Dr.Looper / 2019-10-07

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ERIC B IS PRESIDENT / LONG RED

ERIC B. & RAKIM - ERIC B IS PRESIDENT / LONG RED

Eric B. & Rakimのデビュー曲と『UBB』収録の定番曲"Long Red (Live)"が7"で。

7" |  ¥1,650 |  LIL STATIC (USA) |  2019-09-12  | 
―新宿のレコード店でマーブル面の7インチ盤を見つけて、喜びのあまり試聴もせずに買って帰って聴いてみたら、全然聴き覚えのない牧歌的な凡曲が流れ始めて、(そうか、ライヴ盤じゃないとあのブレイクは入ってないのか)と気づき、後日大宮の店で今度はCBSソニーから出ていた日本盤(1972年リリースの「暗黒への旅路」のB面)を見つけて、(今度こそは)と意気揚々と買って聴いてみると、そちらはそちらで冒頭のドラム・ブレイク、つまり肝心な部分がバッサリとカットされていて思わずひっくり返ってしまった― Mountain"Long Red"の7インチ・シングル盤の思い出、といえばこんなところでしょうか。Mountain自体については明るくないのですが、1969年にニューヨークのロング・アイランドで結成されたハードロック・バンドとのこと。そして本盤のB面に収録のライヴ・ヴァージョン(1972年)ですが、実はかの有名なウッドストックのフェスティバル(1969年)での実況録音なのだそうです。数万人の歓声の中でNorman D. Smartが叩いたビートは、『Ultimate Breaks Beats』(以下『UBB』)9番、通称「スポットライト」に、ESGの"U.F.O."やBilly Squierの"Big Beat"、そしてThe Whole Darn Familyの"Seven Minutes of Funk"といったブレイク最重要曲と一緒に収録され、Common、Nas、Jay-Z、Kanye Westをはじめ、数多くのラップ・タレントの楽曲でサンプリングされた(実に700曲以上!)、ヒップホップ史上最も重要なドラム・ブレイクの一つです。というか、これをサンプリングしたことがない90'sのトラック・メーカーなんていなかったんじゃないか?とすら思います。ということで当然多くのプロデューサーが好んで引用していた訳ですが、なかでも印象的だったのはやはりPete Rockでしょうか。ドン・シャン・ドン・ドン・ドシャンというノイジーなドラムのステレオ感は、主にキックやスネア単音の味付けの為のレイヤー・フレーズとして使われており、彼のとある時期のプロデュース曲には、そのほとんどに"Long Red"が使われていたような気がします(いや、決して大げさではなく)。一方のA面はEric B. & Rakimのデビュー曲であり、ヒップホップ史上においても最重要曲の一つでもある"Eric B. Is President"。実は前述の"Long Red"を、最も早く引用した楽曲でもあります。この曲のプロデューサーについては、「クレジットされていないけど実はMarley Marlがプロデュースした」とか、「いや、ネタを持ち込んだのはEric B.で機材をマニュピレートしたのがMarley Marlだった」など諸説ありますが、いずれにせよ文句なしのクラシックです。オリジナルの7インチ盤はめったに出会えませんので、この機会にぜひ。
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I WANT YOU BACK / SISTER JANIE

HAROLD MABERN / FUNK INC - I WANT YOU BACK / SISTER JANIE

Jackson 5"I Want You Back"の人気インスト・カヴァー!!

