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Dr.Looper / 2017-11-04
1
JAMES MASON - FUNNY GIRL / DREAMS
レアグルーヴ超名盤『Rhythm of Life』収録の絶品メロウ・グルーヴ2曲を収録!
1954年にニューヨークで生まれたJames Masonは早熟なミュージシャンで、16歳の若さでPucho & the Latin Soul Brothersのギタリストのポジションを掴み、20歳前後でTarika Blue(川崎燎とツイン・ギター!)~Roy Ayers Ubiquityという華麗な遍歴を重ね、23歳の時にわずか2000ドルのみで作り上げたのが『Rhythm of Life』(1977年)でした。キーボードのレンタル費が高すぎて払えず、川崎燎のレコーディング用に借りられたシンセサイザーを使ってこっそり深夜にレコーディングした、という逸話も。しかし70年代後半の音楽シーンはダンス・ミュージック・ブームへ向かい、この『Rhythm Of Life』のような、ジャズ界ではファンキー過ぎる、R&B界にしてみればジャジー過ぎる「狭間の音楽」だったこともあり、全く評価されることなくセールスは失敗。その後James Masonはスタジオ・エンジニアとして裏方に回ったのでした。しかし発売から十数年後、UK発のレア・グルーヴ・ムーヴメントで一躍再評価され(特に"Slick City"の人気が高かったそう)以降、なんと5度もLPで再発され、今やアルバム自体の評価も名盤と言われるまでに成長したわけです。いや、音源そのものは全く変わっていない訳だから、成長したのは受け手であるリスナーの方なのかもしれません。そんな中、第1弾の7インチ2枚組の方には収録されなかった、ブレイク入りの"Funny Girl"が待望の7インチ化。ぜひぜひ。
2
PURE PLEASURE - BY MY SIDE
Jazzmanによるレア・ソウル再発專門レーベルSoul 7から、最高のモダン・ソウル!
デトロイトで結成されたThe Soulful Sonics。1970年代半ばにPure Pleasureへと改名、1980年にたった1枚の7インチを出した後に解散。オリジナル盤は中古相場では200ドルを超える高額盤ですが、このたびJazzman傘下Soul7レーベルからめでたく再発されました。自分は当然リアルタイムで聴いているはずもなく、本曲を初めて聴いたのは、UKの老舗再発レーベルGoldmineから出たコンピレーション『The Essential Mellow Groove』に耳を通したときでした。本曲以外にも、知る由もなかった過去のマイナー佳曲がたくさん入っていて、当時は宝の山のように感じたものでしたが、実はこのコンピレーションは1992年に出たもの。つまりたかだか12年前の曲、2017年に2005年のマイナー曲を収録したようなものであることを冷静に考えると、なんだか不思議な気分になります。ともあれ、当時の自分は嬉々としてそこからの何曲かをサンプリングした記憶が。それから4、5年経ったでしょうか。SP1200とS900とMC50を入手したMummy-Dがそれらを駆使し、次々と神がかったトラックを作り始めた頃、当方がネタ用に何枚かLPやCDをお借したことがあって、しばらくしてから耳にしたのがMellow Yellowの"V.S.O.P Pt.2"だった、という話。Dさん、これを読んでたら、いつかあのコンピ返してくださいな。
3
ゴールデン・カップス脱退後に20歳でバークリー音楽院に留学、という異色の経歴を持つミッキー吉野が書く曲には、わりと難解な曲が多い。1960年代後半UKで生まれたプログレッシブ・ロックは、彼が過ごした1970年代初頭のボストンでも大きな潮流として受け止められたのだろう。自身の卓越した演奏スキルに呼応するかのように書き出される難解な曲は、やはりプログレッシブ・ロックからの多大なる影響を感じさせてくれる。なんたって「モンキーマジック」のイントロは11拍子なのだ。そういった意味でも難解な曲を書くミッキー吉野が、Beatlesフォロワーらしさ全開の綺麗なメロディを書く武川行秀と組んだことは、大正解だったように思う。ゴダイゴの音楽には、難解さと分かりやすさが絶妙に混在している。本盤は「ガンダーラ」大ヒットの2年前のテレビドラマ『男たちの旅路』劇伴で、クレジットの方はミッキー吉野名義となっているが、事実上はゴダイゴの楽曲。ちなみにNHKは劇伴に局内スタジオを使う規約があり、実はオリジナルはモノーラルだったので、本作はテレビ・スコアを元にステレオ・ヴァージョンで録音し直されたもの。そういえば以前Jamiroquaiが来日した際、急病で来られなくなったキーボーディストのトラとして、ミッキー吉野を指名したことがあった。夏目雅子や堺正章が出演していた『西遊記』はイギリスBBCでも放送されていて、それを観ていたJamiroquaiがミッキー吉野の名前を知っていたのだろう。結局そのときは実現はしなかったが、Jamiroquaiのライブで彼がRolandのキーボードを弾く姿を見てみたかった。そういえば、本盤はどことなくKPMのライブラリー作品にも通じるところがある。ミッキー吉野は実はイギリス人だったのかもしれない。
4
早瀬優香子 - ポリエステルと夜
早瀬優香子の傑作サード・アルバム『ポリエステル』('87)からの7インチ・カット!
