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Dr.Looper / 2017-09-03
1
CLIFF CURRY - LET LOVE COME IN
世界中のソウル・ファンを魅了した未発表デモ音源をCannonballが完成させました!
近年ちらほら見かけるようになったイタリアのCannonball Records、調べてみたら実に興味深いレーベルでした。2016年からソウル、ファンクを中心にディールを開始。レーベルのコンセプトは「リールテープやアセテートのデモや、スタジオ・セッションといった未完成なレコーディングを掘り起こし、元のサウンドを尊重したアレンジを提供すること」だそうで。単なる再発ではなく、元曲を分析し修復を施すという頼もしさ。元曲を作ったアーティストが、もし現在ならどう作品化するかを想像してアレンジを施す、つまり音楽家のイタコ的なレーベル。そのサウンド・プロダクションの中心人物Alberto Zaniniが本盤で選んだのは、高校在学中にThe Notationsを結成した(!)Cliff Curryが、ギターとピアノ、ハンド・クラップだけで録音したデモ・テープ。パーカッションとビートが足されて、途中からはランニングベースが入ってくるという間違いない展開。一気にフロア栄えする曲に生まれ変わりました。Albertoはミラノから50kmほど東の、ヴィッラ・ペデルニャノという町に住んでいるようで。40年前にシカゴで録音されたデモ音源が、イタリア北部の田舎町で修復されて、いま目の前のターンテーブルで再生されている、という不思議。地球はどんどん小さくなっております。
2
FREEWAY - S.T.
カナダのソウル/フュージョン・バンドが残した超キラーなジャジー・ソウルが7"再発!!
1980年代後半から、レア・グルーヴ・ブームに代表される過去音源の再評価熱が高まり、当時はさして話題にもならずひっそりとリリースされていたような楽曲が、長い年月を経た後に改めて脚光を浴びるようになったのはご存知の通り。ご多分に漏れず本盤もそうしたレア・グルーヴの1枚ということになるのでしょうが、ユニークなことに過去に1度たりとも再発されていません。CD、アナログ問わず、です。つまり、現時点ではオリジナル・アルバムと本盤しか世の中に出ていないわけです。とにかく情報が少なく、カリフォルニアで結成されハリウッドでレコーディング、アルバムがカナダのCCM系レーベルNew Born Recordsから出た、ということ以外はほとんど何も分かっていないのですが、とにかく今の季節にぴったりな曲ではあります。ヴィブラフォンのクールネスと、清涼感あふれる女性ヴォーカルの高揚感と言ったら。シンセ・ドラムに時代を感じますが、それもご愛嬌。Freewayを日本で最初に広く知らしめたのは、(おそらく)須永辰緒さん。2015年には「圧倒的にタイトル曲(※今回7インチ化された曲)がいい。フロア・キラーでどかどか湧かせてます」と評されています。さすがレコード番長。先日JET SET下北沢店の前でばったりお会いした折、辰緒さんは当方の愛犬をずいぶん可愛がってくれました。その節はありがとうございました。そして、どうぞお大事に。
3
THELMA HOUSTON - SUMMER NIGHTS
Motownの女性シンガーThelma Houstonの未発表音源が人気レーベルより!
1966年にシングル"Baby Mine"でデビューした彼女は、The Fifth Dimensionのマネージャーにスカウトされた事からも想像がつくように、ソウルというよりはポップス寄りのシンガーだったと言えるでしょう。1943年生まれなので、年齢的に実はDiana Rossより1つ歳上だったりします。初期はヒット曲には恵まれませんでしたが、1976年にHarold Melvin & the Blue Notesのカヴァー"Don't Leave Me This Way"が全米No.1(しかもBillboard HOT100で)の大ヒット。以降はコンスタントにアルバムをリリースし、その中でも『Ride to the Rainbow』は特に高く再評価されており、自分の愛聴盤でもあります。そんな彼女の1980年(時期的にバッチリ)の未発表曲集が、突如としてノルウェーのPreservationから登場(Mirageの未発表曲7インチも最高でした)。世の中には「聴きたくなかった未発表曲」と「もっと早く聴きたかった未発表曲」の2種類がありますが、こちらは明らかに後者。ブルーアイド・ソウル・バンドBamaの名曲カヴァー"Summer Nights"を筆頭に「何でこれがお蔵入りしたのだろう?」としか思えない珠玉曲の数々。さっそくアナログ、CD両方買った次第。ちなみにCDはジャパン・オンリーらしいですよ。
4
SWEET MAYA - S.T.
『Rare Groove A to Z』にも記載された激レアなプライヴェート盤がリイシュー!!
Luv N' Haightといえば、Mighty Ryeders"Help Us Spread the Message"(元々オリジナル盤は極少数であるうえに、よりによって通常盤は肝心の"Evil Vibrations"にプレスミスがあるため、世界中のディガー達は血眼になってプロモ盤を探しています)を筆頭に、1990年代から良質な再発をコンスタントに続けているレーベル。元はといえばサン・フランシスコの名レコード店、Groove Marchant(ニューヨークの同名ジャズ・レーベルとは無関係)から発祥したレーベル。そのLuv N' Haightから、こちらもオリジナル盤が相当レアであることが知られているSweet Maya唯一のアルバムが、この度めでたくアナログ・リイシュー。1977年にリリースされた今作ですが、デトロイトとシカゴのちょうど中間にある、アメリカ中西部カラマズーで録音されたそう。白人黒人混合バンドらしく、曲ごとにソフトロック、ジャズ、ソウルがキラキラと見え隠れする、まるで万華鏡のようなアルバム。オリジナル盤には未収録の"Angisa Alusa (Live)"を聴くと、イメージ以上にジャズ寄りのグループだったことがよく分かります。テクニックも充分。フランスのCortexを思い出しました。
5
HEATH BROTHERS - MARCHIN' ON
Nas"One Love"でサンプリングされた超ドープなジャズ・ファンクを収録!!
The Heath Brothersが、Jimmy(テナー・サックス)、Percy(ベース)、Albert(ドラムス)のHeath三兄弟と、Stanley Cowell(ピアノ)との4人で結成された、フィラデルフィアのジャズ・グループであることや、そのJimmyの息子があのJames Mtumeであることなどはさておき、ここで書きたいのはカリンバ(親指ピアノ)という楽器のお話。両手にすっぽり入る木製胴に10本ほど並んだ鉄や竹の棒を親指で弾くアフリカの楽器で、スティールパンにも通じる柔らかく優しい音を奏でます。レア・グルーヴ目線でカリンバ奏者として外せないミュージシャンは2人。まずは『Open Our Eyes』(1974年)などで早くからカリンバを使用し、Kalimba Productionという直球な名前の集団を率いたMaurice White。そしてもう1人が、本盤にも参加のStanley Cowell。The Pharcydeが"On the DL"(1992年)において、彼の"Travelin' Man"(本盤と同じStrata-East Records作品)を使ったり、Q-TipがNas"One Love"(1994年)で本盤収録の"Smilin' Billy Suite Pt II"を使ったりしております。獄中の友人に宛てた手紙がコンセプトの"One Love"を聴くと、アフリカ系アメリカ人の嘆きと、アフリカ起源の楽器との組み合わせに驚かされます。ここにも必然のある偶然が。
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