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Dr.Looper / 2018-07-02
1
JOE FARRELL / THE ARTIFACTS - UPON THIS ROCK (MR. FANTASTIC EDIT) / WHASSUP NOW MUTHAFUCKA
超定番ブレイク、サックス奏者Joe Farrellによる"Upon This Rock"!!
近年中古市場を賑わせている、英Originalsからの7インチ第37弾は実に渋い選曲でした。個人的にはA Tribe Called Quest"Verses from the Abstract"のドラム・ブレイクとして印象深い本曲、特徴がないので気付きにくいものの、確実な存在感と、そして何より音質(鳴り)が抜群なドラム・ブレイク入り。今回これを書くために調べてみて、実に多くのクラシック曲で使われていたことに、今さらながら気づいたのでした。The Beatnuts"Props Over Here"や、Chi-Ali"Age Ain't Nothin' but a #"とか。言われてみれば確かに使われている名ブレイク。叩いているのは白人ドラマーJim Madison(Jimmy Madison)で、19歳でLionel Hampton楽団に参加し、ニュー・ヨークを拠点に、Joe Farrell以外にもGrover Washington.JrやRon CarterなどのCTI、KUDU諸作にも参加、そちらのクレジットでよく見掛ける人物でもあります。実はEllen Mcilwaineの初期2枚のアルバムや、Peopleレーベル屈指のレア盤として知られる、The Grodeck Whipperjennyの同名アルバムにも参加していたり、さらにはJames Brown"Talkin' Loud And Sayin' Nothin' (Original Rock Version)"や、Fred Wesley & The J.B.'s"Blow Your Head (Undubbed Version)"でも叩いていた、と書けば、俄然興味が沸いてくることだろうと思います。まあ、つまりはDavid Matthewsと親しかったということなのでしょう。B面は初7インチ化となる、Artifacts"Whassup Now Muthafucka?"が収録で、さらにボーナス・ビート入り。何はともあれ、こういう渋い再発は大歓迎です。2枚買わせていただきます。
2
AL GREEN - LOVE RITUAL
黒田大介氏が主宰する7インチ・シリーズ、今回はAl Greenのファンク・チューン!
先日、共通の友人の結婚パーティーで久しぶりにお会いしたのですが、2次会でDJをされた時にはスーツ姿が決まっていて。背が高く恰幅も良いからスーツが良く似合うなあ、これからスーツでDJをすれば良いのに、なんて感心しておりました。そんな黒Dこと黒田大介さんが主宰するレーベル、kickinからの7インチ第6弾となる本盤は、メンフィスのHi Recordsにスポットを当てたコンピレーション、『kickin presents Hi Tide Groove』からの一曲。1975年のアルバム『Al Green Is Love』のB面冒頭を飾る、疾走感溢れるアフロ・ビート(と言ってしまっていいんじゃないでしょうか)で、今聴いてもとても40年以上前の曲とは思えない新しさ、そしてこのミニマルさ。土臭い曲が多いサザン・ソウルの中でも、特異な土着感を持つ曲だと思います。さらに特筆すべきは、B面に収録された同曲の"Bwana Mix"で、1989年に発掘されたのち12インチ化されたものの、現在では中古市場での値段が高騰中。A/B面とも嬉しい初7インチ化となります。なんとも渋い、さすがの選曲。当然2枚買わせていただきました。皆さんも是非。そして黒田さん、次回作も期待しています。
3
HONEY DRIPPERS / YELLOW SUNSHINE - IMPEACH THE PRESIDENT / YELLOW SUNSHINE
ブレイク・クラシックのファンクをリエディットするBreaks & Beats第6弾!!
今月も『Ultimate Breaks Beats(以下UBB)』関連盤をご紹介。第5弾が『UBB』に収録されていなかったBob James"Take Me to the Mardi Gras"だったことに、ごくごく一部の人間がざわついた英Breaks & Beatsからの第6弾ですが、今回はちゃんと両面とも『UBB』収録曲だったことに、ほっと胸をなでおろしております。しかもA面は人類史上屈指の名ドラム・ブレイク入りナンバー"Impeach The President"で、そもそもはウォーターゲート事件に端を発したニクソン大統領弾劾の文脈で生まれたプロテスト・ソングです。特に今の状況では思想的、DJ的にも使う意義があるのでしょうが、やはり冒頭のドラムブレイクがあまりにも素晴らしく(究極的に書けば2小節進行のドラム・ブレイクの、7拍目の裏で入るオープン・ハイハットが秀逸だったわけですが)、実にこれまで747もの曲においてサンプリングされた(WhoSampled調べ)、音楽としてのヒップホップを象徴する一曲と言えるでしょう。もしこの曲がなければ、音楽としてのヒップホップの歴史が違うものになっていたと言っても、決して過言ではありません。オリジナルは2小節だったブレイクですが、『UBB』ではエディットされて5小節(しかも絶妙につっこみ気味でループされている気が)に、そして本盤では8小節にエディットされています。かたやB面のYellow Sunshineの同名曲も『UBB』収録曲で、The Jimmy Castor Bunch"It's Just Begun"などと一緒に18番(通称「三人娘」)に収録されています。オリジナルでは中盤に出てくるブレイクを、エディットして曲頭にもってくることで、DJとしては大変使いやすい仕様となっています。さすが、分かってらっしゃる。
4
JOHN ANDERSON - INNER CITY BLUES
Marvin Gayeのニュー・ソウル名曲"Inner City Blues"カヴァー!
