山崎まどか : アイ・キャン・シー・ザ・ミュージック - Vol.2 [2012-04-03]
どうも。ラナ・デル・レイの顔を思い浮かべようとすると、どうしてもサタデー・ナイト・ライブのクリステン・ウィグによるラナ・デル・レイのモノマネに邪魔されて本人の顔に辿り着けない今日この頃の山崎です。
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しかし、「Video Games」のMVで注目されて彗星のごとくデビューしたラナ・デル・レイが、「サタデー・ナイト・ライブ」の直立不動パフォーマンスでハイプだったと叩かれるまでの期間の短さときたら、今時の現象としか言いようがありません。でも私は嫌いではないですよ、ラナ・デル・レイのアルバム。YouTubeで拾った映像をモンタージュした「Video Games」のMVも、選んだ映像の裏付けとなる教養なしで雰囲気だけで素材をチョイスしているところが、夢みがちなティーンのスクラップ・ブックみたいでいいと思います。使われている素材の中で、黄金期ハリウッドの女優のようなけだるさを漂わせてパパラッチの面前でよろける女優が、マーティン・スコセッシプロデュースのドラマ『ボードウォーク・エンパイア』でスティーブ・ブシェミの愛人を演じるパス・デ・ラ・ウエルタだという事実にもぐっと来ます。三十年代や四十年代の本当のハリウッドではなく、その雰囲気を持った女優の映像を使う。ラナ・デル・レイの歌詞世界というのは、そういう「イメージ」の複合体であることが、「Video Games」のMVからよく分かります。でも雰囲気先行だからこそ漂う儚さというのもあって、現実の彼女のパフォーマーとしての実力を暴いてみせたところで、その儚い魅力が全て消え失せるわけでもない。だからこそ、幻の西海岸ムードたっぷりな「Blue Jeans」のMVもコラージュもので攻めた方がよかったんじゃないかと思うんですけどね。そしてモノクロのこのMVでの彼女を思い浮かべようとすると、やっぱりクリステン・ウィグに邪魔される。美人だけどラナ・デル・レイが大人顔だから起きる現象で、(本人は気に入っているようですが)ワンピースにコンバースのスニーカーというリリー・アレン的なコーディネートも今すぐやめるべきだと思います。
最近見た中で一番気に入ったのは、The Internetの「Fast Lane」。あの悪ガキ集団OFWGKTAの紅一点、DJでシンガーのシド・ザ・キッドのユニットですが、あのストーカーMV「She」やゴキブリを食べる「Yonkers」のタイラー・ザ・クリエイターと同じクルーだとは思えないような洗練されたサウンドとMVにやられました。アメリカの荒涼とした背景をバックに、銃を片手に車やガソリン・スタンド、ダイナーを襲って逃避行を続けるレズビアン・カップルというコンセプトは『テルマ&ルイーズ』を思わせます。シド・ザ・キッドはレズビアンであることをカミング・アウトしていて、度々「ファゴット」という言葉を使うことで同性愛者に対して差別的ではないかと非難されるタイラー・ザ・クリエイターが、実際にはセクシュアリティに関して何の偏見もないことを証明しているかのようでもあり、興味深いです。「Fast Lane」のラストが、前作の「Cocaine」の冒頭になるという仕掛けも憎い。The InternetのMVを手がけたマット・アロンゾは弱冠26歳にしてFar East Movementやアイス・キューブのMVで既に映像作家として確固たる地位を築いていて、映画界にも進出予定があるというので楽しみです。
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