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Dr.Looper / 2018-11-02
1
L.T.D. - LOVE TO THE WORLD (DJ KOCO EDIT)
メロウ・ディスコ・大ヒット曲がDJ KOCO氏のエディットを搭載し7"リリース!!
大学時代にソウルミュージック研究会に所属していた自分にとって、L.T.D.といえばやはり、新加入した元New BirthのLeslie Wilsonがパワフルに歌い上げた"Kickin' Back"(1981年)だったりするのですが、この歳になるとディスコ前夜時代の楽曲の方がしっくり来るというか、耳あたりが良い曲の方が好みになってきたのでした。本盤はリード・シンガー兼ドラマーのJeffrey Osborneがソロに転向する前の、L.T.D.にとって3枚目のアルバム(1976年)からのシングル・カット。プロデュースを担当したのは、前年(1975年)にDonald Byrdの『Places And Spaces』("Change"収録作)や、Johnny Hammondの『Gears』("Shifting Gears"収録作)を手掛け、翌年(1977年)にはGary Bartzの『Music Is My Sanctuary』や、The Rance Allen Groupの『Say My Friend』を制作、つまりは、この時期に後世に残る名盤を次々と量産していたMizelle兄弟。特にアルバム冒頭を飾るこちらは、多彩な楽器と奥行きのあるコーラスで壮大なスケールを感じさせる楽曲。個人的には吉田美奈子さんの"Town"とも雰囲気が似ていると常々思っているのですが、皆さんはいかがでしょう?B面はKocoちゃんのエディット入り。しかもジャケ付き。ぜひ2枚買わせて頂きます。
2
CLARENCE WHEELER & THE ENFORCERS - RIGHT ON
名コンピ『Jazz Juice』にも収録されたオルガン・ジャズ~ファンクがキラー・カット!!
テナー・サックス奏者Clarence Wheelerは1960年代から活動をスタート。バンドを率いてデビューを果たしたアルバムが『Doin' What We Wanna』(1970年)で、そちらからの7インチ・カットとなったのが本盤。A面"Right On"は今回が嬉しい初7インチ化で、個人的にはGang Starr"DWYCK"でネタとして使われた"Hey Jude"をカップリングして欲しかったのですが、そちらはオリジナル7インチ盤が存在するので・・・という配慮かもしれません。このグループの特徴の一つに「ベーシストがいない」ことが挙げられますが、Sonny Burkeの弾くオルガン・ベースがその代わりとして、バンド全体のボトムを支えています。まるでキーを落としたサイン波を弾いているかのような無機質なベースが、DJ Premierのお眼鏡にかなったという訳です。そして同じくオルガン・ベースの本盤A面"Right On"ですが、個人的にはQueen Latifah"Fly Girl"ネタとしての印象が強い曲。Gilles Peterson監修の『Jazz Juice 7』(1988年)で取り上げられて以降、アシッド・ジャズ・ムーヴメントを代表する1曲として、それ以外にも数々のコンピレーションに収録されてきました。そうした経緯からも分かるように、本国アメリカよりもヨーロッパで先に再評価された曲、ということになるでしょう("Fly Girl"をプロデュースしたSoulshock & Cutfatherもデンマーク人ですし)。ところでその"Fly Girl"には、英プロデューサー・チームBlacksmithが手がけた"Brixton Bass Mix"というのもありまして、当時も仲間内で評判になっていた最高のリミックスなのです。流麗なストリングスと動き回るベースラインが特徴の、文字通り普遍的な心地よさ。今聴いても自信を持ってその格好良さに太鼓判を押すことの出来る佳曲です。彼らの代表的ワークはCaron Wheelerの"Livin' in the Light"ということになるでしょうが、300曲(!)近く手がけたBlacksmith名義のリミックスはいずれも素晴らしく、今に至るまで全く再評価される気配がないというのが不思議でならないのですが、是非どこかで聴いていただけたら、と思います。
3
CERRONE / JAMES BROWN - ROCKET IN THE POCKET / CAN I GET SOME HELP
ブレイク・クラシックのファンクをリエディットするBreaks & Beats第8弾!!
