日本の、いや、世界中のハウス・ファンにその名をとどろかせる名門「札幌プレシャス・ホール」。その由緒ある名前をタイトルに戴いた楽曲、"PRECIOUS HALL"をJOE CLAUSSELL主宰のNATURAL RESOURCEから2002年にリリースし、瞬く間に世界中で大ヒットを記録、一躍その存在を知られる事となった札幌在住のアーティストが高橋クニユキである。KOSSを始めとする様々な名義を使いわけ、実に多彩で良質な音楽を世界中に届けてきた彼は、現在、隆盛を極めるドメスティック・アンダーグラウンド・ハウス・シーンにおいて最も期待されている実力派と言える。そんな彼がmule musiqよりリリースされ大好評を得たシングル"SUN SHINE"、"EARTH BEATS"に続き、遂にkuniyukiとして初のフル・アルバムを完成させた。そんな、現在最も注目すべき日本人アーティスト高橋クニユキ氏にインタビューを敢行した。
INTERVIEW + TEXT: SHINICHIRO BANSHITA(JET SET KYOTO)
アルバム"WE ARE TOGETHER"、早速聴かせて頂きました。壮大というか自由というか、喜怒哀楽といった人の持つ様々な感情がアルバムの中で変化し、聴き終えた後に心地よい開放感に満たされる。そんな、素敵なアルバムだと思うのですが、このアルバムのコンセプトはどういったものなのでしょう?
TAKAHASHI KUNIYUKI(以下K):
このアルバムは、過去にリリースしてきた僕自身の曲と、他のアーティストの楽曲をリミックスしたもので構成されていますが、どの曲も(ライセンサーである)各レーベルの協力によって収録する事が出来ました。
僕にとっての音楽とは、例えるなら「人」のようなもので、沢山の夢や、情熱や、感情、色、風景を感じさせてくれるものです。僕の手から離れていった音楽はリスナーとそれぞれの関係を作り上げて、人の心の中を通して色々な出会いをつなげていくものだと思っています。アルバム"WE ARE TOGETHER"は、音楽とリスナーがいつも一緒に時間を共有できる瞬間、といった意味をタイトルにこめて構成しました。
楽曲を製作する際にプログラミング、楽器の演奏など全て自分で行っていると伺いましたが、楽曲を製作する際にどういった点を重視しているのですか?またそれはkuniyuki名義とKOSS名義とでは違うものなのですか?
K:今回のアルバムでは、ギター・パートとリミックス曲の原曲の素材を除き、その他全てのピアノ、フルート、パーカッションの楽器演奏やプログラミングは自分で行っています。(スタジオ・ミュージシャンなどに依頼して)完璧な演奏で構成するより、(自身の手で)感情の赴くままに演奏して、音楽と感情がダイレクトに繋がるようなものを好んでいて、音楽的に完璧さを求めるよりも、自身の心に響くことを重視しています。
kuniyuki名義、KOSS名義、どちらも同じ僕自身の音楽には変わりはありませんが、kuniyuki名義は沢山の楽器を自身で演奏し制作する、KOSS名義はラップトップ上で出来得る新しい音楽の可能性を追求しています。
それだけ多くの事を一人でこなすというのは大変な事だと思いますが、KUNIさんの音楽的ルーツ(バック・グラウンド)というと?
K:沢山の道を辿ってきました。中学生の頃からハービー・ハンコックやマイルス・デイビスなどのジャズを聴いたり、同時期にテクノやアンビエントなども好んで聴いてました。80年代後半にはノイズやジャーマン・プログレ(に影響を受けた)バンドを兄とやっていました。ジャズ、アンビエント、ノイズにはそれぞれ共通する世界観を感じています。静寂に情熱を感じ、楽曲から発せられる音楽のメッセージに静寂を感じたりと、両極端なものの関係を好んでいました。
では、最も影響を与えたアーティストはどなたですか?また、現在最も注目しているアーティストは?特に同じ日本人ではどなたかいらっしゃいますか?
K:Brian Eno周辺のアーティストや、Real World(ピーター・ガブリエル主催のワールド・ミュージックのレーベル)などに影響を受けました。最近はTERRE THAEMLITZ(テーリ・テームリッツ / )氏とよくコンタクトをとっていますが、実にオリジリティ溢れる思想の持ち主で、素晴らしい表現力を持った注目すべきアーティストの一人だと思います。
テーリ・テームリッツ氏ですか、確かに独特の世界観を持った素晴らしいアーティストですね。一緒に楽曲を製作される予定などはないのですか?
K:今の所は予定はしていません。
このアルバムにも収録されている代表作"PRECIOUS HALL"は札幌の有名なクラブの名前ですよね。この作品はどのような経緯でリリースされたものなのでしょう?JOE CLAUSSELLとはどのように出会ったのですか?
K:沢山の素晴らしい音楽を提供してくれていることや、ライブをさせて頂いたことに感謝をこめて、プレシャス・ホールが現在の場所に移る際にスタッフの皆さんに渡した曲です。その曲をプレシャス・ホールのオーナーであるサトルさんが大切に温めてくれ、JOEが札幌に来た時にこの曲を聴かせたのがリリースのきっかけです。その後はメールを通じてJOEとコンタクトを取り合っていて、時々は会う機会もあります。
札幌という土地はKUNIさん以外にもこれまでにNORIさんやBLUE HERBなど、多くの素晴らしいアーティストが誕生していますが、それは札幌という土地に何か特別なものがあるからなのでしょうか?実際、プレシャス・ホールは"ハウスの聖地"と呼ばれる位、世界中で多大なリスペクトを受けています。やはりプレシャス・ホールの存在は大きいのでしょうか?
K:僕にとって、プレシャス・ホールは本当に大きな存在です。どのように言葉で表す事が出来るか考えるのですが、なかなか良い言葉が見つかりません。きっと、その場所で感じた事が全てで、プレシャス・ホールで体感したものは言葉を超えているからだと思います。感じる事、感じる瞬間、人。そこには沢山の心があり、そこで得たものは、何にも変えられない大切なものです。
今回のアルバムは現在までの集大成だと思いますが、今後の活動予定は?
K:春(三月から四月にかけて)に全国でアルバムのリリース・ツアーを行います。今回のアルバムから他のアーティストにリミックスを依頼しているので、その作品をリリースする予定です。それと、KOSS、kuniyuki名義でも新しい作品を常に作り続けていきます。
どのようなアーティストがリミックスに参加しているのですか?
K:HENRIK SCHWARZ、LUCIANO、CHATEAU FLIGHT、IAN'O'BRIANなどです。どのARTISTもとても素晴らしい方で、本当に感謝しています。
最後に多くの音楽ファンになにかメッセージを。
K:音楽を通じて感じた事を、皆で共有して今以上に素晴らしい瞬間を共に作り上げましょう。
KUNIYUKI TAKAHASHI / WE ARE TOGETHER
発売予定日:2006.3.11
¥2,940(税込み)
JET SET特典:KUNIYUKI TAKAHASHI MIX CD付き。

注) 自身のレーベル「Comatonse Recordings」を中心とし、ダンス・ビートに加えて自己のアイデンティティーとも言えるポップ・アート、実験音楽、環境音楽的な文脈を作品に盛り込み、「Mille Plateaux」や細野晴臣の「Daisyworld Discs」より数々のCDをリリースしている。現在ではアンビエントおよびエレクトロ・アコースティック音楽界の主要プロデューサーの一人として広く認知されている。「DJ Sprinkles」、「G.R.R.L.」、「Social Material」、「Teriko」、「Terre's Neu Wuss Fusion」など様々な名前で活躍。親日家で女装姿が有名。