7" |  ¥1,600 |  BGP (UK) |  2019-07-13 [再]  | 
この夏は久しぶりにFunk Inc.を聴き返しました。このインディアナポリス出身の5人組ジャズ・バンドのことは、『UBB』11番、通称「オレンジ」に収録されていた"Kool Is Back"などを介して曲単位では知っていましたが、初めてアルバムを通して聴いたのは、1990年代前半のアシッド・ジャズやジャズファンク・ムーヴメント以降のことでした。十数年ぶりに聴いたらどう感じるのかCDで聴き返してみたところ、(やっぱりこの手の音楽はデジタルで聴くべきではないな)と思い(他にも例えばThe Metersなんかもそうなのですが、その辺分かってもらえるでしょうか?)、実家に放ったらかしだったLPの方をわざわざ取りに帰った次第です。90年代前半の東京には、Blue NoteのいわゆるLAシリーズや、Prestigeの10000番台などを扱う中古レコード屋がまだまだ少なかったこともあり(・・・と書くと言い訳がましいですが)、5枚のアルバムのうち4枚は、当時LexingtonやBGPから出ていた再発盤でした。実際に聴き返してみたのですが、予想はしていたものの、やはり当時とさほど変わらぬ印象でした。失礼な話ですが、大前提としてバンド・メンバーが全員そこまで楽器の演奏が上手くない。リズム隊も走りがちだし、ドラムの音も明らかにマイクの数が足りてない感じで、率直に言うとこれを聴くぐらいならJB'sを聴いた方がマシかも、というレベルです。想像するにFunk Inc.は、地元インディアナポリスのバーやクラブのお抱えバンドとして、当時のヒット曲をひと通りカヴァー演奏していたのでは、と。実際にFunk Inc.のアルバムには、Kool & The GangやThe Meters、Sly & The Family Stone、B.B. King、Barry White、Curtis Mayfield、The Spinnersといった錚々たるラインナップの楽曲のカヴァーが目白押しです。特に、元々はMarvin Gayeの曲ながら、21世紀になるまで御蔵入りしていた"Where Are We Going?"のDonald Byrdヴァージョン(1973年)を、その翌年(1974年)に発売された4枚めのアルバムで早速カヴァーしていた、という事実に驚かされます。ちなみにギターのSteve Weakleyは、同じくインディアナポリス出身のヴィブラフォン奏者Billy Wootenと共に、『In This World』(1979年)というアルバムも残しています。そういえば、そのBilly Wootenの"In The Rain"(1972年)もカヴァー曲でしたっけ。ジャズの名門Prestigeからリーダー作を出したファンク・グループは意外と少なくて、調べてみてもFunk Inc.とIceぐらいしかなかったようです。持ち前の強い団結力でバーやラウンジでどさ回りをしながら、1年に1度の頻度でレコーディングするという、実にグループ活動の基本をなぞるかのようなバンドですが、そういうバンドは今や観光地ぐらいでしか見かけなくなったように思いますし、もしかしたらそのうちに映画やドラマの中でしか見られなくなる、絶滅危惧種のような形態なのかもしれません。そう考えながら聴くと、少し走りがちなリズム隊や雑なアンサンブルも、妙に愛らしく聴こえるのでした。
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SUPER SPORM / HALLELUJAH

CAPTAIN SKY / GUS POOLE - SUPER SPORM / HALLELUJAH

定番ファンク/ディスコ・ブレイク曲をエクステンデッド・バージョンでカップリング!!

7" |  ¥1,750 |  BREAKS & BEATS (UK) |  2019-09-24  | 
2017年からリリースが始まったこのシリーズも、気がつけば13枚目。今回は残念ながら両面とも『UBB』収録曲ではありませんが、どちらも世界初となる7インチ化。のはず。まずA面は、シカゴ出身のベーシストDaryl Cameronの変名ユニット、Captain Skyによるドラム・ブレイク入り楽曲"Super Sporm"(1978年)で、こちらはオールドスクール・ブレイクの代表的な一曲。12インチ・シングルは白盤とジャマイカン・プレスしか存在しないようです。1957年生まれのCaptain Skyは、Bootsy Collins(1951年生まれ)やGeorge Clinton(1941年生まれ)らに続く、Pファンク系の次世代アーティストとして活躍しました。本曲のドラム・ブレイクが、Boogie Down Productionsの"You Must Learn"(1989年)で大胆に引用されたことで人気曲に。5分にも及ぶドラム・ブレイク直前にある、ドラムが抜けてヴォーカルのみになる部分、つまり「Su, Per, Sporm」の3拍+スネア1拍の小節が、昔から好んで引用されてきた印象です。Public Enemyの"You're Gonna Get Yours"(1987年)とか、De La Soul"Supa Emcees"(1996年)などがこのパターン。一方B面には、謎のキーボーディストGus Pooleが1枚だけ残したアルバムの収録曲で、変則的なドラム・ブレイク入りの"Hallelujah, Alright, Amen!"がカップリングされていますが、オリジナルのリリース年が不明で、参加ミュージシャンも無名ゆえに全体的に詳細不明なのですが、その中にクレジットされているサックス奏者Chet Christopherの名前は、Lemuriaによるハワイ産A.O.R.最高峰アルバム(1978年)にもクレジットされていました。でも、Gus Pooleのアルバムの方ではアルトで、そちらのLemuriaのアルバムの方ではテナーを吹いているようなので、もしかしたら別人なのかもしれません。それにしてもなんでまたこの2曲の組み合わせなんだろう?、と先月に続いて今月も一瞬悩んだのですが、よく考えたら本家『UBB』の方も、「なんでこの曲が?」みたいな曲が結構たくさん収録されてましたっけ。
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FUNKY FOR YOU / DO THAT STUFF

