なかの綾 / はせはじむ : 白熱教室。 - 第一回 [2014-09-30]
はせ)さあ、綾さん始まりました!「白熱教室。」。
どっかで聞いたことあるタイトルですね。
綾)はせケル・サンデル先生ですね。
写真がなかなかいい味出してます(笑)。
はせ) お互い不本意ですね(笑)。
合成の雑さが、我々本来の美しさを損なっておるように思いますが、、、
それはそうとして、このコラムは「日本の曲」に焦点を当てて、毎回お題にそって抗議?厚誼?講義?を行うというものでございます。
不肖、私はせはじむが講師となり、なかの綾嬢を生徒に迎えて、音楽の泥沼の片隅をさらって行きたいと考えております。
読者諸賢におかれましては、読み飽きぬよう、画像と映像、ウンチク多めでお送り致します。
綾)文字だからゆっくり読めますしね~!
音楽業界のスキマに潜り込む私たちのように、重箱の隅をつつくような話ばかりが繰り広げられることと思いますが(笑)。
先生、よろしくお願いします!
はせ)はい、よろしくお願い致します。
では第一回目、『日本の曲が海外でネタとして使われているモノ』を集めて考察して行きます。
まずは定番からいきましょうか。
柳ジョージ「祭りばやしが聞こえる」を使ったコレ。
あ、当然シングル盤ね。
Gangrene (Alchemist & Oh No) / Papercuts
はせ)まあ、なんというか、柳ジョージを、Ramsey Lewis やJoe Thomas、Lonnie Liston Smithみたいな感じで受け取ったんでしょうね。
綾さん、今上げた人達、誰か知ってる?
綾)一人目は聞いたことあるような無いような。。
カタカナの名前は割と苦手です。
でもこの曲、こうして聞くと、私の勝手なイメージの柳ジョージさんとは思えない感じですね~。
はせ)そう、知らない事は知らない。
講義のしがいがあります(笑)。
上げたアーティストたち、時代によってスタイルは変わるけれど、ヒップホップ・ネタとしてよく使われるのは、フュージョン~クロスオーバー期ですかね。
で、このネタ使い、ファンキーなビートにクロスオーヴァーなメロって、日本人得意ですから。
ルパンなど70年代のサントラなんかも、ほとんどそうで。
でもなんというか、コレを使うって発想は普通かな。
たまたま日本の曲ってだけですね。
で、柳ジョージで綾が好きなのは「青い瞳のステラ」だっけ?
綾)はい!最初はBEGINのバージョンを聞いて好きになり、レイニー・ウッドに辿りついた感じです。
はせ)BEGINからってのがイイね。
ボクも大好きです。
で、「これ、ネタだしな」とかで「祭りばやしが聞こえる」をかけるDJより、「青い瞳のステラ」「酔って候」とかを良いタイミングで放り込んで泣かすDJに軍配上げますね。
じゃあここで一旦、みんなで泣いてみましょうか。
綾)news paper、テネシーワルツ、イカしたステップ、アメリカに憧れてかぶれてた頃に聞いて、キュンとしたんですよね~。
はせ)「芝生の下で眠ってないで」か、、、お亡くなりになった今聴くと、さらに切ないです。
ただね、これをガイジンが聴いても、普通に甘いロッカ・バラードにしか聞こえないだろうから、DJっぽく飛ばしてそうだよね。
この素晴らしい曲を「分かる」のは、我々日本人の特権です。
綾)うん、日本人で良かった。
はせ)さて、ヒップホップで言えば、コレも日本ネタ。
「男と女のラブゲーム」をサンプリング。
だんだん「なかの綾」に近づいてきましたね。
綾)近づいて、、、るんですかね?
はせ)はい。
で、この曲はオリジナルじゃなくこっちをサンプリングしたのかな?
「ヒロシ&みゆき/男と女のラブゲーム」
綾)カラオケの定番ですね。
はせ)カニエ傘下のラッパーFonzworth Bentley、たまにクラブでかけてハズすんですが(笑)。
YouTubeが無いのでニコニコ動画のリンクを貼っておきます。
はせ)自分で歌ってる音楽はともかく、実はメンタル的には「今時の女の子」な綾としては、どう?R&Bとジャパレゲをこよなく愛するなかの綾さん?
