Dr.Looper / 2018-04-05

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L'ENFANT SAMBA

CORTEX - L'ENFANT SAMBA

Madlibも魅了された名盤に収録されている超人気ブラジリアン・ナンバーが7"で再発!!

7" |  ¥2,100 |  TRAD VIBE (FRA)  |  2022-07-28 [再]  | 
自分の頭の中で、フランスのCortexはベルギーのPlaceboと同じカテゴリーに分類されています。どちらのグループも少数編成で、音数は少ないものの超絶なテクニックで、洗練されてて、そしてどこか憂いのある、いかにもヨーロッパ的なジャズ・ファンクを聴かせてくれます。もちろんどちらも最高。Cortexはこれまでも"8 Octobre 1971"が7インチ化されていましたが、今回は"L'Enfant Samba"が嬉しいジャケット付きで7インチ・シングルに。こちらも極上のブラジリアン・グルーヴですね。この調子でぜひアルバム全曲の7インチ化を期待したいものです。そもそも自分がCortexのファースト・アルバム『Troupeau Bleu』を初めて聴いたのは、20世紀の世紀末の頃。一発で打ちのめされて、それ以来いつかはオリジナルLP盤を入手したいと思いながらも、高値(昔は1万円台で購入できましたが・・・)に腰が引けてしまい、あれよあれよという間に高騰して、今ではとても手が出せない金額になってしまいました。こうなると相場が落ち着くのを待つしかありませんが、こんな7インチが出てしまっては、逆にまだまだ時間がかかりそう。しばらく再発盤で我慢するしかないようです。Alain MionとAlain Gandolfiという2人のアランが作り出す極上のサウンドを、貴方もぜひ。
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TAKE ME TO THE MARDI GRAS / SANDWORMS

BOB JAMES / DAVID MATTHEWS - TAKE ME TO THE MARDI GRAS / SANDWORMS

Breaks & Beats第5弾はあのジャズ・ファンク定番大ネタをエディット!!

7" |  ¥2,000 |  BREAKS & BEATS (UK)  |  2022-05-09 [再]  | 
精力的にリリースを続ける英レーベルBreaks & Beatsの第5弾は、なんと『Ultimate Breaks Beats(以下UBB)』に収録されていない曲(!)。というか、今回ちゃんと調べたらBob James名義の曲は1曲も『UBB』に入ってないんですね。CTI、KUDU関係曲はStanley Turrentine And Milt Jacksonの"Sister Sanctified"と、Grover Washington Jr.の"Mister Magic"の2曲のみ、というのも不思議な話。さて、本盤A面"Take Me to the Mardi Gras"は、ご存知Run-DMC"Peter Piper"ネタで、そもそも実はPaul Simonのカヴァー曲だということや、オリジナル7インチはイタリア盤オンリーで、2015年に一応再発されたけど音圧面が残念だったことや、Bob James本人も存在を知らなかったオリジナル12インチは世界に2枚しかなく、うち1枚はBiz Markieが所有している、など、名曲ならではの逸話が数多くありますが、それはさておき個人的に嬉しかったのはB面に"Sandworms"がカップリングされていたこと、です。James Brownバンドのバンマスを務めたDavid Matthewsが、スタジオ・ミュージシャンを使って作り上げた壮大なファンク。特に、Gary Kingの弾く蛇のように動き回るベースの凄さたるや。Gary Kingといえばあの"Mister Magic"のベースのフレーズも印象的でしたし、Eugene McDanielsの傑作アルバム『Headless Heroes of the Apocalypse』(1971年)でのヒリヒリするような演奏や、Hubert Laws"Guatemala Connection"での仕事ぶりも素晴らしかったですが、やはり本曲が最高。そしてつまりは、大野雄二氏にも影響を与えている。はずです。
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GET OUT OF MY LIFE WOMAN

V.A. - GET OUT OF MY LIFE WOMAN

ブレイクもおなじみのクラシック"Get Out of My~"を4ヴァージョン収録!!

7" |  ¥1,650 |  OLDAYS (JPN)  |  2021-09-09 [再]  | 
先日'Pretty' Purdieの"Soul Drums"を日本盤仕様のジャケット付きで7インチ再発したOldays Recordsから、実に興味深い7インチが登場。なんと"Get Out of My Life Woman"ばかりが4ヴァージョン収録されています。バイブル『Ultimate Breaks & Beats』シリーズには、Solomon Burkeのヴァージョンが23番(通称「ボックスアフロミキサー」)に収録されていることでお馴染みですが、この"Get Out of My Life Woman"、Lee Dorseyのヴァージョンの商業的成功(1965年)を皮切りに、国籍やジャンルを跨いで数多くのカヴァーが存在しており(原田芳雄によるカヴァーも!)、いずれもヴァージョンもかなりの高確率で頭にドラム・ブレイクが入っているため、特にヒップホップのトラックメイカー的には「絶対に外せない1曲」として長らく愛されてきました。確かBuckwildは古今東西に点在する"Get Out of My Life Woman"カヴァーのコレクター、ということを公言していたはず。かくいう自分も、7インチでこの曲をを見つけ次第、冒頭にブレイクあろうが無かろうが必ず買ってしまいます。その中でも、個人的には作曲者であるAllen Toussaintのヴァージョン(1968年)が今のところ一番好きだったりしますが、本盤B面の初7インチ化となるThe John Schroeder Orchestra(1966年)とQ65(1966年)の2ヴァージョンの収録も喜ばしい限り。万歳!もし万が一第2弾があるのなら、是非The New Apocalypseのヴァージョンも収録して頂きたいのですが・・・。
4
TAKE IT PERSONAL / DWYCK