コンスタントにリリースを続ける英Breaks & Beatsからの第8弾は、第5弾同様『Ultimate Breaks Beats』の方には収録されていなかった曲でした。A面曲は、フランスが生んだ「ディスコの貴公子」Cerroneのライブ盤『In Concert』(1979年)から。ちなみにこのライブ盤、録音は1978年12月Pavillon de Parisですが、アートワークで使用されているのは実はイタリアのライヴの写真だったりします。それはさておき、Cerrone本人が叩いた、ピッチ・ベンドするスネア音が非常に印象的なドラム・ブレイクは、The Cold Crush Brothersの"1981 / Other MC's"(1981年)やThe B-Boysの"Two, Three, Break"(1983年)、Run-DMCの"Jam Master Jay"(1984年)、LL Cool Jの"Rock the Bells"(1985年)などでも使われた、まさにオールドスクール期を代表するドラム・ブレイクの一つです。元は33回転ですが、サンプリングの際は45回転で使われることが多く、本盤も予め45回転バージョンとなっています。B面曲は、名盤『In the Jungle Groove』と同じく、James Brownの60年代後半から70年代初頭のライヴ音源や未発表音源をCliff Whiteがコンパイルした『Motherlode』(1988年)に収録されていた"Can I Get Some Help"で、ドラムスはMelvin Parker、ベースは"Sweet" Charles Sherrell、という鉄壁のリズム隊によるものです。Ultramagnetic MC'sの"A Chorus Line"(1989年)や、The 45 King feat. Lakim Shabazzの"The 900 Number(Ced Gee Remix 1)"(1991年)など、こちらはこちらで数多くのヒップホップ・クラシックスにて使われていますが、個人的にはStetsasonicの"Ghetto Is the World"の印象が強く残っています。両面とも最高ですが、エディットされて曲頭が長くなっていてその使い勝手もまた最高です。
4
JORUN BOMBAY - EDITS THEME / EDITING GEARS
当店一押しのJorun Bombayによるファンク・リエディット・ビーツ2曲を収録。
ロンドンのJim Sharpや、L.A.のJ Roccらと並び、「間違いないエディット」をリリースし続けるカナダ・ハリファックスのJorun Bombay(そういえば全員頭文字が「J」ですね)。今回またしても「わかってらっしゃる」エディット盤を、英Soundweight Recordsからリリース。A面は2015年にCaptain Vinylからも7インチ再発された、The Blackbyrdsの"Blackbyrds' Theme"(1974年)を、Jorun Bombayマナーでリエディット。さすがお目が高い。The Blackbyrdsといえば、Donald Byrdがハワード大学で教鞭をとっていた時の教え子たちによるグループということがよく知られていますが、同曲が収録されているセカンド・アルバムには、グラミー賞にノミネートされた"Walking in Rhythm"の方も収録されています。日本盤も出ていましたし、当時そこそこ売れたはずのThe Blackbyrdsですが、80年代後半の日本では(少なくとも身の回りでは)全くの無名のバンドでした。自分が所属していたソウル研究会の諸先輩方の中でも、当時この手のFantasy系ジャズファンク・バンド(Side EffectとかPleasureとか)を聴いていた人は皆無でした。ジャズでもソウルでもない立ち位置ゆえでしょうか。一方そのころ海の向こうでは、Jungle Brothersが"Tribe Vibes"(1989年)で本曲をネタに使っていた訳で。数年前にはThe Black Exoticsによるカヴァーが発見されて、そちらも話題になりましたっけ。B面には『Ultimate Breaks Beats』の収録曲でもある"Shifting Gears"をモチーフに、こちらはエディットというよりもサンプリングと弾き直しを駆使して再構成されたブレイクビーツ・カヴァーを収録。両面ともラベル面のアートワーク込みで拘りを感じさせる、やはり「わかってらっしゃる」仕上がりです。
5
ESTHER PHILLIPS - HOME IS WHERE THE HATRED IS
Esther PhillipsのGil Scott Heron名曲カヴァーが7"再発!!
1935年に生まれ、15歳のデビュー曲"Double Crossing Blues"でいきなりビルボードR&Bチャート1位を獲得して、華々しくショウビズに登場した彼女。黒人女性が1950年代のアメリカの音楽業界において、キャリアを築いていくことが容易ではなかったというのは想像に難くありません。そうした意味で、彼女の刻んだ足跡というのは、後進の黒人女性シンガーたちにも大きな希望や影響を与えたようです。1973年に本曲で彼女がグラミー賞にノミネートされたにもかかわらず、結果的に受賞したのは7歳年下のAretha Franklinだった、ということがありましたが、受賞したArethaがEstherに向かって「貴女こそがこの賞にふさわしい」と伝えてトロフィーを贈呈した、というエピソードが特に印象的です。Atlantic~KUDU~Mercuryを渡り歩き、ソウル・シンガーとして十数枚のアルバムを遺した彼女でしたが、10代の頃からヘロイン中毒に悩まされ続け、それが原因で48歳の若さにて亡くなってしまいます。財産はすべて晩年の治療費へと消え、結局彼女が遺したものは、若い頃の成功の証としてどうしても手放せなかった、たった1枚の毛皮のコートだけだった、という悲しい話も残されています。Gil Scott-Heronのオリジナル(1971年)をカヴァーしたこの曲は、もちろん実に格好良い曲ではあるのですが、「ジャンキー」という歌い出しからもお分かりの通り、薬物中毒者の悲惨な生活や、這い上がることの出来ないもがきや苦しみについて歌われた曲でした。10代からヘロイン中毒になり、それを一時的に克服した1970年代にカム・バックした彼女にとっては、正に歌うべくして天から与えられた曲でもあったのでしょうか。しかしその後、彼女は再びヘロインの薬禍の中にその身を投じてしまいます。この曲を聴くと、収録されているアルバム『From a Whisper to a Scream』のスリーヴにある、物憂げな彼女の横顔を思い出さずにはいられません。あまりにも悲し過ぎる一曲です。
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