なかの綾 / はせはじむ : 白熱教室。 - 第四回 [2015-09-30]
はせ)今回でこの連載も一区切りとなるわけですが、最後に、これからのなかの綾の血肉になりうる、先達によるグルーヴを体感してもらおうと思ってます。
綾)長かったようで、あっという間でしたね。皆様、お付き合いありがとうございました。
はせ)演歌〜ムード歌謡なジャンルに身を置きながら、果敢にミクスチュアに挑んだ曲たち。
美しき徒花、とでも申せましょうか。
もう5年前?ボクがあなた「なかの綾」をデビュー、ビルドアップさせる為に参考にした曲も中にはあります。
元々は近田春夫さんの『電撃的東京』であったり、『ソリッドレコード夢のアルバム』であったり。
最後の決め手になったのは、ポール・アンカが『Rock Swings』でグラミーを取ったことでした。
それを日本流に変換したらどうだろうと、以下にお見せするような曲を聴きまくっていたわけですが。
まあ、吉澤ダイナマイトやDJフクタケによる良質なガイド本やオムニバスも近頃充実してますので、さらに深く掘り下げたい方はそちらで(笑)。
綾)懐かしいですね。DJブース脇で喧々諤々していたのを思い出します。”日本語” というだけで毛嫌いしていた私にとっての大きな転機となりました。
はせ)時代は変わりましたね。
では早速。
一曲目はエレキ演歌No.1。望月浩「君にしびれて」。
はせ)素晴らしいですね、歌声も塩っからい、「もう戦後ではない」という時代感をブリブリに内包しています。
GSと歌謡曲をつなぐ一曲でもあります。
今は亡き鎌田のえとせとらでゲットした懐かしい一枚でもあります。
あ、筒美京平先生の作曲家デビューは、この人、望月浩「黄色いレモン」なんですよ。
作詞は当然、橋本淳さん!
綾)大人の疾走感と申しましょうか。高度成長に浮かれてるこの雰囲気、大好物です。しかし、この時期のベンチャーズの影響力って、すごいよね。
はせ)世のエレキ・ブーム、凄かったんですね。
そういえば数年前、近所の公園の夏祭りにベンチャーズ来てましたよ。
ニセモノかと思ったらホンモノでした(笑)。
綾)(笑)いくつになられたんでしょう。
はせ)次行きましょう。
鳩とバドミントンと嫁で有名な新沼謙治の「黒潮列車」。
彼のリズム感の良さは、幼心に記憶に残ってるんですが、こんなにグルーヴィーなブラスロックをやってます。
綾)あぁ。まだ食わず嫌いな感じ。これ。
はせ)そう?
独特のコブシを見事に16ビートに溶け込ませている。
なのに、イナタイ感じのみ前面に出てるというこの曲。
そのくらい、演歌のコブシというものは強烈なんですね、
DNAレベルで。綾さんには、歌姫系よりも、こっちを目指してもらいます。
綾)年頃の娘にはキツいです!先生!
はせ)五木ひろし「夜汽車の女」は同系統、というか、いわゆるロック演歌、というジャンルがあればそれでくくれるであろう曲。
ちなみに松村和子「帰ってこいよ」は、ボクの中ではロックではありません。
綾)「都落ちてはるばると」の部分の歌詞のハマりが秀逸ですね。
はせ)前述の「黒潮列車」、そして夜汽車、電車のガタンゴトンにロックのリズムを見いだしたのか、ドゥービー・ブラザーズの「ロング・トレイン・ランニング」に電車つながりをで触発されたのか。
作詞は山口洋子。
綾)流石!の一言ですね。
はせ)ちょっと変わりダネを。
カーラ・ヤング「ヨ・テ・アモール」は基本演歌、というか歌謡曲なんですが、所々にちりばめられたドラム・ブレイクがDJ心に引っかかるレコード。
綾にカバーさせようかな、とか思ってたんですがヤメました。
はせ)アルバムも見たこと無いし、これしか持ってないので、よく分からないんですけどね。
綾)どうコメントしろと?笑
はせ)では次。小林旭「ショーがないね節」。
ズンドコ・リズムの決定盤です。
はせ)単純に超カッコいい曲です。
無理矢理ルーツを辿ればドリフの、というか、なにより御本人が歌っておられるズンドコ節でしょう。
綾もカバーした、青江三奈「女とお酒のぶるーす」でもある。
ブーガルー、ロック、ラテン、そして、ボクはこのリズムに、ショッキング・ブルーの「ヴィーナス」の影を見いだします。
綾)コブシにソツがないというか、無駄がない歌唱に、お二方とも大尊敬しております。
破壊力が凄いですね、、、
はせ)なかの綾、という事で「なかの」つながりでローレン中野・和田弘とマヒナスターズ「ゆうわく」。
綾)以前ラジオでもかけてましたね。これは初めて聞いたとき衝撃を受けました。
はせ)うん、オリーブの首飾り、日本語のヴォーカリーズ。
ムード歌謡ディスコ。
ポール・モーリアは知ってるんでしょうかね?
