山崎まどか : アイ・キャン・シー・ザ・ミュージック - Vol.11 [2014-07-02]
YouTubeの新有料サービスからインディ・レーベルがはねられたことで、今後はYouTubeでインディ・バンドのミュージック・ビデオは見られなくなるかもしれません。まだどういった形でミュージック・ビデオがはねられるか、はっきりしたことは分からないのですが…今後はVimeoに期待をするしかないのでしょうか?
とりあえず、行方を見守ることにしましょう。
さて、相変わらずインディ・バンドの音楽が公開されている現時点のYouTubeで話題のビデオといったら、ジア・コッポラが監督した Blood Orange の"You’re Not Good Enough"のビデオでしょう。
プリンス風の軽いファンク・リズム+シンセ・サウンドという曲に合わせて、ビデオの方も80年代のテレビの音楽番組の収録という設定。いかにもなウェアのダンサーたちに混じって踊るデヴ・ハインズが、意外なくらいダンスが上手い! 白一色の衣装も決まっていますが、これはUrban Outfittersの提供品。実はこのビデオ自体が、Urban Outfittersの制作するミュージック・ビデオのシリーズのひとつなのです。
監督のジア・コッポラも「スタジオの調整室にいるディレクター」という形で顔を出します。
先日『Palo Alto』の監督として長編映画デビューを果たしたジア・コッポラは、映画監督フランシス・フォード・コッポラの孫娘で、ソフィア・コッポラの姪に当たります。センスとアパレル業界との強いコネクションに、叔母さんの強い影響を感じますよね。
ジア・コッポラが他に撮ったMVといえば、Opening Ceremonyの企画で撮った、Coconut Recordsの"Is This Sound OK?"。
Coconut Recordsはジアの親戚、ジェイソン・シュワルツマンのユニットで、彼と一緒にビデオに出演しているのは、ソフィア・コッポラのミューズ、キルスティン・ダンスト!
non plus one from Tracy ANTONOPOULOS on Vimeo
ゴダールの「ワン・プラス・ワン」等、ヌーヴェル・ヴァーグを意識したというビデオの内容も、透けて見える人脈も屈託がない。でも、この屈託のなさが魅力でもあります。
ジア・コッポラ+アパレル+西海岸業界二世(どころか三世)コネクションでもう一本。Zac Posen for TargetとコラボしたThe Likeの"Fair Game"。キラキラ光るライトに照らされて、暗闇からThe Likeのメンバーたちが浮かび上がります。The Likeのメンバーとは幼なじみというジア・コッポラですが、ミュージック・ビデオの世界そのものとも強い絆があります。
ソフィア叔母さんの元夫であるスパイク・ジョーンズが監督したWaxの"California"。
火のついた男がロスの路上をスローモーションで走って行くこのビデオは、90年代のミュージック・ビデオを代表する傑作ですが、最後に映る、車の後部座席にいる気怠げな小さい女の子、あれは、実はジア・コッポラの幼い日の姿なのです。
YouTubeで話題のビデオをもう一本。これを外す訳にはいきません、OK Goの"The Writing's On the Wall"。
メンバーが倉庫のようなスタジオを移動して、様々なアートの一部になっていく様子を、長回しのカメラで捉えたもの。これはすごい。どこかで巧妙につないでいるのかもしれないけれど、分からない。
この作品をはじめ、OK Goのビデオは段取りが大事な長回し一発撮りのものが多いですよね。
インディでもメジャーでも、クリエティブなミュージック・ビデオが見られる大事な現場として、YouTubeにも機能し続けてもらいたいものです。
【関連作品】
BLOOD ORANGE - CUPID DELUXE
孤高の天才による最新作は、KindnessとInc.を結ぶインディ・R&B/シンセ・ファンク激傑作!!
COCONUT RECORDS - DAVY
Jason Schwartzmanによるポップ・ユニット。2009年リリースの2nd.アルバム!!
LIKE - RELEASE ME
メチャクチャ最高すぎます。Mark Ronson Prod.による爆裂キュート・ポップ・アルバム!!