伏見稔 : Japanese Pop - [2017-12-22]
[Profile]
現在、ウード&琵琶、自己創作楽器「琵琶ウード」の製作家・演奏家ですが、今年「昔の名前で」リイシュー編集盤がリリースされたので、良い機会のため25年ぶりに新録を出しました。
1. Khalid / American Teen (Right Hand Music Group / RCA) 2LP
これまた米国音楽での新しい才能だと感じた。実は、ここにブラックミュージックの、と付けようとした形容はやめた。というのは、このところ聴いているともはや「ブラックミュージック」という括りが無意味になってきている気がするからだ。だからこそ「ソウル/R&B」「ファンク」といったジャンルわけのほうが現在普通になっているのだろうが。だが、(肌の色で見ているわけではないが)どうしても「ブラックミュージック」という呼称も使いたい気持ちも強いのは、それが歴史上ロックを生んだこともあったし、実に様々なな音楽要素を含むからだ。
と、少々わかりづらい文章で申し訳ないが、この作品はまさにその点を逡巡してしまうような、今までになかったタイプだと思う。
KHALID - AMERICAN TEEN
The Weeknd~Frank Ocean~Brian Taylor路線が好きであれば是非!
2. SZA / CTRL (RCA) LP
昔からソウル系ヴォーカルとラップを組み合わせたタイプよりもその二つを境目がぼんやりとした感じに融合させたタイプの音が好きな自分にとって、この人はまさにストライクゾーンど真ん中。
以前愛聴していたMeshell Ndegeocello(ライヴ公演も行ったなあ)にも通ずる、しかしもっとラフな感じで、また別の魅力。
SZA - CTRL
Kendrick Lamar擁するTDEの紅一点シンガー・ソングライター=SZAのデビュー作がヴァイナルで!!
3. Pierre Kwenders / MAKANDA at the End of Space, the Beginning of Time (Bonsound) LP
30年以上前から(笑)の持論、「ポップミュージックはエレクトロニクス機材によって先祖返りしている」---原型は故・中村とうよう氏による「電気楽器先祖返り論」なのだが、自分はさらにシンセやイフェクターがそれをますます増強させたと考える---は、アフリカ各国のポップミュージックでも顕著であり、古くはKing Sunny Adeなども民族楽器と電気楽器を上手く同居させてきた。 そこへこのアルバムは強烈な一打。まさに現在形のエレクトロ化アフロポップの妙。
PIERRE KWENDERS - MAKANDA AT THE END OF SPACE, THE BEGINNING OF TIME
コンゴ出身の新世代/新感覚アフロ・ミュージック最注目アーティスト!!
4. Fairuz / Bebalee (Black Butte) LP
来ました、現役歌姫の最新盤。80歳を超えているのに歌声に衰えが見られないのがまず驚いた。内容はカヴァー・アルバムで、曲はどれも西欧社会を中心に多くの国々で(日本も含め)人口に膾炙したものばかり。正直、それらの曲には昔から自分はまったく惹かれないのだが、ここでは彼女の声とコブシが聞けただけで十分という気持ち、また今回のカヴァーの意味というものがこのリストに入れさせた。
5. Future / S.T. (Epic) 2LP
今さらだが、米国ヒップホップにおいてこの数年でトラップが完全に支配的立場になった。3連符の乗りが中心になった流れは、80~90年代に米国ラップを多く聴いていた身には突然変異的に当初は思えたが、実はブラックミュージックの歴史全体から考えればさほど意外でもなく、三連的リズム志向は脈々と受け継がれてきたわけで、トラップに至った音楽的変質は本当に興味深いものがある。
そんなことを改めて思い起こさせてくれた、Futureの新作。
Migosのパワーにもやられたが(今年は新作無し)、彼もそれに劣らずトラップの最新形でグイグイ引き込まれた。
FUTURE - S.T.
5th.スタジオ・アルバムがオフィシャル2LPリリース!!
6. Funkadelic / Reworked by Detroiters (Westbound) 3LP
これこれ、こういうのを切望していたんだわ、というそのもの。オリジナルの音と意図は極力保持しつつ、クッキリ2017年の音になっている。エディット/リミックスものは、改悪あるいは無意味という結果の場合も少なくないが、これは良い点しか見当たらない。「やりすぎ」という部分も無いし、ヒップホップやクラブミュージックのフィルターを通してより反復度を増した、現在形のファンクとして最良の結果になった。
FUNKADELIC - REWORKED BY DETROITERS
Moodymann等デトロイトの精鋭達がFunkadelicの名曲群をリミックス!!
