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アーティスト: | ZOE,GIMMIE,ANJI |
タイトル: | オリジナルど底辺のカス |
レーベル: | KLOVAL (JPN) |
フォーマット: | CD |
発売日: | - |
初回入荷日: | 2022-07-06 |
最新入荷日: | - |
価格: | ¥1,500 |
CatNo.: | KLOVAL67 |
問い合わせ番号: | 4120-0607-3299 |
カテゴリ: | |
タグ: | - |
購入可能店舗: |
ラッパーのzoeとGIMMIE、そしてエンジニアのanjiによる14曲入りミックステープ!!
東京都町田市を拠点とするヒップホップ・レーベル、Kloval Recordsからの最新作は、あらゆるヒップホップ好き、あらゆる日本語ラップ好きに聴いてほしい強烈な1枚。
Artist Comment
All Songs Mixed by 寺岡アンジ
All Songs Mastered by 寺岡アンジ
All Songs Recorded by 寺岡アンジ
Art Work by レノ
東京都町田市を拠点とするヒップホップレーベル、KLOVAL RECORDSからの最新作は、ラッパーのzoeとGIMMIE、そしてエンジニアのanjiによる14曲入りミックステープだ。90年代ヒップホップのサンプリングサウンド上で2人のラッパーがスピットするという、形式的には極めてシンプルな作品なのだが、注目すべき点は多い。
作品を聴いて真っ先に耳を奪われるのは、主役の一人であるzoeのラップだろう。zoeといえば、サイフォンコード〜SMRYTRPS (Samurai Troops)時代からリズミカルなフロウが常に持ち味だったが、当時から20年以上を経てリリースした本作でも、その切れ味は一切衰えていない。むしろリリックの鋭さには更に磨きがかかっており、彼のキャリアはまだまだピークを迎えていないことを証明している。例えば4曲目「リノが着てた」での彼のバース。自身がヒップホップと出会いラップを始めた頃を振り返る楽曲は日本語ラップにおいて星の数ほどあるが、当時の衝動がこれほどまでに生々しく伝わってくるラップを今まで聴いたことがなかった。あるいは7曲目「one day」で綴られる辛辣な物言いは、痛快であると同時に、ぬるま湯に浸かっている今の自分に対して説教を食らわされている気分にもなる。また、この曲のバース後半に独特のリズミカルなフロウで畳み掛けてくる様は、Dev Largeを彷彿とさせる迫力がある。間違いなく本作のハイライトのひとつだろう。
そしてzoeのリリックの鋭さは、zoe自身にも容赦なく襲いかかってくる。自らのメンタルが抱える問題を曝け出すなど、全編を通じて内省的な歌詞が多い。内省的な歌詞やテーマという意味では、国内外の現行のヒップホップにも通じる部分もあるが、それをメランコリックに歌うのではなく、あくまでもオーセンティックなビートとラップで表現するところが、この作品の特徴と言えるだろう。90年代ヒップホップならではの骨太な質感と、リリックから感じ取れる繊細さや弱さ。両者は一見相反する要素にも思えるが、繊細な心の持ち主であるがゆえに、日々を生き抜くうえでヒップホップやラップが、それもとりわけマッチョな性格の強い90年代のヒップホップやラップが必要だったのではないか。そのように考えると、先に挙げた「リノが着てた」における「俺はラップをしてみたいだけさ」という心の叫びにも似たzoeのラップに胸が強く締め付けられる。
もう一人の主役であるGIMMIEも、zoeと負けず劣らずの魅力を備えたラッパーだ。ハイトーンでハスキーでアグレッシヴなzoeのラップとは対照的に、しっかりした中域の声質が持ち味のGIMMIEのラップは、作品全体に落ち着きと安定感をもたらしている。本作をじっくり聴き込んでいけば、スムースで温もりのあるGIMMIEのラップに誰もが虜になるはずだ。
どの楽曲のどのバースも聴き応えがあるが、とくに9曲目「天に誓って」では、GIMMIEの魅力が冒頭から味わえる。スキットのようなイントロの喋りからラップに至るまでの流れが実にスムースで、この時点で彼の秘めたポテンシャルの高さがじゅうぶんに伝わってくる。それに続く表現力に富んだバースも素晴らしい。まるで本当に酒が残っているかのように酩酊感のあるフロウで、それでいてラップとしてのかっこよさやタイトさがしっかりと備わっている。臨場感に満ちたリリックと相まって、千鳥足でふらつく彼の様子が目に浮かぶようだ。
GIMMIEのラップの特徴の一つとして、リズム感の良さが挙げられるだろう。5曲目「鬱になる」の後半で展開される三連符を多用した畳み掛けるようなフロウなど、随所でそのテクニックを楽しめる。もし、あらゆる特徴においてzoeとGIMMIEが対照的であったならば、作品の方向性がもっと散漫になっていたと思うが、二人ともリズムに重点を置いたラップをして、メロディの利用は必要最低限に留めるという共通項があるからこそ、全体がタイトな作品に仕上がったのだと思う。
冒頭で説明したとおり、本作はKLOVAL RECORDSからのリリースとなったが、リズムに重点を置いたラッパー同士のコンビネーションという意味ではSMOKIN’ IN THE BOYS ROOMを彷彿とさせるし、オーセンティックなサウンドのヒップホップという点ではZoologicalpeaKの作品を、また型破りという特徴に関してはMETEOR & CHIN-HURTZの作品を想起させる。レーベルの熱心なファンがこのミックステープを聴いたならば、本作はKLOVALから出るべくして出た作品だと納得するだろう。また、内省的なラップであったり、実験的な楽曲が多いという点など、現行のヒップホップの特徴と重なる部分も多い。12曲目「アバズレ」の後半部分は、2人が何かの手掛かりやきっかけを探るように言葉を発しており、楽曲を作るプロセスをそのまま公開しているようにも聴こえてくる。下手をすると単なる悪ふざけだと思われるリスクを百も承知の上で、自分達がかっこいいと思える作品やアーティストをしっかりとフックアップするレーベルの姿勢に敬意を表したい。
あらゆるヒップホップ好き、あらゆる日本語ラップ好きに聴いてほしい強烈な一枚だ。
(Text by DJ H!ROKi)