Dr.Looper / 2020-02-08

1
90'S (BLUE COLOR VINYL)

DJ CAM - 90'S (BLUE COLOR VINYL)

"Neburosa"使いで人気のCypress Hill"Highlife (DJ Cam Remix)"ほか12曲を収録。

LP |  ¥3,450 |  IATTYTUDE (FRA)  |  2020-01-20 [再]  | 
2019年にリリースされた、Pete Rockの『Return of the SP1200』というアルバムが実に素晴らしい内容で、もちろん仲間内でも好評だったのですが、あのアルバムに呼応するかのように、今度は仏ジャジー・ヒップホップ界の第一人者DJ Camから、90年代回帰をテーマにしたアルバムが届いたのでした。フィジカル・リリースとしては、2015年のアルバム『Miami Vice』以来で、そちらは同タイトルの刑事ドラマへのトリビュート・アルバムだったのですが、シンセ音源がメインの内容だったこともあり、正直なところあまり好みではありませんでした。一方、本盤は打って変わってサンプリング+αという、ある意味昔ながらの作風で全編が統一されています。というのも、今回のコンセプトは「(DJ Camが)19歳になる1992年の夏休みにN.Y.を訪れた際の思い出」、だそうで、まさにあの時代の象徴的な音作りに最大限の敬意を払いつつも、細かい手法やミックス処理の面では、確実に2020年のサウンドへとブラッシュ・アップされていて、文字通り温故知新な作品へと仕上がっている、という訳なのです。しかも今回のこのアルバムにはボーナス・トラックとして、ボールのようにコロコロと転がるピアノ・リフが美しい、Tenorio Jr."Nebulosa"使いのCypress Hill"Highlife"リミックス(1999年)や、アッパーでハードな質感だったNasの"Made You Look"(2003年)のオリジナルVer.を、一転メロウに仕上げたリミックスも収録。両曲とも一度2013年に、Inflamableから『Unreleased Remixes』としてアナログ化されましたが、流石に最近ではあまり見かけませんので、アナログ・レコード好きの方はぜひこの機会に。そういえば、そろそろDJ Cam Qurtetの新作も聽きたいなあ、と。
2
FUNKY DRUMMER / ROOT DOWN

JAMES BROWN / JIMMY SMITH - FUNKY DRUMMER / ROOT DOWN

人気定番ドラム・ブレイク/ジャズ・ファンクをエクステンデッド・バージョンでカップリング!

7" |  ¥2,350 |  BREAKS & BEATS (UK)  |  2024-02-22 [再]  | 
久しぶりに英Breaks & Beatsレーベルから、『Ultimate Breaks & Beats』(以下『UBB』)関連盤が登場(ややこしくてすいません)。A面はご存知"Funky Drummer"で、この曲といえばやはり"Mama Said Knock You Out"、ということになるのでしょうか。もう少し上の世代の方には、中西俊夫さん率いるMELONの"Hawaiian Break (Stuupid! 4 Trax Mix)"にて全面的に使われていたドラム・ブレイク、としてお馴染みかもしれません。これまで実に1500以上もの曲でサンプリングされており(Whosampled調べ)、ここ東京でも、日本のヒップホップの黎明期から『MCゴングショー』などで重用されてきましたが、なぜかラッパーからは不評のドラム・ブレイク、という印象です。スネアの手数が多過ぎてラップが乗せづらくなるのか、それともドラム・パターンのクセが強過ぎて、ラッパーがフロウで個性を表現するのが難しくなるのか。感覚的な話なのでよく分かりませんが、理由としてはおそらくそんなところでしょうか。B面には、流浪のファンキー・オルガニストJimmy Smithが、1972年にVerveに残した名盤のアルバム・タイトル曲を収録。こちら7インチ化はたぶん世界初じゃないでしょうか。3rd Bassの出世曲"Steppin' to the A.M."(1990年)の渋いリミックス・ネタとしても記憶に残る曲ですが、あちらが力づくでループさせているのに対して、Beastie Boysが原曲本来のダイナミックさを(曲名ごと)そのまま頂戴した、1995年のヒット・シングル曲のネタとして、の方が有名なのかもしれません。もちろん原曲も素晴らしいのですが、Beastie Boysの方の"Root Down"を今あえて聴き直してみたら、あまりの格好良さに腰を抜かすかと思いました。いや本当に。身の毛もよだつ(?)格好良さ。Jimmy Smithが本当にやりたかったことは、実はこれなんじゃないか?と思うぐらいの昇華具合。サンプリングではなくて、ここまでくるともはやセッション。慌てて海外の某中古屋に7インチ盤を注文してしまいました・・・えぇと、何の話でしたっけ?
3
THE PARLIAMENTS EDITS

