM内満員のオーディエンスを熱狂させていた。
...その翌日、ライブでの冷めやらぬ興奮を抱え、インタビューに向かった先で待っていた2人は、おそらくそれが普段の姿なのだろうが、意外すぎるほどのリラックスした落ち着いた笑顔で迎えてくれた。
INTERVIEW + TEXT: AYAKA ISHIDA(JET SET TOKYO)
★まずは先日OUTPUTからリリースされた2ND.アルバム"OUT OF BREACH"についてお伺いします。今回のアルバムはどういったテーマなんですか?
[MU] 今回のテーマは"TIGERSUSHIへの怒り"です!!まずタイトル、"OUT OF BREACH(MANCHESTER REVENGE)"もそうだし、ほとんどアルバムの半分は彼に対してのものです。(TIGERSUSHIのマネージャー名)がさ、もー、ヤ〜なやつで(笑)
[MAURICE] そうだ、そうだあ!どんどん言えー!
★ではアルバム中の何曲かで登場する"HE"というのは彼の事なのですね?("SO WEAK PEOPLE"、"I'M COMING TO GET YOU"などで特定人物"HE"に激しく怒りをぶつけている歌詞に現れている)
[MU] そうそう!!だってリリースされてどれくらい経つのか...私達まだ1ST.アルバムの収支も見てないのよ!!そんなレーベルどこにもないでしょ!!
★...なるほど。その他にアーティストとして、MUさんを理解してくれなかったという事は?
[MU] うーん、もう色んな事があったんですけど...、私達をうまく利用しようとしたんですよね、きっと。たとえばライセンスを取るにしても私達に了解を得ずに勝手にやっちゃったりとか。MAURICEのアンリリース・トラックを他の人みんなにあげちゃったりとか。
[MAURICE] めちゃくちゃだろ〜?
★それは聞くからにひどいですね。ところでこの"TIGERSUSHIへの怒り"をぶつけた2ND.アルバムはもう1年以上前にOUTPUTからリリースされる事が決まっていましたよね?なぜリリースが遅れたんですか?
[MU] そう、1年以上前にもうこの2ND.アルバムは完成してたの。すぐにリリースされるはずだったんだけど...、寝かせられてたんですよね。私達もっと早くリリースしたかったのに!
★?なぜ寝かせられてたんですか?
[MU] うーん...(笑)
[MAURICE] さあ、何があったか教えてやれよ!!どんな問題があったか。
[MU] 最初に12"カットされる事になっていた"TIGERBASTARD"という曲があるんだけど(アルバム中4曲目に収録。今回のライブでももちろん、'04年の初来日の際にも披露していたあの問題作、TIGERSUSHIへのディス・ソングだ!)、TREVOR(JACKSON/OUTPUT主宰にしてPLAYGROUP)がBBCでプレイしたのをきっかけに、NY中でヒットしちゃって(笑)それをTIGERSUSHIが聞きつけて、地元フランスにあるOUTPUTのディストリビューター(DISCOGRAPH)に言って、リリースさせないようにしたのよ。
★それはズバリ圧力をかけられたということですね?
[MU] そう。あの1曲の為に大変な騒動が巻き起こっていたのよ。結局リリースできなかったけど、その後OUTPUTはもうディストリビューターも変えたの。彼ら(TIGERSUSHI)もシングルは止められたけど、アルバムまでは止められなかったのよ。
[MAURICE] "TIGERBASTARD"の為にアルバムが1枚出来たようなものだね(笑)!
★そんなバトルがあったなんて!でも今ではそんな事全く気にも止めてないかのように見えますね。では、同様に"OUTPUT BASTARD"が出る可能性は?
(一同爆笑)
[MAURICE] ありえるね〜。怒らせたら何をするか分からないよ〜(笑)
[MU] 彼らMAURICEを怒らせないようになんでもするわね(笑)
★なるほど、それは彼らも恐れているでしょうね...。では、先行12"でリリースされた"PARIS HILTON"について聞かせて下さい。タイトル通り、世界的にも有名な同名ホテルのオーナー一族の令嬢にしてアメリカのTVやゴシップなんかを賑わせまくってるセレブ、ヒルトン嬢(姉妹だが姉(22歳)のPARISには現在何億ドルともいわれる遺産相続権がある)についてですよね?なぜ彼女をテーマにした曲を?