恥ずかしい話ですが、自分が初めて"Inner City Blues"を聴いたのはMarvin Gayeのオリジナルではなく、Reuben Wilsonによるカヴァーでした。そう、A Tribe Called Quest(以下ATCQ)が"Youthful Expression"でサンプリングした方のヴァージョンです。Sonny Lesterが興したGroove Merchantの作品ですが、1960年代のミックスの定位(例えばドラムがモノで片チャンからしか聴こえない、とか)を70年代以降も採用してたこともあり、L/Rそれぞれから綺麗にフレーズを抜くことができる、サンプリングの金鉱脈として今も愛され続けているのですが、Blue Noteから同レーベルへ移籍したReuben Wilsonの、記念すべき一作目(1972年)のオープニングを飾ったのが、先述の"Inner City Blues"のカヴァーなのでした。初めてアルバムのLPに針を落とした瞬間ATCQネタのフレーズが飛び出し、思わず鳥肌が立ったことを今でも鮮明に覚えています。当時は元ネタのコピーライトのクレジットも無く、サンプリングのネタを見つけたディガー同士が口承で伝えるのみだった、というのも、インターネットが普及した今となっては懐かしい話です。さて。ソウル史上、いや音楽史上屈指の名盤『What's Going On』(1971年)のハイライトを飾る名曲"Inner City Blues"ですが、実はReuben Wilson以外にもGil Scott-HeronやPlacebo、Joe Cockerなど数多のミュージシャンによっカヴァーされているのですが、今回イタリアの旧譜音源再生工場Cannonball Recordsが掘り起こした本盤は、いずれの名カヴァーにも肩を並べる出来栄えでした。詳細不明(なんせJohn Andersonという名前のミュージシャンでさえ過去に50人以上いるので、どのJohnさんの仕事なのかさえも特定できないらしく・・・)なのですが、おそらく1970年の終わり頃の音源ではないかとのこと。ですので比較的早い時期のカヴァーということになります。B面にはオリジナル・デモ音源を収録。聴き比べると「音楽版カロッツェリア」ことCannonball Recordsの職人ぶりが堪能できると思います。最高。
5
LUI - OH,OH (THINK I’M FALLIN’ IN LOVE) / MY LOVER
ハワイアンA.O.R./フリーソウル人気曲が初の7"再発!!
ハワイのマウイ・サーフ・ホテルのラウンジでショウを観に来たお客さんに、旅の思い出作りとバンドのプロモーションとを兼ねて販売されていたであろう自主制作のLP盤(1978年)の存在を、日本で初めて紹介したのはおそらく橋下徹さんが監修の『Suburbia Suite;Evergreen Review』(2003年)だったはず。ページをめくるたびに目に飛び込んでくる、美しいジャケットにうっとりしつつも、その中でもひときわ目立つ藍色の海と、マウイ・サーフ・ホテル、そして右下に筆記体で「Lui」とだけ書かれたアルバムの写真を眺めつつ、その内容について思いを馳せていたのですが、2010年にはその橋下さんが主宰のレーベルApres-Midiから初CD化されたのでした。日本以外の国では今だにCD化されていないようなので、世界中の誰よりも日本人が愛聴しているハワイのグループ、ということになるかもしれません。KalapanaやMacky Feary Band(そういえばあのアルバムも1978年でした)にも匹敵するm決して観光客向けのお土産レベルにとどまらないハワイアン・コンテンポラリーの傑作から、"Oh, Oh (Think I'm Fallin' in Love)"と"My Lover"の特に素晴らしい2曲が世界初7インチ化。日本人であることを誇りに感じる再発です。
Dr.Looper Chart
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