JORUN BOMBAY - THE PARLIAMENTS EDITS

Jorun Bombayによるヒップホップ・サイドからのPファンク・オマージュ。

7" |  ¥2,050 |  BLACK BUFFALO (CAN)  |  2020-01-10 [再]  | 
カナダはハリファクスのリエディット職人、Jorun Bombayが次なる素材として選んだのは、ありそうで無かったPファンク楽曲でした。ジャケットはParliamentのアルバム『Motor Booty Affair』(1978年)からのインスパイアで、イラストはPhill"The Soulman"Stromanの手によるもの。もちろん奇才Overton Loydへのオマージュの意味も込められているのでしょう。にもかかわらず、素材として選んだ曲は"Aqua Boogie"ではなく、なぜか"Knee Deep"という・・・そもそも"Knee Deep"はParliamentじゃなくてFunkadelicの曲じゃないの?などと思ったりもするのですが、まあそれはともかく両面とも最高でした。特にB面が素晴らしい出来栄えで、Parliament『Mothership Connection』(1975年)収録の"Mothership Connection (Star Child)"の、曲の中盤以降の展開パート(というか、2分15秒ほどからようやく出てくる2つ目のコード部分)のエディットで、つまりは曲の展開や構成で難解さ(もしくは変態さ)を表現したPファンク楽曲の中の、ある意味キレイだけな部分だけがカットアップのうえでループされたエディットということで、好事家には実にたまらない仕上がりとなっております。Ohio Playersあたりの楽曲でも突如流麗な展開が出てくることがありますが(つまりはWalter MorrisonやBernie Worrellがよく使う手法ということです)、あの流麗な部分だけのエディット、と書くと伝わりやすいでしょうか。とにかく最高です。西海岸好きの方も、ぜひ。
4
WHATCHA GONNA DO FOR ME? / PRIVATE PARADISE

YOUNG GUN SILVER FOX - WHATCHA GONNA DO FOR ME? / PRIVATE PARADISE

Ned Doheny作のアーバン・グルーヴ超名曲カヴァーが限定7インチ・リリース!!

7" |  ¥1,980 |  P-VINE (JPN)  |  2020-01-21  | 
"What Cha 'Gonna Do for Me"は、もともとはNed DohenyとHamish Stuart(Average White Bandのギタリスト)による共作曲であり、アルバム『Shine』(1980年)収録のAverage White Band名義のヴァージョンがオリジナルでした。しかしその翌年に、同曲をアルバム・タイトル曲としてChaka Khanが大々的にカヴァー、シングル、アルバム共に、それまでの彼女のキャリアを塗り替えるかのような最大のヒットとなり、一躍世界的にも有名な曲となりました。ちなみにChakaのヴァージョンですが、ドラムがSteve Ferrone(Average White Band)、ベースがAnthony Jacksonという、後々に矢野顕子さんとのトリオとしてここ日本でも知られることとなる、手練の職人リズム隊コンビが担当しています。そして最近、オリジナルのAverage White Band版の更にオリジナルとも言える、Ned Dohenyが歌った1980年のデモ・ヴァージョンが米Numeroの手で発掘され、世界初7インチ化されたことも記憶に新しいところ(と、思ったらもう6年前のことでした・・・)。なんてえらそうに書いていますが、私がこの曲を知ったのはリリースから10年ほど経った1990年前後のこと。ある日MCシロー(現:宇多丸)が「ちょっとしたヒガミ」という曲名を思いついたらしく、満面の笑みで私に向かって(この曲のメロで)「ちょっとしたヒガミ~」と替え歌を披露してきたのですが、私がキョトンとしていたのが気に食わなかったのか、「・・・知らねえのかよ!」と叱られたことがありました。実はそのやり取りこそが、私にとっての"What'cha Gonna Do for Me"との出会いだったのです。初期のRHYMESTERのライヴでこの曲をやる際には、自分がensoniq製のEPSで組んだDetroit Emeralds"You're Getting a Little Too Smart"のドラム・ブレイクのループに、おかずとしてホーン・ネタを乗せて展開を作り、サビの部分では確か、DJ ChocolateがChaka KahnのLPを擦って被せていたはず。ちなみにその時点では、レコーディング・ヴァージョンの方で使ったAllen Tousaintの鍵盤のループは、まだ乗せていなかったような気がします。そんなどうでもいい思い出が呼び起こされるこの曲を、今回はロンドン出身のAORデュオがカヴァー。こちらは先行シングルとのことで、間もなくアルバムがリリースされるそうです。
5
STEP IN TO OUR LIFE / FOR REAL

ROY AYERS UBIQUITY - STEP IN TO OUR LIFE / FOR REAL

ジャズ・ファンク・シーン大物2人がコラボレートした'78年アルバムより2曲が7"復刻!

