オールタイムベストをお訊きしました!第4回: シャムキャッツ - [2019-03-31]
作品を制作して世に出すアーティストの方々が、リスナーとして愛聴しているのは他のアーティストのどの作品なのか、ファンならずとも気になるところです。そこで始まったこの企画、「オールタイムベストをお訊きしました!」。
第4回目は4月24日にファースト・アルバム『はしけ』('09)のアナログ・リリースが決定した、シャムキャッツの皆さんです。
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菅原慎一、藤村頼正、夏目知幸、大塚智之からなる4ピース・ギターポップ・バンド、シャムキャッツ。淡く儚い日常を切り取る秀逸な日本語詞と、作品ごとに新たな音楽性に挑戦するオルタナティブなサウンド、自主レーベルTETRA RECORDSを拠点としたインディペンデントなバンド運営で絶大な支持を得ています。2019年はデビュー10周年のアニバーサリー・イヤー。彼らの原点であり、現在はCDが入手困難となっているファースト・アルバム『はしけ』の待望のアナログ化を記念し、メンバーそれぞれのオールタイムベストに加え、デビュー当時のエピソードを振り返っていただきました。
text by Mai Sugisawa(JET SET Tokyo)
JET SET: 『はしけ』のリリースから10年、今あらためて聴くとどのような作品だと思いますか?
夏目:変なアルバムだなあと(笑)。良くも悪くも居場所がないというか、どこから来てどこへ行くのか分からない曲たちだって思います。右も左も分からないまま、イメージと勢いで作ったので、今の自分には絶対できないものです。
菅原:若さと無鉄砲さと希望、やりたいこと(でもできていない)がものすごい純度で詰まってる。謎のダイヤモンドの原石みたいな作品。ぶっちゃけかなり恥ずかしいですね。ただバンドの1stっていうのはそれにしかない魔法みたいなものが降りかかっているものなので、これはこれで貴重なものだと思います。
藤村:ドラムが痛々しい程に下手すぎて泣けますが(苦笑)、全体的に不思議なフィーリングをもった作品。歌詞も夏目の鬼才っぷりを発揮していると思う。並べるのはおこがましいですが、良く言えばヴェルベッツの2ndっぽいかもしれないと今回改めて聞いた時に感じました。
大塚:個性だけはある(笑)。良かった。そしてアイデアに溢れてるなーと。色んな事にチャレンジしようという気持ちがある気がする…。みんなもそうだし、自分のベースも。今の自分じゃこんなベースライン思いつかないな。
JET SET: お気に入りの曲と、その曲にまつわるエピソードを教えてください。
夏目:「チャイナは桃色」はよく覚えてます。Zoomのサンプラーでループを作って、FostexのMTRで曲作りした覚えがあります。菅原が当時ブログをやってて、ある日のタイトルが「チャイナは桃色」だったんです。で、いいタイトルだなって思って、曲にしてみた感じ。歌詞もいいなあと今になって思ったり。
菅原:1曲目の「忘れていたのさ」を当時親戚のおじさんに聞かせたところ、「お経みたいだね」と言われました。
藤村:「今日子ちゃんの歌」を繰り返し練習していた時、半分寝ていた気がします。
大塚:「くらげとかもめ」がめっちゃ好きだった。ライブでもよくやっていたし。16のノリだから自分が頑張らないとという気持ちが強かった。この曲に限らずレコーディングでは、そういったリズムに対しての意識を高く持っていて、結構口出しした記憶がある...。
JET SET: これまでの作品の多くがアナログ化していますが、「レコード」に特別な思いはありますか?
夏目:CDでもカセットでもいいんですけど、やっぱりモノはモノとしてとても好きなんです。だからレコードも好きです。データもデータで可愛いんですけどね。ていうか、レコードも一つのデータみたいなもんって考え方もできますよね。実存する、劣化するデータ。でかいし匂いもあるから、また10年とか20年経った時に、そのぶん空気を吸って年をとるのも楽しみです。
菅原:特別な思い、あります。レコードにはレコードにしかない良さがありますし、いちリスナーとしてやっぱり自分達の作品もレコード屋さんに置いてもらいたいと思います。モノって、部屋に置いておくと自然とホコリが積もりますよね。触ると手垢がつくし、汚れたりもする。そういうのが、目に見える愛しさとして感じられるんです。
藤村:自分はレコードコレクターでもないですが、やはり物として大好きです。シャムキャッツはプロダクトが好きな人達なのでレコードリリースしたくなるのは自然なのかなと~。
大塚:レコードだけが特別という気持ちはないけれど、それぞれの媒体の良さがあると思うのでそれを活かせたらなと。レコードの良さはそもそも物が大きいという事と、あと自分のベースの音の乗りが良いので、表現したいことがより微細に表されていると思います。なので、そのあたりも聴いてもらえたら嬉しいなと。
JET SET: 今後の予定を教えてください。
夏目:今年もやっていきます!