[MU] それは、私が大ファンだったからです!!
★えー???ファンだったんですか?(リリースされた当初は、てっきり彼女をコケにしたかのような曲との印象を受けたから)とっても意外です。
[MU] みんな私がこの曲で彼女を馬鹿にしていると思っているけど、違うのよ。大好きなの!!あのセックステープ(19歳のときに当時の恋人と撮影したプライベートビデオが流出/互いに訴訟合戦に発展しているが10億円以上の金額と多くの著名人が入り乱れるスキャンダラスな展開に発展中)が出てくる前から大っファン!!黙っていても皆から嫉妬されて、あれだけ世間から叩かれているのに、全く気にしてないでしょ。逆にメディアやパブリシティをうまく利用してる。あのキャラクターが好きで、書き上げた曲なの。そしたらちょうどセックステープが出てきて。
★相乗効果で話題になったと。
[MU] そう!TVやゴシップ・マガジンでも彼女の情報は見逃さないってくらい好きよ!生い立ちからパンツの色までね!
(一同爆笑)
★ところで、昨日のライブ拝見したのですが、とてもエキサイティングなものでした!!その中でも"PARIS HILTON"でのパフォーマンスがとっても好きなのですが。(会場にいた観客は仰天してたはずだ!イントロが始まると同時に彼女は挙動不審にソワソワした素振り。頭のてっぺんに縛った髪をやたらと触ったり、顔や唇、胸や腰、股間を絶え間なくタッチする、妙にセクシャルなダンスだ!)
[MU] ホント?イェ−イ!ありがとうございまーす!!あれは、彼女をイメージしたものなのよ。いつも彼女ああいう素振りしてるじゃない。やたらと髪や顔を触ったり。あれは彼女から受けたインスピレーションを私風に変えたパフォーマンスなのよ。

★その他にも今回のライブ・パフォーマンスは昨年に来日された時よりもセクシーさが増した印象を受けます。
[MAURICE] セクシー?どこが(笑)?あんなにステージ上を転げまわって暴れまわって、おまけに「パコウ!!」だよ?
[MU] (笑)あれは彼女からインスピレーションを受けたパフォーマンスなのよ。
★それにしてもMUさんのライブの際のステージ・パフォーマンスは物凄くハードですね!!ずーっと飛んだり跳ねたり転がって走り回って...シャウトして!!それについてMAURICEさんが意見を言う事は?
[MU] ステージ・パフォーマンスについてはその場その場で私が作っている事が多いのよ。あれは"ムー・ダンス"ね!!
★なるほど。ではMAURICEさんが、MUさんの歌詞やヴォーカル・スタイルなどについて意見を言う事は?
[MAURICE] もちろんあるよ。
[MU] いっぱいあります!!歌詞の事から歌い方についてまでね。彼はプロデューサーだから、もう楽曲を作る前から私のヴォーカル・スタイルは頭の中にあって、「こういうスタイルで、こういう声を出せ」とか色々言われるわよ。私は言われた事をやるだけ。前にライブの時、喉の調子が凄く悪くて「歌えない...。」ってなったときに、「お前はブリトニー・スピアーズか!!」って怒られた(笑)「パンクだ!パンクだ!」って。「声を聴かせてるわけじゃないんだから心配してどうする!」ってね。
★ライブを観た人なら誰でも感じると思うのですが、MUさんのスタイル、パフォーマンスは誰にも真似できないものですね。誰かインスピレーションを受けているパフォーマーなどはいますか?