GANG STARR - TAKE IT PERSONAL / DWYCK

【Record Store Day限定盤】92年のシングルが世界初7"化!!

7" |  ¥2,090 |  UNIVERSAL MUSIC (JPN)  |  2018-04-27 [再]  | 
勿論どのアルバムも文句のつけようのない素晴らしい傑作なのですが、個人的には『Step In The Arena』(1990年)や『Hard To Earn』(1993年)よりも、『Daily Operation』(1992年)を聴いた回数が一番多い気がします。ATCQのサードとともに、何度聴いたか分からないほどの愛聴盤。ただ、惜しむらくは音圧で、18トラックを1枚に収録したLPといい、今よりダイナミックレンジが広かったCDといい、どちらも物足りなく感じていました。音質ではなくあくまでも音圧の話ですが、やっぱり音圧が低いヒップホップのレコードには、当時から相当なフラストレーションを抱いていたものでした。その名作アルバムからの12インチ・シングル・カット曲だった"Take It Personal"が、(おそらく)音圧もバッチリな7インチ仕様でリリースされる喜びといったら。オリジナル12インチ通りのアートワークと、B面にちゃんと"DWYCK"が収録されているカップリングの安心設計も嬉しいですね。そういえばRhymesterの"The God the Mad"という曲で、"DWYCK"内のGreg Niceのバースで出てくる「M.A.D.」という声ネタを使ったのを今ふと思い出しました。それにしても、結局DJ Premierのトラックに最も相性が良かったのはGuruの声だったんだなあ、とつくづく実感させられます。もう彼による、あの地を這うような渋い声のラップを聴くことが出来ないのかと思うと余りにも寂しい。彼が48歳で亡くなってから今年で8年、気づけばGuruより自分の方が長生きしている現実に、どうしても複雑な気持ちになってしまいます。自分はいったい何を残せるのだろう。
5
THE CHAMP

MOHAWKS - THE CHAMP

【Record Store Day限定盤】ヒップホップ・ネタでお馴染みファンク・クラシック!!

7" |  ¥1,750 |  MUSIC ON VINYL (HOL)  |  2018-04-27 [再]  | 
最後に今月も『UBB』関連盤をご紹介。James Brownの"Funky Drummer"や、The Soul Searchersの"Ashley's Roachclip"などと一緒に、UBB12番(通称「ガイコツ」)にも収録されたこの曲は、1968年リリースという何気にかなり古い時期の曲だったりします。そして何より、実はUSではなくUKのグループだった、というのもユニークなところ。最高のジャケット・デザインのアルバムを1枚出したきりのThe Mohawksの実体ですが、単なるファンク・バンドではなく、60年代から英国のTV映画劇伴を多く手がけて、『KPM』シリーズにも多くの音源を提供したAlan Hawkshawが、彼の元に集めたセッション・ミュージシャンたちであることが分かっています。本曲の下敷きになったのは、前年の1967年にアメリカでヒットしたLowell Fulsonの"Tramp"(UBB24番、通称「拳」に収録)でした。ですので、この曲は実は"Champ"よりも"Tramp"と唄われている箇所の方が多かったりします。さて、ハモンド・オルガンのフレーズが印象的なこの曲は、これまで実に650曲にサンプリングされているようですが(Whosampled調べ)、個人的に衝撃を受けたのは、Guyの"Groove Me"(1988年)の使い方でした。オリジナルピッチで前半1小節、1音下げて後半1小節という使い方には大いに唸らされました。さすがはTeddy Riley。そして、今までにも様々なアートワークの仕様で7インチ化された本曲が、今だに7インチ化され続けているというのも感慨深いものがあります(おそらく通算で10種類ぐらいあると思います)。なんたって、50年前の曲ですからね。

Dr.Looper

Profile

1979年よりレコードを買い始め、その魅力に取り憑かれたまま今に至る。1990年から1998年までRHYMESTERに参加。現在はROCK-Tee(ex.East End)とL-R STEREOとして活動中。

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