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Dr.Looper / 2018-10-05
1
JUDY ROBERTS - NEVER WAS LOVE
Gilles Petersonも愛した屈指のクラブ・ジャズ・クラシックが初7"カット!!
Judy Robertsを初めて知ったのは、1990年代初頭にUKから出ていた『Jazz Juice』というコンピレーションでした。実はこのシリーズがGilles Peterson監修であることを知ったのはそこからだいぶ後の話なのですが、そのとき初めて耳にした"Never Was Love"の虜になり、そちらが収録されているアルバム『The Judy Roberts Band』(1979年)のLPを探し始めたのですが、これがまたなかなか見つからずで。数年後にやっと見つけた時には恐ろしく高額になっていたので、結局手が出せなかったのですが、現在はだいぶ値段も落ち着いているようで何よりです。ちなみにこのアルバムはInner City Recordsからも発売されていますが、彼女のプライヴェート・レーベルMadonna Recordsからリリースされた方がオリジナル盤ということのようです。さて。一聴するとブラジリアン・ジャズ節が全開なのに、意外にもシカゴ出身の彼女、同郷のブルース・ロックのギタリストHarvey Mandelのアルバム『Get Off in Chicago』(1971年)でキーボードとヴァ-カルを担当して脚光を浴びると、1977年には映画『Betrayal』のサントラにヴォーカリストとして参加。そうしたキャリアを経た後の1979年に、晴れてソロ名義でアルバム・デビューを果たしたのでした。そのアルバムの冒頭を飾る、夜のドライブに似合いそうな高速メロウ・チューン"Never Was Love"と、多幸感溢れる"Fantasy"がカップリングされて、最近勢いに乗る英Dynamite Cutsから初の7インチ化です。James Masonあたりが好きな人であれば、この機会にぜひ。
2
BLACK MOON - WHO GOT THE PROPS?
93年のデビュー作『Enta Da Stage』収録の特大クラシックがなんと7"化!
昔むかし、今から四半世紀前の話。当時はまだちゃんとサンプリング・ネタがクレジットされているヒップホップのレコードが少なく、ネタを発見した際には仲間内にて口頭で伝承されていました。同じグループ内や後輩には会うたびに「あの曲のネタ分かった?」とか「あの曲のネタ知ってる?」と、たびたび情報交換をしたものです。というか、今思えば会う度にその話ばっかりだったような気も。例えばPatrice Rushen"Remind Me"(一時期よく使われました)のことを教えてくれたのはMummy-Dでしたし、D.I.T.C.系のネタの宝庫だったJack Bluesのアルバム『Things We Like』を教えてくれたのはDJ Jinでした。もちろんそのかわりに自分からも彼らに何かを教えたような気もするのですが、今となっては人から教えてもらったネタしか記憶に残っていません。一方で他のグループ(派閥と書いても良いかもしれません)には進んでネタを明かさなかったし、訊かれて知っていたとしても相手を見て答えていた気がします。なんとまあ度量が狭い話ではありますが。結局この曲のネタについては残念ながら周りの誰も知らなくて、どうしても知りたかったので自分が意を決して尋ねた相手が、当時別の派閥だったMuro君でした。たしか下北沢SLITSで一緒のイベントに出た時だったと思いますが、彼はニコニコしながら「ああ、あれRonnie Lawsだよ」と気さくに教えてくれたのを今でも憶えています。Hubertを兄、 Eloiseを姉、Debraを妹に持ち、Blue NoteのLAシリーズ時代にデビューしたサックス奏者であるRonnie Laws。自分は既にその彼の作品のほとんどをLPで揃えていたので、それを聞いたときは正直驚きました。「どのアルバム?」「卵のジャケ」「え!"Always There"が入ってるやつ?」「そうそう」。驚いて帰宅してすぐに針を落とすと、確かにネタが入っていて愕然としました。実は既に持ってたのか・・・と。しかもよく聴くと、原曲のA-B-C-Dの4小節の並びをC-C-C-Dに組み換えてあったり、元音源のLチャンネルの音だけしか使われていなかったり(ステレオでサンプリングするとメモリを食うため・・・まだサンプラーの容量が乏しかった当時の常套手段であり、偉大なる工夫なのです!)。本曲を聴くと、そんな昔むかしの記憶が蘇ります。
3
FOSTER SYLVERS - MISDEMEANOR
レア・グルーヴ~フリー・ソウル、ヒップホップからも愛される大名曲"Misdemeanor"!!
