Dr.Looper / 2018-03-07

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FUNKY PRESIDENT / HUMPTY DUMP PT.1

JAMES BROWN / VIBRETTES - FUNKY PRESIDENT / HUMPTY DUMP PT.1

ブレイク・クラシックのファンク名曲をリエディットするBreaks & Beats第4弾!

7" |  ¥1,800 |  BREAKS & BEATS (UK)  |  2022-02-08 [再]  | 
毎月毎月よくこれだけ『UBB(Ultimate Breaks & Beats)』関連盤が出るもんだなあと感心しながら、今月はこちらをご紹介。UBB13番のタコDJをモチーフとしたレーベル・デザインは、よく見ると足の部分に通し番号が入っていて、本盤はこの7インチ・シリーズの4枚目になるようです。James Brownのブレイクと言えば"Funky Drummer"が有名ですが、なかなかどうして、ことヒップホップに関しては"Funky President"の方が即戦力が上だし、より使われているような気がします。UBBではRhythm Heritage"Theme from S.W.A.T."や、The Jackson 5"It's Great to Be Here"(去年ユニヴァーサルが世界初7インチ化しました)あたりと共に、UBB10番(通称:『緑』)に収録されたこの曲は、キック、スネア、ハイハットとバラして使用されることも多いため、実際に使われててもなかなか気付きづらいのですが、現時点で何と821曲もの楽曲でサンプリングされています(WhoSampled調べ)。かくいう自分も今まで散々サンプリングしてきましたが、特に記憶に残っているのは、あのZeebraが初期のKGDR(キングギドラ)で使いまくっていたこと(あまり論じられませんが、彼は優秀なトラック・メイカーだと思います)。ちなみにZeebraがトラックを作ったライムス「口からでまかせ」のギドラ・パートでも、しっかり使われています。
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IT’S A NEW DAY / TRESPASSING

SKULL SNAPS - IT’S A NEW DAY / TRESPASSING

星の数ほどサンプリングされて来た定番ブレイクにしてファンク・クラシックが7"再発!!

7" |  ¥2,050 |  DYNAMITE CUTS (UK)  |  2021-01-12 [再]  | 
一方、『UBB』には収録されていないのにサンプリングされまくったドラム・ブレイク、というのもいくつかありまして、Lafayette Afro Rock Bandの"Hihache"や、The Whatnautsの"Why Can People Be Colors Too?"あたりも確かに象徴的な曲ではありますが、なんといっても本盤"It's a New day"こそがその代表格のような気がします。自分が最初に耳にしたのはおそらくStezo"It's My Turn"(1989年)でしたが、ファースト・アルバムが素晴らしすぎたOrganized Konfusionが"Who Stole My Last Piece of Chicken?"(1991年)で使っていたこともあり、当時仲間内では「チキン・ビート」と呼んだり呼ばれたりしていたのですが、今となっては懐かしいやら、恥ずかしいやら。というのも、当時はブレイクの元ネタが分からず、Soul Syndicateレーベルから出た『Breakdown』というコンピ(おそらく1993年)に収録されていて、初めてそこで正しい曲名を知ったから、なのでした。以来、その曲名をメモった手帳を片手にレコードを掘ってみたものの、(当然のごとく)なかなか見つからず。オリジナルの7インチを入手することが出来たのは、実に21世紀に入ってからのことでした。上記の曲以外にも、Kool G. Rap & DJ Polo"On The Run"(1992年)や、The Pharcyde"Passin' Me By"(1992年)、Black Moon"Who Got Da Props"(1993年)、Ultramagnetic MC's"Two Brothers With Checks"(1993年)などなど、その使用例には枚挙の暇がありません。数多くのヒップ・ホップ・クラシックスのボトムを支えた本曲ですが、使用例の最高峰はやはりGang Starr"Take It Personal"(1992年)じゃないでしょうか。何から何まで最高。こんなトラックを作れたら他に何も思い残すことはない。死んでも良いと思います。
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CAN'T HIDE LOVE

JAYE P. MORGAN - CAN'T HIDE LOVE

幻の'76年AOR名盤より、中でも人気の高いE,W&F超絶品カヴァー!!