7. Logic / Everybody (Def Jam) 2LP
テクニックも構成力も、現在米国ヒップホップ界にあって最も破綻なくその主張が伝わるラッパーであると思っているLogicの新作は、やはり期待を裏切らない素晴らしい出来だった。
現在形のヒップホップアーティストの中でも、Logicは思想や(音楽での)その体現という本来のヒップホップの本質に実に自覚的なのだ。「肌の色」に象徴される「人種」という名の非科学的概念。それにいったいいつまでとらわれているんだ、というテーマは実は米国のみならずここ日本でも重いものなのだが(無自覚な人が多い)。
LOGIC - EVERYBODY
ルーツである劣悪な家庭環境や自身の内面を見つめ直してビーツに乗せた3rd.アルバムがこちら。
8. Broken English Club / The English Beach (L.I.E.S.) LP
ミニマル・テクノの魅力を再認識させてくれた一枚。基本的に機材はリアルタイムで鳴らして音を抜き差ししているような(それが実際かどうかはわからない)ライブ感覚にあふれていて、ああこういうテクノってやっぱり音の隙間がこのくらいあるほうが自分は好みだなと痛感した。同じ感覚の人に強くお勧めします。
BROKEN ENGLISH CLUB - THE ENGLISH BEACH
90年代よりミニマル・シーンをリードするOliver Hoによるプロジェクト、Broken English Clubのニュー・アルバム!!
9. Amancio D'Silva / Integration (Pheon) LP
‘69年とかなり旧い録音のリイシューだが、以外なほど古さは感じない。 まあそれはジャズ系全般に言えることだけれども(案外一時のフュージョン系ジャズの方がよっぽど古臭く聞こえる)。 インドの伝統を取り入れたジャズへの果敢なアプローチで、そこには取ってつけた感じや居心地の悪さはまったく無い。 自らの伝統音楽要素取り入れると決まって言われるのが(自分も過去に経験あり)、やれ「安易だ」「現代ではもはや伝統的音楽感覚は失っている方が普通だから無意味」などの短絡的な批判の言葉。だが、そう決めつける方が逆に安易だと自分などは思う。そしてこの51年前の作品を聴くと、この問題はまだまだ答えが出ていないという思いにとらわれた。前述した通り、今聴いても十分新鮮な音で引き込まれる。
AMANCIO D'SILVA - INTEGRATION
インド出身のギタリストによる'69年のエキゾティック・ジャズ超レア盤が再発!
10. Bootsy Collins / World Wide Funk (Mascot) 2LP
6年ぶりの御大のフルアルバム、いつものBootsy節に満ちていて安心。特に目新しい試みや驚きというものは無いが、これでいいのだ、「変わらなさ」はブラックミュージックの王道でもある。一方で「意表をつく新型」が次々と現れるわけだが、その両面性こそがブラックミュージック。
80年代には大々的に使用していたデジタルサウンドは今回も影を潜め、全体的に生演奏が多い印象。その意味では結構70年代的な感触の音(自分も最近はこの辺りの音が一周してまた新鮮に聞こえている)。個人的にはやはりラッパーが多く参加しているのが良い。まるでBootsyの掌に乗ってラップしているかのようなグルーヴ。特にBig Daddy Kaneの声が聞けたのが嬉しかった。
BOOTSY COLLINS - WORLD WIDE FUNK
豪華ゲストを迎えて、実に6年ぶりとなった待望のスタジオ・アルバムがアナログ・リリース!!
[イベント情報]
-
[関連サイト]
-
[関連商品]
MINORU "HOODOO" FUSHIMI - IN PRAISE OF MITOCHONDRIA
2017年全宇宙が震える超衝撃作。80'sジャパニーズ・エレクトロ・ファンク~日本語ラップ・オールドスクール最異端!!
HOODOO FUSHIMI - くさや
デッドストック限定入荷★80'sジャパニーズ・エレクトロ・ファンク~日本語ラップ・オールドスクール最異端!!