Dr.Looper / 2018-06-02

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WINDY C COLLECTION

100% PURE POISON - WINDY C COLLECTION

Pete RockネタやMuroさんミックス収録曲を含む人気の4曲が2枚組7”で再発!!

2x7" |  ¥2,800 |  DYNAMITE CUTS (UK)  |  2018-06-25  | 
2000年以降にPete RockやJ Dillaが使用したことで一躍有名になった本曲を、自分が初めて聴いたのは1995年にBlue Noteから出た『Capitol Rare Vol. 2』でした。Blue NoteからCapitol音源のコンピレーションが出るというのも不思議な話ですが、つまりは90年代前半にUKから発祥したジャズファンク・ブームにあやかったもので、一般的なジャズ・ファンからは見向きもされなかったような、Blue Note後期(主にLA時代)の音源に再びスポットが当たり、クラブ・ミュージックとして再評価された結果、再発盤やコンピレーション盤(『Blue Break Beats』が代表的でしょうか)などがセールスに恵まれ、ついにはBlue Noteの親会社であるCapitolの音源も混ぜて、同じようなテイストの曲を集めたコンピレーションを出すにまで至ったのでしょう。Ronnie Fosterの"Mystic Brew"やMinnie Ripertonの"Inside My Love"というお馴染みの曲に混じり、初めて聴く本曲があまりにも素晴らしかったので、慌ててオリジナル盤を探したものです。が、実はかなりのレア盤で、オリジナルLP盤を見たのはそれから10年以上経った後のことでした。本グループは1970年代にドイツに駐留していたたアメリカ軍の軍隊バンドだったようで、リーダー兼ギタリストのDanny Leakeはシカゴ出身。ということで"Windy C"なのでしょう。そういえば本曲はDJ JIN監修の通販限定のCD5枚組コンピレーション、『Searchin' for the Perfect Beat』(1997年)にも収録されていました。かなり早い時期の彗眼に敬意を評して、ここに記しておきます。
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NO MORE / COMING FROM THE HEART

FREEWAY - NO MORE / COMING FROM THE HEART

今回初の7"化となったモンスター級モダン・ソウル・トラック"No More"を搭載!!

7" |  ¥1,750 |  PRESERVATION (NOR)  |  2021-09-07 [再]  | 
同名バンドがいくつかあって紛らわしいのですが、このFreewayはキーボーディストMark Jeleniewski(Mark J)を中心とした白人5人組で、1979年から84年まで活動し、アルバムを1枚出したきりで消えてしまった伝説のグループ・・・と思いきや、Mark JはFreeway解散後もToo Muchというバンドで活動を続け、なんと今でも地元ポートランドを中心にライヴ演奏を続けている、とのことでした。彼のウェブサイトを覗いてみると、「オレゴン州で最も優秀で最も愛されているキーボーディスト」と書かれていたり、1週間4ステージのライブ予定表に加えて「イベントや結婚式でのご用命承ります」という積極的な営業文句が謳ってあったり、1時間50ドルでピアノの個人レッスンも行ってたりもしているようで。1981年作の本曲は、溜めの効いたグルーヴに美しいコーラスが絡み合う素晴らしくメロウな曲で、おしゃれで少し控えめなイメージ。その一方で、2018年現在も自画自賛しながらしぶとく音楽活動を続ける本人のバイタリティとのギャップもあり、正直少し戸惑いを覚えたのでした。でも良く考えたら、これこそがミュージシャンのあるべき姿なのかも。ポップス史では「消えた」はずのミュージシャンが、実は街角でライヴをしていたり、ホテルのラウンジのお抱えバンドとして演奏を続ける。それが音楽文化本来の奥深さというものでしょう。B面には、2016年にMark J & Freeway名義でリリースされた未発表曲アルバムからの1曲が収録。こちらも文句のつけようのない素晴らしい曲です。
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I WOULDN’T CHANGE A THING

COKE ESCOVEDO - I WOULDN’T CHANGE A THING

リエディット7"も大ヒットした、フリーソウルとしても大人気の1曲!が7"再発!!

7" |  ¥2,650 |  EXPANSION (UK)  |  2024-04-14 [再]  | 
今月も『Ultimate Breaks & Beats(以下UBB)』関連盤をご紹介。Coke Escovedoは1941年にメキシコ系音楽家の一家に生まれました。若くしてファミリー・バンドであるEscovedo Brothers Bandに参加し、パーカッションの腕を磨いたようです(そして実は彼の姪は世界で最も有名な女性パーカッショニストの1人、Sheila E.だったりします)。45歳の若さで亡くなってしまったCoke Escovedoは、自身の名義で3枚のアルバムを残しましたが(それ以前はCal TjaderやSantanaバンドに参加したり、兄弟バンドAzteca名義で作品を残しています)、本曲は1976年のセカンド・アルバムに収録。Johnny Bristolの原曲も最高ですが、Coke Escovedoの叩くタンバリンとドラムブレイクで始まる本曲の疾走感も負けず劣らず最高です。『UBB』シリーズでは、Eastside Connection"Frisco Disco"(2016年にマーブル盤で7インチ化)や、The Meters"Handclapping Song"(名ブレイク!)などと共に、13番(通称「タコ」)に収録されています。Eric B. & Rakim"Follow the Leader"など数多くの曲で使われた本曲、『UBB』でのクレジットが"(Runaway) I Wouldn't Change a Thing"となっているのは、アルバムで本曲の前に収録されている"Runaway"のコーラスヒットが頭に足されているためで、そのせいか『UBB』育ちのDJの中には本曲を"Runaway"と呼ぶ人もいますが、そのへんはご愛嬌。2006年に独Uniqueからも7インチでリリースされていますが、そちらはそちらで現在はそれなりの値段になっていますので、この機会に是非。
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ラヴァーズ・ロック