7" |  ¥1,400 |  THE REGAL BEAGLE LOUNGE (USA)  |  2021-03-23 [再]  | 
Earth, Wind & Fireの"Can't Hide Love"と言えば、1975年の発表直後から多くのカヴァーが存在し、中でもAzar Lawrence(1976年)やJimmy Smith(1977年)やArt Webb(1977年)などのインスト・カヴァーも秀逸でしたが、Carmen McRae(1976年)のヴォーカル・カヴァーも渋くて素敵でした。が、なんと言っても1976年の本盤はとびきり最高な出来。というのも、プロデューサーのDavid Fosterのもと、Ray Parker(実はLove Unlimited Orchestra出身のギタリスト。"Woman Needs Love"そしてゴーストバスターズ!)、Jay Graydon(Steely Dan"Peg"で7人目にしてギター・ソロを採用されたのは彼でした。後にEarth, Wind & Fireに提供した曲でグラミー賞を獲得。実はあの「DA・YO・NE」ネタ曲の作者でもあります)、Jeff Porcaro(TOTOのドラマー)、David Hungate(TOTOのベーシスト)など、当時黄金期を迎えた西海岸の手練たちが、1950年代から活躍していたTVスター兼シンガーのJaye P.Morganのために集結、素晴らしいAORアルバムを作り上げたからです。ところが残念なことに、リリース元のCandor Recordsはこのアルバム1枚出したきりで倒産。その内容の素晴らしさと、レーベル側の事情により盤の流通量の少なさが祟って、結果的には幻の名盤として古くから高値で取引されてきました。そうした状況のなか突如としてリリースされたのが、アルバム中でも屈指の名曲でもある"Can't Hide Love"の当7インチ再発。はたして何枚買えばよいのか、検討もつきません。
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CARNAVAL FEAT. MIYAKO KOUDA

STUDIO MULE - CARNAVAL FEAT. MIYAKO KOUDA

Dip in the Poolの甲田益也子をフィーチャー★大貫妙子による80'sダンス・クラシックの絶品カヴァーです!!

12" |  ¥1,800 |  STUDIO MULE (JPN)  |  2020-01-23 [再]  | 
今からちょうど30年前、18歳の時に受験で訪れた京都。当たり前のように勉強そっちのけで中古レコード屋を巡り、新京極のレコード店で購入した思い出の1枚が、大貫妙子『Romantique』(1980年)でした。大貫妙子と言えば、近年セカンドアルバム『Sunshower』(1977年)の再評価熱が高いようですが、その後の音楽性(ヨーロピアン・テクノとでも言うのでしょうか)の道標となり、何よりヒットしたという面でも、4枚目のアルバムにして前述の『Romantique』はかなり重要なアルバムだと思います。坂本龍一プロデュースによる、正確にクオンタイズされた打ち込みのバック・トラックと、大貫妙子の歌声の親和性に、当時は疑問を感じたというのも事実ですが、今改めて聴いてみると、むしろ彼女のか細くてアンニュイな歌声だったからこそ、全体があの得も言われぬ浮遊感に包まれているような気がするのです。その収録"Carnaval"(A1)をカヴァーしたのが、大貫妙子に負けじ劣らずの透明感溢れる歌声の持ち主でもある甲田益也子(Dip In The Pool)。2016年にオランダのMusic From Memoryから、"On Retinae"(こちらも素晴らしい名曲です)が再発されたのも記憶に新しいところですが、ともかくなんて素晴らしい人選・・・思わず「え!」と声を上げてしまったほどの衝撃でした。『Midnight In Tokyo』といい本盤といい、しばらくStudio Muleから目が離せません。
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SUN GODDESS (180G)

RAMSEY LEWIS - SUN GODDESS (180G)

E,W&Fのメンバーと生み出したレア・グルーヴ大名曲"Sun Goddess"!!

LP |  ¥3,850 |  MUSIC ON VINYL (HOL)  |  2022-04-21 [再]  | 
思えばRamsey Lewisという人は、最初から最後まで立ち位置が変わっていない稀有なピアニストだったのではないでしょうか。例えば、出自はジャズ畑ながら徐々にポップ・フィールドへと移行していった同郷のシカゴ出身のHerbie Hancockあたりと比べると、Ramsey Lewisは、(もちろん最初からジャズ・ピアニストではあるのですが)一貫して大衆的な音楽を演り続けてきた気がします。別の書き方をすれば、ジャズ・ミュージシャンなのに極めてコカイン臭がしないというか、なんだか優しい。それは何より、彼の人柄やミュージシャン仲間との関係性が良好だったからではないかと。そのパートナー・シップが結実した本盤は、かつての仲間のMaurice Whiteがバックアップをしたこともあり、ビルボードのブラック・アルバム部門、ジャズ・アルバム部門ともに首位を獲得、というミリオン・セラーとなりました。そのヒットのきっかけとなった表題曲"Sun Goddess"ですが、僅か2、3時間でレコーディングされて、インストゥルメンタルのままでは寂しいという意見から、最後にMaurice WhiteとPhilip Baileyによる「♪ウエイヨー・・・ウエイヨー・・・」というコーラスが軽く追加されただけなんだそうです。そう言えば、ふと本アルバムを世界で1番2枚使いしているDJはDJ Jinだと気づきました。1996年には表題曲を使った"And You Don't Stop"のルーティンが完成してましたから、かれこれ20年以上2枚使いを続けているわけで。ご褒美に180g重量盤のこちらを2枚、プレゼントしようかなと。

Dr.Looper

Profile

1979年よりレコードを買い始め、その魅力に取り憑かれたまま今に至る。1990年から1998年までRHYMESTERに参加。現在はROCK-Tee(ex.East End)とL-R STEREOとして活動中。

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