[MU] ん〜…パフォーマンスについては特に元になるものはないかな。全て私が作っている事が多い。でも、もし尊敬しているパフォーマーを挙げるとしたら、マイケル・ジャクソンとビヨンセかな。
★マイケル・ジャクソンについてはアルバム中の"STOP BOTHERING MICHAEL JACKSON"で、しばしスキャンダルを取り上げられメディアに好き放題叩かれる彼に対して「マイケルを苦しめないで!!」との気持ちを歌っていますね。ではビヨンセは?
[MU] ライブは観た事ある?人を惹き付ける彼女の立ち居振舞い、際立ち方はかっこいいと思う。セクシーさと品の良さとのバランスが取れてるわね。
[MAURICE] そう、品があるってこと!僕は君にそうなってほしいんだけどね(笑)!...パンク・ビヨンセに。
[MU] ええ〜(驚)?!
★昨日、LIQIODROOMでのライブも熱狂的なものでしたが、大阪、名古屋でのライブはどうでしたか?
[MU] 各地でライブは沸きあがってたよ!特に昨日は感動的だった!ステージが高くて大きいし、やりたいことめいっぱいやれた!!私小さいからね。
★その大きなステージの端から端まで終始動き回ってライブをしていたMUさんが本当に印象的です。
★さて、MAURICEさんに楽曲の事などについてお聞きしたいのですが、制作をする上で一番大事にしている事は何ですか?
[MAURICE] "みんなが踊れる"って事かな。
★機材などは何を使われているのですか?
[MAURICE] 色々だよ。楽器ならなんでもやる。ギター、ベース、ピアノ、シンセサイザー、ドラムまでね。僕が持ってるギターはチープなものでも凄くダーティーな音が出たりするんだ。(エア・ギターでやってみせるMAURICE)そして、コンピューター・プログラムも色々。シーケンサーはLOGIC。あとはREACTOR、KORGのMOOGやM1などが再現されたソフト・シンセも使うよ。見せてあげようか?
★おお!それは是非見せてください!
[MAURICE] (17inchほどのやや大き目なPOWERBOOKを開けて見せる彼。視覚的に操作できるシーケンサーアナログ・シンセをヴァーチャルに再現したソフト・シンセ/エフェクターなどが並ぶ)ほらこうやって操作したりね。このサウンドが一番好きなんだ(バーチャル・シンセにエフェクターをかけたり、モジュレートする彼)
★少し前にNUPHONICの元スタッフがスタートさせたTIRKというレーベルから"SYCLOPS"という名義でリリースされましたよね。あれはほとんど生楽器で作られたもののように感じましたが?
[MAURICE] そう!あれは生で(ライブで)"テクノ"をやりたかったんだ。ドラムは僕が演奏しているわけではないけど、すべての楽器は生で録ってる。
★なるほど。あなたはDJをすることも多いですよね?UKでおもしろいと思うDJはいますか?
[MAURICE] (しばらく考えて)うーん...GREG WILSONかな。
★おおー!GREG WILSON("BEST OF '83"と題した主に'80年代のディスコ/オールド・スクール/エレクトロ・ファンクなどを凄まじいクイックで繋げたMIXが一部のディスコ/エレクトロ・フリークを唸らせた。彼もまたTIRKからこの度12"をリリース)!彼はUKでは人気があるんですか?
[MAURICE] いいや(笑)彼とはたまに一緒にプレイする事がある。UKで一番人気があるのはエレクトロクラッシュみたいな内容の薄い"エレクトロ風"のサウンドさ。
[MU] UKは流行で安易に自分のスタイルを変えてしまうDJが多いと思う。HARVEY(DJ HARVEY/UKや西海岸のディスコ・リエディット〜ダブ・ハウスシーンに決定的な影響を与えた伝説的DJ)やGREG WILSONみたいに自分のスタイルを貫いているDJは少ないんですよ。エレクトロクラッシュってもう減ってきてもいいでしょ?まだロンドンのほうではしつこく残ってる。
[MAURICE] UKよりNYのほうが今起こっていることに敏感かもね。
★ではNYで好きなDJやアーティストはいるんですか?