PIZZICATO FIVE - ラヴァーズ・ロック

超衝撃の初7インチ化★ソニーミュージック期唯一のシングル曲!!

7" |  ¥1,980 |  SONY MUSIC (JPN)  |  2024-04-13 [再]  | 
細野晴臣の主宰レーベルNon-Standardからデビューした、1985年の当時からずっと追いかけていた自分にとって、80年代後半のピチカート・ファイヴは正直、見ていてハラハラさせられるものがありました。CBSソニーからのデビュー・アルバム『couples』も、鴨宮諒と佐々木麻美子が抜けて田島貴男を招いた『Bellissima!』も、どちらも言うまでもなく最高のアルバムだったのですが、商業的にはどうやら芳しくなかったようで。その後のアルバムは、どことなく先端的な音楽の傾向を過度に意識した作風に感じたり、挙句の果てにまたしてもヴォーカリストが交代、しかも再び女性に戻るという・・・たった4、5年でヴォーカリストがこれだけコロコロと変わる、しかも性別を超えてまで変わるグループというのも、とても珍しい気がします。最終的にはライヴのサポート・メンバーを務めていた野宮真貴が3代目のヴォーカリストの座に落ち着き、今まで作ってきた音楽を全否定するかのように、ヒップホップやレゲエなどクラブ系の音楽を貪り食い始めたピチカート・ファイヴを見ていると正直、これまで素晴らしいアルバムを作ってきたにもかかわらず、過小評価をされ続けていることに対する燃え尽き症候群的なイメージを感じたのでした。そんなある日、テレビを見ていると、JTの新商品『チェロキー』のCM(当時はまだ煙草のCMが地上波で放映されていました)の後ろで流れていたのがこちらの曲。デビュー・アルバムの作風を彷彿とさせる、清涼感溢れる楽曲アレンジが気に入り、すぐに短冊CDを買い求めたのを思い出します。当時はアナログでは発売されなかったのですが、28年の年月を経て遂に7インチ化。20代の頃の記憶が鮮明に蘇るこの曲、改めて聴き直すとなるともしかしたら泣いてしまうかも。もちろん入手はしましたが、実際に聴くのは少し先のことになりそうです。
5
LE DELTAPLANE

ANDRE SOLOMKO - LE DELTAPLANE

絶賛された前作に続き、アーバン・メロウ~A.O.R.路線の素晴らしい内容!!

LP |  ¥3,550 |  FAVORITE (FRA)  |  2023-06-15 [再]  | 
これまで2枚出たアルバム(2012年と2014年にリリース)はどちらも素晴らしい出来栄えで、3か月に一度は聴き直していましたが、聴くたびに心が安らぐというか、気持ちがリセットされるような心地良さがあり・・・なにかとストレスが溜まる東京での生活の中で、密かに情緒安定剤の代わりに常用していたことをここに告白します。4年ぶりのサード・アルバムとなる本盤は、予想以上に素晴らしい内容でますます好きになってしまったのですが、今回ふと思い立ってAndre Solomko自身について初めて調べてみたところ、てっきり三十代ぐらいだと思い込んでいたのに実は1965年生まれという、何気に自分よりも年上だったという衝撃的な事実を知り、今もなお驚きを禁じえません。現在フィンランドを拠点に活動する彼のバイオグラフィーには、出身地がウクライナとありますが、1965年生まれということは早い話ソビエト連邦生まれということで、つまりは共産党解体の激動や混乱、荒廃といった社会情勢の激動を背中に感じつつ20代を過ごした、ということになります。想像もつかないような悲惨な経験や辛い思いをしてきたはずなのに、彼の作る音楽には怒りや嘆きがまったく感じられず、むしろそれらとは完全に対極にある感情(多幸感や恍惚感)を投影した、美しさや軽やかさを感じます。旧共産圏でいったいどんな経験し、どんな紆余曲折の末に、現在どのような思いで音楽表現に向き合っているのか。彼の作る美しく軽やかな音楽もさることながら、その不思議なギャップを通じて、彼の人生そのものに興味を惹かれてしまうのでした。

Dr.Looper

Profile

1979年よりレコードを買い始め、その魅力に取り憑かれたまま今に至る。1990年から1998年までRHYMESTERに参加。現在はROCK-Tee(ex.East End)とL-R STEREOとして活動中。

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