7" |  ¥2,100 |  DYNAMITE CUTS (UK)  |  2021-04-02 [再]  | 
同時期に、Kool &The Gangの"N.T."並みに曲の隅々までサンプリングされ尽くした、Roy Ayers Ubiquityの"Searching"も7インチ化されましたが、あちらは私が書くまでもなく有名な曲ですので、敢えてこちらの盤を取り上げさせていただきます。世代的にはTop Qualityの"Magnum Opus"(1993年)ネタとしてなじみのあるA面の"Step Into Our Life"ですが、今となってはそれこそRHYMESTERの「口から出まかせ」という曲のネタとしての方が一般的に知られているのかもしれません。以下はその「口から出まかせ」を制作していた、1995年の年始の頃の昔話。当時極めてレベルの高いデモ・テープが口コミで話題となり、個人的には(ああそういえば『Yo! MTV Raps』の来日時に、六本木の収録現場でFab 5 Freddyに向かって流暢な英語で自分たちを売り込んでいた、あのグループか)というぐらいの認識しか持てていなかったKing Giddra(KGDR)と、Power Rice Crew時代からよく現場で対バンしていて仲が良かったHabが、「MCもDJも倍に増やして新生Power Riceとして改名する」と意気込んでいたSoul Scream、どちらも全身から湯気が出ているような、ノリにノっている2つのグループに声をかけて、一緒に1曲作ることになりました。当時はFunky GrammarクルーとしてEast EndやMellow Yellowとは毎週のように顔を合わせていましたし、いざライヴをやる機会があっても、結局毎回同じようなメンツになってしまうパターンが多かったので、そろそろ新たな刺激を、ということで前述の2組にアプローチした側面も、当時はあったと思います。さて、いよいよ3グループ合同で曲を作るにあたってリファレンスにしたのは、Gang Starrの3rd.アルバム収録曲、"I'm the Man (feat. Lil Dap and Jeru the Damaja)"でした。BPMは同じでも、各ラッパーに応じてトラックごと換えてしまうという、メドレー形式の画期的な構成の曲で、実はJeru the Damajaの初レコーディング曲でもあります。それを手本に、King Giddra~宇多丸~Soul Scream~Mummy-Dの4つのパートと、「不良番長 口から出まかせ」という、映画から引用した梅宮辰夫の声が乗るブリッジの、計5つのパートのトラック構成になりました(King GiddraパートのみをZeebraが、あとの4つのパートは全てMummy-Dが制作)。その結果、三つ巴の調和と緊張感が同居するポッセ・カットが誕生したのですが、当時ライヴでは数え切れないほど演り、しかも毎回必ず盛り上がるという、実に頼もしいアンセムへと成長しました。Zeebraの「フリースタイルダンジョン」という声ネタの起源の曲、と書いたら今風かもしれません。ちなみに「口から出まかせ」のレコーディングは、当時新宿御苑にあったBAZOOKA STUDIOの地下2階、通称「バズーカB2」で行われました。Mummy-Dのラップ・バースは確かテイク2か3ぐらいがOKテイクだったと思うのですが、「綱わたるピエロ照らすような」のラインのフロウを何種類か試して、そのたびに律儀にバースの頭から録り直していたのが印象的でした。その際に、何回録ってもクリック無しで必ず完璧なタイミングでラップに入るDの姿を、コントロール・ルームのモニター越しに見ていたのですが、同じグループのメンバーのことながらあまりにも神がかり的過ぎて、思わず鳥肌が立ったものです。録りを担当して頂いたミキシング・エンジニアの松本靖雄さんも同じく、「Mummyのリズム感はやっぱり凄いね」としきりに感嘆していたのをよく覚えています。

Dr.Looper

Profile

1979年よりレコードを買い始め、その魅力に取り憑かれたまま今に至る。1990年から1998年までRHYMESTERに参加。現在はROCK-Tee(ex.East End)とL-R STEREOとして活動中。

Web Site