NICE & SMOOTH / PARLIAMENT - FUNKY FOR YOU / DO THAT STUFF

ヒップホップとその元ネタをカップリング・リリースする5 Borough Breaksの第21弾!

7" |  ¥1,650 |  5 BOROUGH BREAKS (UK) |  2019-09-24  | 
ところで1980年代後半あたりのUSヒップホップで、「Pファンク・ネタ・ブーム」があったことをご存知でしょうか?それまではJames BrownやJB's路線のファンクや、『UBB』収録曲がそのままサンプリングされる事が多かったのですが、とある時期になぜか同時多発的にPファンクが引用され始めたのです。EPMDの"You Gots to Chill"(1988年)で"More Bounce To The Ounce"が使われたり、"Me Myself and I"(1989年)でDe La Soulが"(Not Just) Knee Deep"を使ったり。JB'sにはない、Pファンク特有の粘っこいグルーヴが、「それまでとはノリが違う」バック・トラックを生み出したことは、当時一つの事件でした。とはいえ、単なる一時的なブームのように思われていたこのPファンク・ネタ使いですが、日常の生活と車の文化が密接な関係にあるローカル・シーンにおいてはどうも非常にシックリ来たらしく、特に電車の走っていないL.A.を中心とする西海岸の文化圏では、後にGファンクが世界中を席捲したこともあり、数年を掛けて完全に市民権を得たと言えます。例えばLBC Crewの曲を聴いて、わざわざ「Pファンク・ネタだ」としたり顔で解説するような人は今更いないでしょう。そのことこそが、「西海岸のラップ=Pファンクのノリ」のイメージが定着したことの証左でもあります。ところで、1989年の段階で23番まで出ていた『UBB』シリーズですが、意外なことにPファンク系の収録曲は少ないです。唯一Funkadelicの"You'll Like It Too"が収録されていますが、これは本家から分裂した亜流による楽曲で、いわゆる「偽」Funkadelicであることはご存知の方も多いでしょう。そうではなく、例えば"Atomic Dog"のように、ど真ん中のPファンクながらネタとしても定番化している楽曲が、『UBB』の収録から漏れているというのは、少し不思議な気がします。さて前振りが長くなりましたが、今回の7インチのB面に収録されているのは、正真正銘のPファンク名曲。頭にドラム・ブレイク入りの「ほんわかPファンク」で、A面のヒップホップ・クラシックはもちろん、最近(とはいえもう10年前)ではノルウェーの2人組ユニット、Röyksoppの"Happy Up Here"(2009年)でも思いきり引用されていました。何を隠そう、実はかつてRHYMESTERでもこの曲を引用したことがありまして、それは当時の「Pファンク・ネタ・ブーム」の影響をモロに受け、楽曲自体も見た目もそちらに寄せて、メンバーにダンサーやヒューマン・ビート・ボクサーもいるような、和製Parliamentを体現するべく大所帯化を目論んでいた時期、つまりRHYMESTERのキャリアとしては超初期の頃の話ではあるのですが。ちなみに、それを当時向こうで既に体現していたグループこそが、ソロ・デビュー前の2Pacも在籍していたかのDigital Undergroundだったりします。メインのループは(当時比較的新しい曲でしたが)思い切ってThe Jankyard Bandの"The Word"(1985年)を使いつつ、"Do That Stuff"の例のほんわかフレーズを乗せて展開を作りました。耳だけを頼りにサンプル・フレーズの頭を切り、"The Word"のループに乗せてみると、音の頭の位置によって微妙にノリが変わることや、ゴーゴーのビート・パターンにはスイート・スポットが沢山あるので様々なパターンの乗せ方が出来る、という発見があったことをよく覚えています。サビに映画『ゴーストバスターズ2』でお馴染みのBobby Brown"On Our Own"(1989年)を乗せ、その上でMummy-Dが「オンナはオンナ~♪」と歌えば、RHYMESTER「オ・ン・ナ」の完成。当時必ずライヴでやっていた曲ですし、デビュー前のデモテープには収録されていたので、今でも覚えてらっしゃる方も少なくないでしょう。Mummy-Dこと坂間兄本人にとっては、もはや「封印したい」を超えて「え?それオレやってた?ホント?」みたいな感じで完全にトボけられてしまうレベルかも知れません。それぐらい昔の話です。
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EARLY BIRD (BLACK VINYL)

