マヒトゥ・ザ・ピーポー : マヒトゥ・ザ・ピーポー: 第三回「MY LOST MEMORY」 - [2019-08-30]

夏の間はずっと混乱してる。わけのわからないニュースが飛び交い、ため息をつく間もなくただ駆け抜けるように電波は高速で走り抜ける。
もううんざりだ。夏にもしも死んだとしたら、幽霊になったことも気づかずに、ライブハウスの後ろの方でうろうろしながら音楽を聞いたりしてるのかな。疲れたよ。ほんとうに疲れた。

口をポカンとあけアイスをほおばりだらしなく足を投げ打って、天井を見ている。
ミントのアイスがおろしたてのLess Than TVのシャツについてどうしようもなく落ち込んでくる。胸の奥をつままれたように縮こまった。

 

T.V. NOT JANUARYの「ふつー」を聞いている。
呼吸している。ため息も聞こえる。ふつーに生きてる。ふつーに生きられない時間があることも知ってるような気がした。
シャツを水洗いすると水色のシミがうっすら残った。疲れてる。オレにはなんでもない日が必要だった。
生きるってことはガッツだべ 冗談じゃない。そう思うよ。かなしくても寂しくても生きてかなくちゃ。

池ちゃんとはこの夏、色んな場所であったな。苗場のホテルの廊下、大雨のパレスのテントの下、メテオナイト。
会うとふわっと空気が明るくなる。夏の朝の日差しみたいだ。ちゃんと生きたい。ダメでもいいから人間を続ける。

 

 

 

夏はハードコア・パンクが聴きたくなるね。G.L.O.S.S.はいつだって勇気をもらうな。
「LOST IN TRANSLATION 誇りを捨てないこと」。それはどんな時もあなたを救ってくれる。

解散の際の宣言はいつ見ても尊敬する。
「解散後にBandcampで得たお金は全て、信仰の垣根を越える労働者緊急宿泊シェルター、
オリンピアにある簡易ホームレスシェルター(ホームレスを経験した人の社会参加を促す活動や、メンタルヘルスケア等も行う緊急宿泊施設)に寄付されます。」

 

 

 


偉そうに鋲だけ打って威張ったり、体鍛えて暴力にいそしむ。仮にどれだけ音が 歪んでても、優しさのかけらもない。
そんなのパンクでもなんでもないからさっさと椅子をなげうってどっかで隠居生活してほしいよ。マッチョは嫌いだ。

セミファイナルジャンキー、みんな生きてた。物理的に死ぬほどあつくて、酸素たりなくて、自らが動物なんだって確認させられる。
名前のないヘンテコな虫がちゃんと生きてるように誰のためでもなく、汚い顔で笑いながら存在してた。尊いよ。

 


最後のWETNAPの表情忘れらんないな。
政治のことも大事だけど、おじいさんの飛ばされた帽子を拾うのも大事だ。半径10メートルの世界をないがしろにしながら大義のために売り飛ばされた正義。
クソつまんない矛盾だらけのパンクには悲しくなってくる。もうすべて終わりにしたい。


https://wetnap-band.bandcamp.com/releases

 

あのバンド解散したらしいよ。30リツイート。終了。それでそいつの音楽人生はおしまい?あとはたまに語る思い出?ふざけんなよ。

死んでしまった友達のこと、誰ももう話題には出さない。一度もっともらしく書いてたやつも今はタピオカの列に並び、夜にはカラオケで雑な乾杯をストーリーにあげてる。
おい、お前はちがうのか?
一緒だよ。
どんどん薄れてく。悲しいけどいない世界が普通になっていく。忘れていくことが悲しい。たまにあの子が書いたイラストのシャツ、オレは着てるよ。
全力で走ること以外にはできない。テクニックでうまれてきたわけじゃないもんな。


半分落としたからもう一度アイスを買いに行ったけど、寄り道してたら鰻屋に入ってた。

濃いお茶、冷たすぎる冷房。今日はレコード屋にいって銭湯にいこう。


蝉の声が聞こえる。

 

なんだか悲しい。