綾)確かフラミンゴで聞いたような気がします。
「ふーん。」って感じ。
はせ)フラミンゴでは一回もかけてないですけどね(笑)。
で、まあ、このサンプリングですが、必然性は無いよね(笑)。
トラック・メイキングもラップも、それほど秀逸とは言いがたい。
綾)昔、CMで使われてるのが気になって買ったJ-Fiveって人の"modern times"って曲が、それこそチャップリンの映画『モダン・タイムス』中の「ティティーナ」をサンプリングしてたんだけど、そのまんま過ぎて面白くなかったんですよね。
そういえばCMでもチャップリンの声の部分しか流れてなかったなって(笑)。
それでも知ってるフレーズっていうのは、やっぱり耳がいきますね。
はせ)J-Five、あったね。
エレクトロ・スウィングの走りですね。
で、この曲、日本人以外には誰に刺さるかって、刺さらないだろうな(笑)。
ムード歌謡好きのボクですら、イントロ聴いて「3年目の浮気だ!」って間違えましたから。
生まれ落ちたその時点で、珍盤としての宿命を背負った曲と言えるでしょう。
面白いけどね。
DJの皆さんは、一応押さえで12インチ持っておきましょう。
はせ)次!「ザ・ピーナッツ / 情熱の砂漠」を使ってます。
Ill Bill - The Anatomy Of A School Shooting
はせ)これは、ちゃんとレア・グルーヴ的な使い方してるよね。
ラップが今時なのが、ボクみたいなオールド・ファンからすると「?」だけど。
綾)今時かなぁ?ちょっと古い感じしますけどね~。
でも、サンプル、かっこいいですね~!
ザ・ピーナッツをサンプル・ネタとしてだけ聞くって、日本人には難しいじゃないですか。
元の印象が強くて。
で、これをもっと生音じゃなく電子音で埋めたらエミネムになりそう。
はせ)エミネムッてお前、、、アレだな(笑)。
ま、このころの歌謡曲はバックの音色がきちんと同時代の音だからね、レア・グルーブとして扱えるクオリティー。
洋楽と繋がってた70年代ですね。
ただ、当時も今も歌謡曲って、バランスとしてヴォーカルが異様にでかくて、その分リズム、特にパーカッションが極端に小さくミックスされてる事が多くて、それがストレスなんだけど、でも基本、ミュージシャンの皆さんは本当にカッコイイ演奏をしてらっしゃる。
ちなみに余談ですが、近田春夫&ハルヲフォンの「情熱の砂漠」カバーも素晴らしいんですよ。 アルバム「電撃的東京」必聴です。
はせ)綾、近田さんにはお世話になってるんだから、ここで一言。
綾)FRIDAY、毎月ライブし続けておかげさまで3年目です!ご紹介大変ありがとうございました!そろそろ遊びに来て下さいませ!
はせ)どんどん行きましょう。
これは数年前、一部で話題だったね。
「山下達郎 / DANCER」ネタで人気の曲。
Nicole Wray / Can't Get Out Of The Game
はせ)あまりご自分のサンプリング話やカバーの事には触れない山下達郎さんが、この曲に関してはインタビューでお答えになってたな。
そしてNicole Wray、肝心の曲のクオリティーは、、、
悪口多くてアレだけど、達郎の"DANCER"の方が断然カッコいいよね(笑)。
綾)なんとも言えないです先生!
なんとも言えないです先生!
なんとも言えないです先生!
はせ)この教室は自由に意見を戦わせる場です!取り上げておいてこういうことを言うのもなんですが、これまた「一応、持ってるよ」くらいの盤ですかね。
綾)でも、山下達郎さんのことを知らないであろう人がネタで使うって、当時の演奏技術やセンスが、いかに世界基準で凄いかってことですよね。
はせ)変わって。
次に紹介する曲のネタ、童謡「ふたあつ」って、何?綾、知ってる?
綾)は?ムネアツ?
はせ)、、、聴いてみましょうか。
はせ)ボクは子供の頃、こんな不気味な童謡を聴かされた覚えがありませんが。
でも今から紹介する曲はストレンジで良いですよ。
オールド・スクール・マニアなUKラッパーEdan。
ジャケットも変で良いですね。
「ごっつええ感じ」に出てくるようなロボット。
Edan/Sing It Shitface
はせ)ノリとしては、Wu-Tangの1stシングル"Wendy Rene"使い"After The Laughter Comes Tears"っぽい事をしようとしたのかな?と。
Wu-Tang Clan/After The Laughter Comes Tears
綾)「ねんねんころりよ~」がイントロに入ってた!
童謡一曲録るのに、オーケストラなんだな~。
豪華ですね~。
それにしてもEdan、寒気しますね(笑)。
クラブの暗闇で聞いてたらめちゃくちゃ落ちそう。
WU-Tangのは好き。
何が違うんだろう。 リズムが微妙に合ってないからかな?所謂”日本のリズム感”とか、独特の”間”みたいのが一切無視されてるからかなぁ?