リアル・フィッシュの「ジャンクビート東京」(1987年)といえば、日本語ラップ黎明期のクラシック。初めてラップを披露し、曲の出来をいたく気に入った桑田佳祐は、同曲をプロデュースした戸田誠司に何とサザン・オールスターズのプロデュースを依頼したのだが、なんとなんと戸田誠司はそのオファーを断ってしまった、というエピソードがある。その逸話からも只者ではないと分かる戸田誠司が、かつてリーダーを務めたShi-Shonen(ちなみにShi-Shonenに矢口博康が加わるとリアル・フィッシュになる)は、日本コロンビアからデビュー後ノン・スタンダードへ移籍、紆余曲折の末に1986年頃には戸田誠司と福原まりの2人だけのユニットになってしまう。そこに心機一転、塚田嗣人、YOU(江原有希子)が加わり再び4人組となるのだが、ノン・スタンダードの衰退もあり残念ながら作品は残っていない。この頃の楽曲「おまかせピタゴラス」は、後にフェアチャイルド(戸田誠司、YOU、川口浩和)のデビュー曲として再レコーディングされたのだった。話が長くなって恐縮だが、作品が残っていない最後期のShi-Shonenがバッキングを務めたアルバムこそが、早瀬優香子『ポリエステル』(1987年)なのだ。ほぼ全曲が戸田誠司編曲。Shi-Shonenの最期の作品とも言えるこのアルバムの発売から30年が経ち、こうして7インチがリリースされるのは実に感慨深い。願わくは早瀬優香子と同じくシックスティ所属だった戸川京子の『動物園の鰐』が7インチ化されたら。もう他に何も思い残すことはない。
5
こちらで6月にご紹介した、『和音 COVERED BY MURO』からの第1弾シングルがこちら。"Feel It"と同様に激しい争奪戦となりそうですが、貴方が運良く入手されることを願っております。さて。Pushimのことは皆さんよくご存知でしょうから、ここではオリジナルを歌った大上留利子について書かせていただこうかと。1970年代前半にAretha Franklinから影響を受け、ソウル・シンガーを志した彼女。実はベーカーズ・ショップの桑名晴子の前任のヴォーカリストだったりします。そんな大上留利子は、かの五輪真弓と同じ1951年生まれ。中島みゆきが1952年、吉田美奈子や大貫妙子が1953年、松任谷由実が1954年生まれと並べてみると、なんとなく分かって頂けるでしょうか。そう、彼女は「シンガー・ソング・ライター」や「ニュー・ミュージック」世代の女性シンガー達と、ほぼ同年代なのです。当時、Carole Kingのような内省的な楽曲がもてはやされた中にあって、大上留利子のような「男勝りの強い女性」を描いた極めてファンキーな楽曲が、これまでなかなか正当な評価を受けてこなかった、というのはなんとも残念ですし、ご本人の気持ちも複雑だったことでしょう。でもこうして40年の時を越えて("Sexy Woman"収録アルバム『Typhoon Lady』は1977年の10月発売)評価されるのは、やはり素晴らしいことだと思います。もちろんMuro君の彗眼による部分も大きいですけど。イイものはイイ、ですね。やっぱり。
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