今月も『Ultimate Breaks Beats 以下UBB)』関連盤をご紹介。プロデューサーが同じくFreddie Perrenだったことや、同じくファミリー・グループということもあり、The Jackson 5の二番煎じ、という印象が強いSylversですが、なかなかどうしてThe Jackson 5に勝るとも劣らじの実力派グループだったと思います。少なくとも兄弟姉妹の数はジャクソン兄弟姉妹を凌ぐ10人で、うち9人がメンバー。そして、このL.A.ワッツ地区出身のグループのサウンド・プロダクションの中核を担ったのは、後にDynastyに参加、SolarレーベルでShalamarやMidnight Starをプロデュースした長男Leonでしたが、シンガーとして最も成功したのは末っ子のFoster、ということになるでしょう。本盤A面はそんなFoster Sylversのデビュー・シングル曲。ビルボードR&Bチャート7位のヒットとなり、『UBB』ではThe Blackbyrdsの"Rock Creek Park"やMiamiの"Chicken Yellow"などの有名ブレイクと並んで19番(通称:『レコード・プラネット』)に収録されました。Ahmad JamalによるカヴァーはGang Starrの"Soliloquy of Chaos"でネタに使われていましたが、こちらのオリジナルもThe D.O.C.の"It's Funky Enough"(1989年)や、Big Daddy Kaneの"Get Bizzy"(1991年)など、古くから頻繁に使われてきた定番です。しかし個人的には、2017年に初7インチ化された小沢健二さんプロデュース楽曲、渡辺満里奈「バースデイ・ボーイ」(1992年)ネタとしての印象が実は強かったりします。オリジナル盤のB面はThe Sylvers"So Close"ですが、本盤はFoster Sylversのセカンド・アルバムから"When I'm Near You"をカップリング。こちらは心温まる佳曲で、おそらく初7インチ化だと思われます。
4
V.A. - THE BEST OF UNO MELODIC RECORDS
Roy AyersによるレーベルUno Melodic。名曲だらけのベスト・コンピレーション!!
英Expansionから素晴らしいコンピレーションが届きました。かなり前に独Charlyから『The Uno Melodic Story』という同じような趣旨のコンピが出ていましたが、そちらはもう20年前の話だし、CDのみでアナログは出なかったし、これらの音源を今からアナログで集めるのもなかなか難しいし。で、ぜひこの機会に入手されることをお勧めします。Uno Melodic Recordsはご存知Roy AyersがPolydor所属末期の1980年に立ち上げたレコード会社で、リリース量自体は少なかったものの、Junior M.A.F.I.A.が"Get Money"(1995年)でネタに使ったことで一躍脚光を浴びたSylvia Striplinの"You Can't Turn Me Away"(1980年)や、彼女が所属していたEighties Ladiesの作品、さらにはBlue NoteからEpicを渡り歩いたBobbi Humphreyの作品など、後年に再評価されるような魅力的なタイトルが多いのが特徴。もちろん御大Roy Ayers自身も音源を残していますが、中でもたった1枚のシングルしか残さなかったEthel Beattyの清涼感溢れる佳曲"I Know You Care"(1981年)や、サブ・レーベルGold Mink Recordsに残されたRick Holmesの"Remember To Remember"(1981年)あたりは、「是非聴いていただきたい」としか言いようのない素晴らしさです。それにしても、この頃のRoy Ayersのプロデュース量は目を見張るものがあります(量だけでなくもちろん内容も)。これだけ何度も再発されているわけですから、たとえ発売当時のセールスが優れなくても良い曲は残る。その好例だと思います。
5
MICHAEL WYCOFF - LOOKING UP TO YOU
R&Bネタ、フリーソウルとしてもおなじみの80'sメロウ・ブギー・クラシック!!
Naughty by NatureがプロデュースしたZhanéの"Hey Mr. D.J."(1993年)の大ヒットを通じて、元ネタであるこの曲を知った人は多かったはずで、かくいう自分もその一人です。それまでは恥ずかしながらMichael Wycoffという名前すら知らなかった次第で。しかしよく調べてみると、実は本曲の背景には名ミュージシャンの名前が次々と出てきて意外でした。カリフォルニア出身のMichael Wycoffは、まずStevie Wonderの名盤『Songs in The Key Of Life』(1976年)にコーラスで参加、同年に義兄弟からの紹介でD.J.Rogersと知り合ったことから、本格的にシンガー/キーボーディストとしての活動をスタート。1978年にSound Story Recordsから12インチを1枚出した後、1980年にRCAからデビューして3枚のアルバムを残しました。が、当時の売れ行きは芳しくなかったようです。しかし、セカンド・アルバムに収録された本曲のプロデューサーはWebster Lewis(Gwen McCraeのアルバム『On My Way』のプロデューサーであり、日本語ラップ・マニア的にはあの曲のネタの人として有名でしょう)で、作曲は「メロウ大王」ことLeon Ware、作詞はGrey And HanksのZane Grey(Breakwaterの名曲"No Limit"の作詞も彼)という豪華さ。さらにパーソネルはドラムスにJames Gadson(『UBB』収録曲Cheryl Lynn"Got to Be Real"やDyke & The Blazers"Let a Woman Be a Woman, Let a Man Be a Man"のドラマー)、ギターに「メロウの神様」David T. Walker、元EW&FのAl McKay、ベースはStevie Wonderのお抱えベーシストであり、Sylvia Striplinの"Give Me Your Love"でも弾いていたNathan Lamar Wattst、という錚々たるメンバーでした。オリジナル盤7インチは店頭でめったに見かけないですし(今まで1回しか見たことがありません)、2014年に英Outta Sightから再発された7インチも、あっという間に見なくなりましたし、ぜひこの機会に。安心と信頼の英Expansionsから。
Dr.Looper Chart
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