[MAURICE] うーん...(しばらく考えて)いない。というかあまり特定のDJやアーティストを好きになるってことはないかな。僕は毎日毎日、膨大な量の様々な音楽を聴いているからね。(自分の持ち歩いているポータブルプレイヤーのプレイリストをスクロールして見せる彼。JAZZや現代音楽、エレクトロニック・ミュージックからロック、ブラック・ミュージック、メインストリームなポップス...など実に様々)
[MU] 移動中もずっと音楽聴いてるのよ。でも彼が気に入るものは少ないみたい。
[MAURICE] アーティストでもこの曲はいいけど、あの曲はダメ、っていうのがあるよね。毎日聴ける音楽、寿命の長い音楽が良い音楽だと思うよ。
★昨年の来日時にうちがインタビューした際に、JOHNNY CASH(アメリカのカントリー・ミュージック・アーティスト)をカレントチャートに挙げられていましたが。
[MAURICE] ああ!JOHNNY CASH!!彼は良いよ。おすすめだよ。真実だけを語っている。主に銃の事や暴力の事だけどね。僕にとってのヒップ・ホップさ!
★どんな人にアルバムを聴いてほしいですか?
[MU] 私達の音楽を好きになってくれる人。その人たちの為に歌ってる。
[MAURICE] みんなだよ!!誰も彼もさ!
★各地でライブをする時に反応の違いはありますか?
[MU] ライブはどこでも私のCD、音楽を知ってて来てくれるのだから、どこでも良い反応が返ってくるように思う。
★ここでは2度とライブをやりたくない!という所は?
[MU] ないで〜す!
[MAURICE] いいや!!ちょっと待て、GLASSGOWがあるだろう〜??
[MU] あっ!そうだ忘れてた。始めたばっかりかな、だいぶ前。1ST.アルバム前後にGLASSGOWでライブの時。最初はクラブでMAURICEがDJをしてて、だんだん人が集まってきてダンスを楽しんでた。その後私がライブを始めたらお客さんは誰も私の事なんて知らなかったみたいで、特に女の子なんかには「何?この子?」みたいな目で見られて...。「もーイヤ!こんな所早く出たい!」って思った。でも今では良い、思い出!やっぱりこういうことがないとね。MAURICEは私が天狗になりだすと「GLASSGOWを思い出せ!」って言うの。
★そんな事があったんですか!その他に受けた評価でイヤだった事は?
[MU] そういえば最初は1ST.アルバムもひどい評価をされた事があった。このアルバムはMAURICEと私の"醜い子供"だって。ショックだった!!でもMAURICEはそういうのが好きなの。
[MAURICE] そうだよ!いつでも持ち歩いてるよ(バッグからおもむろにマガジンを取り出して)!ほら見て、いつでも取ってあるんだ。(マガジンに書かれてある"CRAZY"なアルバムの評価を高らかに笑い飛ばす彼)
[MU] そう、なんでも取ってあるの。
[MAURICE] 気にしないよ!僕の音楽を知りもしないくせに"CRAZY"だとかプレスはこき下ろすけど、でもそういう悪い批評をもらうとアルバムは売れるんだよ、UKではね。
[MU] そうそう、なぜなのかわからないけどイギリスではそうなのよ!!実際に"醜い子供"は売れたしね!
★全く気にしていない様子ですね! ではお2人に質問です。ご夫婦であり、プロデューサーとアーティストという関係でもある事は難しくないですか?
[MU] 全然!!楽しい!!音楽も夫婦の生活の一部。たとえば料理をするみたいにね。
[MAURICE] 僕達はベスト・フレンドでもあるんだ。僕はもともと(UKでは)外国人だからね。友達もいないし。(MUに対して)君にもいないよね!?(笑)
[MU] 夫婦でもベスト・フレンドでもプロデューサーとアーティストでもある!!
★うらやましいほどの仲の良さですね。最後に今後の予定を聞かせて下さい。
[MU] 夏にかけてアメリカでもツアーを行なう予定です。
[MAURICE] 僕自身では5月に"boof 2"が出るよ。もう完成していて、そのコンセプトはほぼJAZZを中心としたものだよ。