LEONARDO MARQUES - EARLY BIRD (BLACK VINYL)

宅録世代のブラジリアン・シンガー・ソングライターLeonardo Marques!!

LP |  ¥2,850 |  180G / DISK UNION (FRA) |  2019-08-29  | 
先日なにげなく見つけた音源が気になり、"The Girl from Bainema"という曲のMVを観たらあまりにも素晴らし過ぎて・・・まるで「頭蓋骨を開けられて脳みそを掻き回されたような感覚」というのでしょうか、とにかくめったに感じないレベルの衝撃を受けたので、今回ご紹介させていただこうかと思います。まるで一筆書きかのようなシンプルさなのに、旋律や音階の動きに数学的な意味まで感じさせるような、とても不思議なメロディ。絶えずノイズが乗った、くぐもった音色。今まで聴いたことがありそうで無かった音楽でした。しかも曲に輪にかけてMVの映像が素晴らしく、気づけば5回目の再生ボタンを押したところで慌てて我に返り、とりあえずオンラインでポチってLP盤を注文したのでした。実のところ新譜のアルバムはCDで買うことが多いのですが、これに関してはなぜかアナログで持っておかなければという思いに駆られました。内容的にきっとアナログのほうが違和感なく聴くことが出来るだろうし、A&MやCTIあたりのアートワークを意識したと思われる、とびきり美しいデザインのジャケットを存分に楽しむなら、やはりアナログLP盤こそが最適なのではないか、という判断に基づいてのことです。Leonardo Marques本人について調べてみると、どうもブラジル出身のシンガーソングライターのようなのですが、L.A.のヴィンテージ楽器専門店で働いていたことがきっかけで、それらのアナログ機材を使って楽曲制作するようになった、とのこと。そしてすべての楽器をほぼ独りきりで演奏しているそうです。あ、そのタイプのミュージシャンでしたか。どうやら"The Girl from Bainema"や、その双子曲に聴こえる"Sol Que Me Enfeita"(こちらの曲も最高)で聴くことのできる、主旋律をなぞる不思議な音の正体は実はメロトロンだったようで、管楽器に似て非なるこの謎の楽器、人間臭さをあまり感じさせないのはそのせいだったのか!と実に納得させられたのでした。メロトロン実機を使用する説得力の強さも感じますし、色々と制御しづらいヴィンテージ楽器を敢えて使うことで、ある種の緊張感が生まれてもおかしくないのに、実際の作品は尖った音とは真逆の、緩く気怠い感じに仕上がっているというそのギャップにも驚かされました。とはいえ偶然の産物とかではなくて、実はその辺も細かく計算されているのかも?とも。20世紀半ばから始まった記録音楽の歴史も半世紀以上が過ぎ、録音機材も録音の手法も円熟期に達した今だからこそ作ることの出来る楽曲であり、これこそが正に「2019年の音楽」と言える傑作だと思います。

Dr.Looper

Profile

1979年よりレコードを買い始め、その魅力に取り憑かれたまま今に至る。1990年から1998年までRHYMESTERに参加。現在はROCK-Tee(ex.East End)とL-R STEREOとして活動中。 Instagram:drlooper | Facebook:https://www.facebook.com/fujita.asuka.3