菅原:まだまだやりたいことがたくさんあるのでそれを順にやっていきたいです。ツアー『Virgin Graffiti』が始まっています。チケット発売中。詳しくはHPで!
オールタイムベスト by シャムキャッツ
1.The Beatles / Rubber Soul (APPLE (GBR)) LP
全部の楽器の演奏、口で言えそうなくらい好き。(夏目)
BEATLES - RUBBER SOUL (180G/MONO)
全オリジナル・アルバムのモノラル・ヴァージョンがリマスターされ再発!!
2.49 Americans / Wonder (ATLANTIC) LP
僕の音楽感を丸ごと変えてしまったアルバム。(夏目)
3.Mozaika / AQUA EP (PUBLIC POSSESSION) 12"
新しい季節の予感。(夏目)
MOZAIKA - AQUA EP
リリース前よりレーベル~ショップ周りでヘヴィープレイされていたと言う大注目作品!!
4.Erasmo Carlos / Carlos Erasmo (LIGHT IN THE ATTIC (USA)) LP
収録されてる全ての曲はどれも普遍的で、それゆえの強度みたいなのがすごくあります。それにプラスして各々の楽器のアレンジが素晴らしい。ブラジル人アーティストの持つ明るさと複雑さにはいつもたくさんの驚きと発見をもらいます。僕が思う、鳴らされている音楽がどうしようもなくロックだなと思える盤はこれなんです。(菅原)
ERASMO CARLOS - CARLOS, ERASMO...
ブラジリアン・ポップ・スターがトロピカリア・ムーヴメント期に発表した'71年人気アルバムが登場!!
5.ZNR / Barricade 3 (SUPERIOR VIADUCT (USA)) LP
Joseph Racailleによるサティを想起せずにはいられない静かでさびれたアップライトピアノと、Hector Zazouによるパンクなモジュラーシンセ。毒とユーモア、美しくほろ苦い憧れのフランスの音は永遠の憧れ。これこそ、音楽だなぁと思います。この盤を好きな世界中の人たちと食事会をしたい。飲み会ではなく。(菅原)
ZNR - BARRICADE 3
オブスキュアを代表する永遠の名盤が20年以上振りのヴァイナル・リイシュー!!
6.Martin Denny / Exotica (CAPTAIN HIGH (EUU)) LP
ディズニーランドのカリブの海賊やトムソーヤ島で幼心をくすぐったあの感覚、僕は勝手に「ジャズ」だと思っていた(あながち間違っていないと思う)。その時感じた、望遠鏡で今まで知らなかった対岸の様子を覗いたときみたいな感動の正体がたぶんエキゾチカだったのかな。(菅原)
MARTIN DENNY - EXOTICA
エキゾの父、Martin Dennyによる'57年リリース1st.アルバムがリイシュー!!
7.Radiohead / The Bends (URC) LP
自分が育った埋め立て地のコンクリート感や、やや退廃していた大学近くの風景によく合うアルバム。この感覚は結構根付いている。(藤村)
RADIOHEAD - THE BENDS (180G)
'95年リリースの大傑作2nd.アルバムが重量盤で再発!!
8.The Stone Roses / S.T. (SILVERTONE) LP
辛い事があったときになぜか聞きたくなるアルバム。不思議な安らぎがある。(藤村)
STONE ROSES - S.T.
リリース20周年記念★永遠の名作が限定スペシャル仕様でアナログ再発!!
9.Miles Davis / Live Around The World (SILVERTONE) LP
音楽をやろうと思ったきっかけ。色々分からなくなった時いつもこれに帰ってくる。(大塚)
MILES DAVIS - LIVE AROUND THE WORLD
'96年にリリースされた最晩年のライヴ・アルバムがデッドストック入荷。
10.Michael Jackson / History (EPIC) CD
とりあえずベスト盤だけど。マイケルは音楽を好きになったきっかけ。(大塚)
『はしけ』の制作に影響を与えた・よく聴いていた作品
1.Vampire Weekend / Vampire Weekend (XL) LP
これだ!って思った。(夏目)
VAMPIRE WEEKEND - S.T.
マキシマム・マスター・ピースの超名作ファースト!!
2.曽我部恵一BAND / LIVE (ROSE) LP
東京芸大の学祭で曽我部恵一BANDをみてバンドやろうって決めた。(夏目)
曽我部恵一BAND - LIVE
デッドストック再入荷!!かっこよくて死にそうです・・・。
3.Animal Collective / Merriweather Post Pavilion (DOMINO) LP
これがブルックリンか!っていう衝撃が来た。(夏目)
ANIMAL COLLECTIVE - MERRIWEATHER POST PAVILLION
21世紀最高のマジカル・サイケデリック・ポップ・ワールド!!!US/DOMINO盤重量盤アナログです!!!