はせ)というか、「キッチリ狂気を孕んでる」ような歌声だからじゃない?コード感もなんとなく「採光が悪い、古びた日本家屋」を彷彿とさせるし。
戦前の当時はこういうので情操教育がなされていた!スゴいですね。
はせ)さあ、佳境に入ってまいりました。
Edanに続き、こういうヴィンテージ音源系統だと、テクノではこれとか。
さっき綾があげてたJ-Fiveと違って、ベタなエレクトロ・スウィングにはならないで、ミニマルにまとめてる所がカッコイイ曲。
「フランク永井&松尾和子/東京ナイトクラブ」や「美空ひばり/お祭りマンボ」使い。
Nicone & Tazaka / Omikoshi
はせ)続編は「美空ひばり/チューチューマンボ」ネタでした。
それにしても、よくこんな曲見つけたな、、、SP盤以外でリリースしてるのかも分からない。
Nicone - Hanaetano (Umami Remix)
はせ)ここらへん、クラブでかけると、ガイジンにはやたら受けるんだよね。
綾)アメリカに遊びに行った時に、典型的な白人の友達の家のベッドルームで、灯籠を見つけた時のことを思い出しましたね。
日本のことが好きな外国人って多いけど、日本の文化が好き。
というタイプと、一つの要素としての”日本”が好きなタイプとに分かれるし、「I love Japan!!」って言ってる外国人のうちほとんどが後者だと思います。
よくネットで話題になってる、おかしな日本語の書かれたTシャツを着ているタイプね。
ま、日本人が着ている英語のTシャツも、彼らが絶句する物が多いから、お互い様ですけどね。
Niconeも、言葉の意味なんか、全然わからないから、
「泣いていた」の「た」が無くても平気なんですよね。 「泣いてい泣いてい泣いていた」英語になおすと、「I was cr cr cr cr cry」みたいな感じかな?と。
声に出して言うと、気持ちよくないですか?(笑)
音楽や映画において、日本人には想像もしないような感性で日本を表している物も、私は好きです。
意味を知っているからこそ楽しめるし、あべこべだからこそ面白い。
はせ)なるほど、、、
分かったような分からないような意見、ありがとうございます(笑)。
勝手に意訳すると、日本語の意味から離れて記号化したところにこれらの曲の魅力があると、それで良いですか?
綾)それで良いです(笑)。
はせ)こちらこそ良かったです。
まとめとしては、日本人のボクたちにとって「日本の曲」って、すぐそこにあるもの、それ以上でも以下でもないけれど、見方を変えると、素晴らしい音の宝庫だという事ですね。
綾)私達が気付かない魅力が、角度を変えると浮き上がってくるんだな~。
はせ)そうだね。
大事なのは、ノスタルジーもあるけれど、洋楽と同じ目線で歌謡曲を聴く姿勢ですかね。
昔は「日本語の曲」をかけるDJって少なかったけど、今はどんどん増えてるし、それが普通になってきた。
小西さんや八重樫さん、フミヤマウチさん、タツオさん、サトルさんにクボタ、MUROくん、石田さん、吉澤ダイナマイト、、、
GREATな先人DJに敬意を表しつつ。
あ、そうだ!
この文章を読んで下さってる、そんな気の利いたJET SETユーザーなミュージック・ラヴァーに是非聴いてもらいたいモノがあるんじゃなかったっけ?
綾)はい!
『わるいくせ』ってアルバムを9月3日に発売しました!
『AKIRA』の大友克洋さん描き下しのジャケットに、デュエットに横山剣さん、川上つよしとムードメイカーズの皆さん、バンバンバザールの皆さんに参加して頂いた楽曲と、メキメキかっこよくなる「なかの綾バンド」レコーディング・メンバー。
聞き所満載のアルバムになってます!クラブ・プレイもオッケーですよ。
はせ)当然、私めの完全プロデュース、品質保証済みの盤でございます。
皆さんに是非聴いてもらいたいですね。
と、上手く宣伝に誘導出来たところで。
最後に、たった今、ボクのカートに入っているドメスティック系アナログをご紹介してお別れを。
このコラムが載る頃には届いてるかな?
JINTANA & EMERALDS - DESTINY
アナログ盤出ました。横浜から現われた奇跡のネオ・ドゥワップ・バンド★超傑作ファースト・アルバム!!
小島麻由美 - 泡になった恋
ライヴ会場で先行販売されていた限定7インチ★遂に当店にも入荷しました!!
坂本慎太郎 - ナマで踊ろう
前作『幻とのつきあい方』から約2年半。坂本慎太郎のセカンド・アルバムが遂にアナログ盤でも登場です。
綾&はせ)では、また次回~。