ECD : 失われたWANT LIST - 大竹かおる『ジェラシー・ゲーム』 [2015-06-24]

 2千円以上の中古レコードはそれなりの評価をされているからその値段なのであって、好き嫌いはあれど買って聴いても損はないのだと考えていた。それが今年に入ったあたりから千円以下のレコードばかり買っている。中でも80年代の日本のシティ・ポップは安くても良いものが多く、自ずと買値が安くなるということもある。また、少し前まで千円以下や百円コーナーで売ってたようなレコードが希少でもないのにいきなり高値になっているのを見かけてしまうと、余計に安いレコードへと気持ちが向かっていたりもする。

 今では中古レコードを買うことが生活の一部になってしまっている自分だが、レコードを買い始めてからしばらくは中古盤を買っていなかった。中学生でロックに目覚め、数年でかなりマニアックな域にまで足を踏み入れて毎週輸入レコード店に通うようになったが、70年代から80年代前半までは新譜を追っていればほぼ満足だったし、たまに後追いで聴いてみたくなった旧譜があっても、レコード店に在庫があったので敢えて中古盤で探さなくても良かった。

 例えば、僕が初めてジャックスの存在を知り聴きたいと思ったのは74年くらいで、その頃にはもうジャックスは解散していたのだが、ベスト盤『ジャックスのすべて』は最寄の駅ビル内のレコード店で見つけて買った。輸入盤の旧譜もカット盤で安く買うことができたので、雑誌『HEAVEN』で知ってどうしても聴きたくなったタイニー・ティムのレコードも中古盤ではなくカット盤で見つけた。オマケの7inchがついたファンカデリックの『ワン・ネイション・アンダー・ア・グルーヴ』も輸入盤店で在庫品を買ったのを覚えている。

 初めて買った中古盤が何だったのかは記憶に残っていないが、中古盤店を利用するようになったのがレア・グルーヴ・ブーム以降であることは間違いない。近田さんのマネージャーをしていたK君に連れられて神保町の『レコード社』を教えてもらい、『いもや』の味もそのとき覚えた。

 中古盤には、値札のところに買い手の目安になるような手がかりが記してあることがある。最近よく見かけるのは「和ディスコ」「メロウ」などで、筒美京平、村井邦彦などの作曲者名を記したものも定番である。ちなみに「和ディスコ」はさんざん買った経験からいうと玉石混交すぎて、今ではそれだけで購入しようと思わないが「メロウ」は割合あてになる。つい先日も森園勝敏の「ジャスミン」というシングルに「メロウ」と記してあるので買ってみたら当たりだった。この曲が収録されたアルバムも探すつもりである。

 今回取り上げた「ジェラシー・ゲーム」(SMS レコーズ / SM07-219)は、筒美京平作品と記してある割には安かったことが購入の動機になった。千円以上だったら手を出していない。シンセ主体のミディアム・テンポという実は和モノにはありそうであまりないそのサウンドに、針を落として思わず声が上がった。編曲を担当している大谷和夫の名前には聞き覚えがなかったので調べてみたら、元SHOGUNのメンバーで「火曜サスペンス劇場」の劇番も手がけている。このシングルのサウンドは、その大谷和夫という名前が今後の購入の目安になるほど魅力的だった。