山崎まどか : アイ・キャン・シー・ザ・ミュージック - Vol.7 [2013-07-08]

「女子とニューヨーク」という本を出してしまうほどニューヨークの街が好きな私ですが、この街を舞台にしたMVの傑作は枚挙に暇がありません。パブリック・エネミーの「Fight The Power」、ビースティー・ボーイズの「An Open Letter to NYC」……もちろん忘れてはいけないマイケルの「Bad」。

 

 

今年もまた、そうした名作群に加わるべく、多数のMVがこの街に思い入れのあるミュージシャンによって撮影されています。

 

例えば、キャット・パワーのその名も「Manhattan」。多くの旅行者が「ニューヨークに来たー!」と感じるクィーンズ・ブリッジからマンハッタンに入っていって、流れるようにザ・シティの様子を見せていくビデオですが、キャットさんはトラックの荷台にでも乗っているのでしょうか?ダウンタウンの中古レコード屋やバー、裏通りといったあまり旅行者が行かないようなところに混じって、ちゃんとタイムズ・スクエアにも行ってくれるところが微笑ましい。ニューヨークに長く住むミュージシャンにとっても、この風景がザ・ニューヨークであることが分かります。

 

 

旅行者が行くスポットといえば、ここもそう。エンパイア・ステート・ビルディングの展望台で「Despair」のビデオを撮ってニューヨーカーたちを泣かせたのはYeah Yeah Yeahs。あの狭いところでよく頑張った…。

 

 

深夜二時から明け方五時に撮影されたというビデオは、最後に空撮でとらえた朝日が昇ったマンハッタンの風景が感動的。

「絶望しないで/あなたはそこにいてくれた/最初から最後まで/私が虚しい日を過ごしている時も/あなたはそこにいてくれた」

と歌われる相手が、ニューヨークの街そのものではないかと思えてくる美しいビデオです。コートを脱いで、まばゆい黄色いスーツで跳ね回るカレン・オーが一際イノセントに見えます。

 


ニューヨーク讃歌といえば、こちらも負けていないVampire Weekendの「Step」。メトロポリタン美術館やコロンバス・サークル、ニューヨーク公共図書館といったマンハッタンの特徴的な風景をつややかなモノクロで映し出すこのリリックス・ビデオは、明らかにゴードン・ウィリスが撮影したウディ・アレンの『マンハッタン』のオープニング・モンタージュを模したもの。オリジナルの映画でかかっていたのは「ラプソディ・イン・ブルー」でした。そして「Step」で歌われている「マイ・ガール」とはもちろんニューヨークのことです。

 

 

コロンビア大学で結成されたVampire Weekendのこの街に対する思い入れは半端ではありません。「Ya Hey」のビデオでもクライスラーやエンパイア・ステートが見えるビルの屋上でシャンパンを振っていました。

 

 

そんなVampire Weekendの最新オフィシャルMVの「Diane Young」は、お馴染みの監督だったリチャード・アヨエイド、ジョビー・タルボットに替わって、プリモ・カーンが登板。フェイスマスクを被った男を中心に、メンバーやパーティに来た人々が彼を取り囲んで「最後の晩餐」を思わせる食卓につくというビデオですが、そこここに見た顔があります。ダーティ・プロジェクターズのデイヴ・ロングストレスは友だちだから納得するものの、サンティゴールド、そしてスカイ・フェラーラはちょっと意外だったのですが、プリモ・カーンが彼女たちのビデオを撮っているので、その人脈で来たようですね。しかし、Vampire Weekendのリーダー、ロスタムはそろそろ弟で『The Sound of My Voice』『The East』といった女優ブリット・マーリングとのコラボ作で注目されている映画監督ザル・バトマングリをMVに起用するべきではないでしょうか。

 

 

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