当時は世界中であったのかもしれませんね、こういうこと。
この「ゆうわく」を含むアルバムではスタイリスティックスのカバーも演っていて、DJに人気の盤ですね。
綾)海外の曲に日本語の歌詞がついているものって、実はあまり受け付けなかったんですが、この方のは、そんな私でもすんなり聴けました!
はせ)ぴんからトリオの宮史郎さん「女のみち!OLE!」。
子供心に、「醤油で5時間ばかり煮込んだような歌声だな」と思っていましたが。
あの「女のみち」をこんなラテンに。
はせ)やっぱり演歌とラテンの食い合わせはスゴく良いんですね。
山内恵美子「太陽は泣いているセンセーション'78」、尾藤イサオ&ドーン「悲しき願い」的なスパニッシュ・アレンジ。
どう?最高でしょ?
綾)これは!!ダンスフロアでみんなニヤニヤしながら踊ってしまうやつですね。
ナイスなリズムと溢れ出るユーモア。
はせ)では、これからあなたが、いわゆる洋楽カバーをする際、こういう風に日本語に変換できればな、という、ある意味鉄板の見本を。
内山田洋とクール・ファイブ「イエスタデイ・ワンス・モア」。レコード好きな人にはド定番の一枚です。
はせ)小林さんの巻き舌発声、コブシ、聴いているだけで場末の酒場、ケバい年増のホステス、安物のウィスキー、襟が長くネクタイの結び目がコブシほどもある中年男性、そういった情景がありありと浮かぶ名演です。
しかしオリジナルはカレン・カーペンターのはかなげな歌、という落差。
綾)あぁ。これはアカン。私、アカン。コーラスワークは秀逸だけど、アカン。
一周して、、、いや、やっぱりアカン(笑)
はせ)最後に紹介するのは、これは演歌か歌謡曲か、カテゴライズが難しいですが。
それほど古いわけではないのに、色濃く昭和を彷彿とさせる一曲。桜たまこ「東京娘」。
歌、歌詞、アレンジ、きちんとしてるな。
綾)ドドンパ!曲調としては、本日ご紹介の中で、一番好きかもしれません。古いようで新鮮。
はせ)というわけで、数回にわたったこの連載、一応基本に据えていたお題は「歌謡ミクスチュア」という点でありまして。
元々歌謡曲というものには、洋楽からのインスパイアを和洋折衷で昇華させた大衆音楽、というルーツがあります。
それが連綿と続いては、いる。
ジャズ、ラテン、ブルース、ロック、レゲエ、ヒップホップ、R&B、テクノ、それこそ最近はEDMとか。
そして、それだけで完結してしまう内向的な純歌謡曲や、洋楽のカバー然としたまんまなモノより、その中に一滴、勘違い、というかユーモアの差し色が入っているモノをボクらは愛します。
なかの綾と創るモノも、そうありたいと思っているんです。
そして、JET SETはそういうユーモアを解する素敵なレコード・ショップであると。
そういえば綾さん、そろそろ新作が出ますしね。
綾)はい!ついにオリジナルに挑戦する事になりました!
<新作情報 メーカー・インフォより>
なかの綾が遂にオリジナル曲をCD+アナログ7インチでリリース決定!
なんと!「ウィスキーがお好きでしょ」の田口俊&杉真理の強力タッグによる夜のキラー・チューンが完成!プロデュースにはお馴染のはせはじむを迎えた盤石の布陣!
歌謡曲ファンには嬉しいカラオケ付き!
なかの綾 - エピソード1
はせはじむプロデュースのとびきりヒップなラテン・ジャズ歌謡超最高曲!!
二人)みなさま、今までありがとうございました!