4.Juana Molina / Son (DOMINO) 2LP
自然な音の使い方がアルゼンチンのアーティストで一番好きでした。ライブも何度か観た。(菅原)
JUANA MOLINA - SON
小鳥と共に天空を歌い、メロディーは雲を踏む!過去最高傑作がここに完成です!!!
5.HOSE / S.T. (UNKNOWNMIX / HEADZ) CD
ヘッズ関連のイベントによく顔を出していました。待ち望んでいたリリースで、発売日に買ったと思う。(菅原)
6.YTAMO / Limited Leaf (SCILLI DISQUES) CD
誠実でキュートな作品。ジャケも最高。(菅原)
YTAMO - LIMITED LEAF
★'06年度ベスト★JETSET特典CD-R(ホアン海とウリチパン郡の未発表曲全5曲入り)付!!
7.ゆらゆら帝国 / 空洞です (SONY MUSIC ASSOCIATED) 2LP
個人的にはこのアルバムのフィーリングに影響を受けているつもりでした。(藤村)
8.Yo la Tengo / I Am Not Afraid of You and I will Beat Your Ass (MATADOR) 2LP
サイケな1曲目から始まるバラエティに富んだ内容のアルバムで、この当時良く聞いていました。(藤村))
YO LA TENGO - I AM NOT AFRAID OF YOU AND I WILL BEAT YOUR ASS (REISSUE)
2006年リリースの通算11枚目となるスタジオ・アルバム!!
9.John Scofield / uberjam (VERVE) CD
ミックスの時にエンジニアの啓士郎さんとこれを聴いて盛り上がった思い出。(大塚)
10.Bob james / one (MUSIC ON VINYL) LP
多分これ聴いてた、たぶん。「りんごのうた」とかに活かされてると思う、多分。(大塚)
BOB JAMES - ONE (180G)
絶好のサンプル・ソースとしても愛されるクラシック"Nautilus"収録!!
[プロフィール]
メンバー全員が高校三年生時に浦安にて結成。 2009年のデビュー以降、常に挑戦的に音楽性を変えながらも、あくまで日本語によるオルタナティブロックの探求とインディペンデントなバンド運営を主軸において活動してきたギターポップバンド。サウンドはリアルでグルーヴィー。ブルーなメロディと日常を切り取った詞世界が特徴。 2016年からは3年在籍したP-VINEを離れて自主レーベルTETRA RECORDSを設立。より積極的なリリースとアジア圏に及ぶツアーを敢行、活動の場を広げる。
代表作にアルバム『AFTER HOURS』『Friends Again』、EP『TAKE CARE』『君の町にも雨は降るのかい?』など。最新作はシングル「カリフラワー」。
2018年、FUJI ROCK FESTIVAL ’18に出演。 2018年11月21日、5枚目となるフルアルバム『Virgin Graffiti』発売。
[Tour “Virgin Graffiti”]
4月5日(金)会場:enn 2nd(宮城)
4月6日(土) 会場:CLUB RIVERST(新潟)
4月7日(日)会場:GOLD CREEK(金沢)
4月18日(木)会場:CLUB QUATTRO(名古屋)
4月21日(日)会場:渋谷 TSUTAYA O-EAST(東京)
5月24日(金)会場:output(沖縄)
[予約受付中]
シャムキャッツ - はしけ
2009年にリリースされたファースト・アルバム『はしけ』が待望のアナログ化!
[関連作品]
シャムキャッツ - VIRGIN GRAFFITI
円熟と遊び心が同居するエヴァー・グリーンなソフト・サイケ~インディ・ロック大傑作!!
シャムキャッツ - カリフラワー
ギターポップの魔法が詰まった最新シングルがアナログ化!
シャムキャッツ - このままがいいね
話題沸騰の名曲「このままがいいね」の限定7インチ・エディション!!
シャムキャッツ - AFTER HOURS
胸くすぐる音楽的語法と眩い日常感覚がたっぷりつまった大名盤!!
シャムキャッツ - FRIENDS AGAIN
最高の11曲がいい順番で並んでるそれが深く胸を打つメロウ・ソフト・ロック★
シャムキャッツ - MODELS
遂に7インチ出ました★2014年のスーパー・アンセム決定的名曲!!
シャムキャッツ - たからじま
2012年もっとも甘酸っぱく輝く4人組、シャムキャッツ。遂にフル・アルバムです!
シャムキャッツ - VIRGIN GRAFFITI
2018年11月リリースの最新5th.アルバムがアナログ化!!