山崎まどか : アイ・キャン・シー・ザ・ミュージック - Vol.3 [2012-07-11]
この原稿を書いているのは七月四日。アメリカは独立記念日。この日に照準を合わせたかのように発表されたラナ・デル・レイの「National Anthem」のMVを見て、A$AP RockyにJFKをやらせるのはヒップで賢いかもしれないけれど、アンタ自身はマリリンなのかジャッキーなのかはっきりしろと言いたくなった山崎です。「どちらの面も私にはある」っていうのが答なのでしょうけれど。
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独立記念日の花火が上がると、アメリカに夏がやってくる。今年のサマー・アンセムは何なのでしょう? ビデオからして夏全開なのが、Best Coastのセカンドからのシングルカット「The Only Place」です。ファーストの「海が好き、猫が好き、彼が好き、ハッパが好き」というラインをそのまま進化させたようなアルバムの内容もそうですが、もうこれがベタなくらいカリフォルニアの夏のイメージで、これくらい直球だと逆に気持ちがいい。海辺へのドライブ、バンド名が直書きされたサーフボード、ライブ会場の物販コーナーにあったらうっかり買ってしまいそうなBest Caost Gジャン、路上で割ったスイカで作るドリンク、チアリーダー、様々なグラフィック、花火をつけて走る自転車、そしてプール!
私はプールが出てくるMVには弱いところがあります。MVに限らず、デヴィッド・ホックニーのプール写真、『ローラー・ガールズ・ダイアリー』や『ファミリー・ツリー』といった映画における素晴らしいプールの水中シーンなど、プールにまつわるビジュアル物は何でも好きです。今年、Kate Spadeが出したこんなプール・クラッチも、一瞬買おうかどうか迷ったほど。
そんな私がPoolsideという名前のユニットを見逃すはずがありません。実際にカリフォルニアのプールサイドで録音したという彼らのデビュー・アルバム『Pacific Standard Time』はタイトルからして楽しみな一枚。このユニット名にこのアルバム・タイトル、ヨットロック(といっても分からない人は、今すぐコチラで、ヨットロックの歴史を勉強して下さい)なサウンドかと思いきや、彼らの音楽は非常に浮遊感のあるエレポップでした。名づけてDay Time Disco。プールのゆらめく水面がそのまま音になったかのような彼らの「Slow Down」こそが今年のサマー・アンセムにふさわしいのかもしれません。MVがこれまたプールをフューチャーした傑作! 見ているだけで気持ちいい。暑い日の昼下がりに、音楽を聴きながらこんな風にチルしたいものです。
でも、このMVって、ただクールで気持ちいいだけではなく、どこか暴力の気配もする。ブレット・イーストン・エリス的なカリフォルニアの雰囲気がそこにはあります。
最近はすっかりTwitter芸人と化している感のブレット・イーストン・エリスですが、ロック・ミュージックからの引用が上手い作家でもあります。彼が最近、『キャット・ピープル』の監督(というよりも、『タクシー・ドライバー』の脚本家といった方が通りがいい?)ポール・シュレイダーと組んで作っている映画が『The Canyons』。リンジー・ローハンと現役ハードコア・ポルノ俳優のジェームス・ディーン主演ということで話題になっている作品ですが、そのティーザーに使われていたのはDum Dum Girlsの「Coming Down」でした。こんなちょっとダウナーでドリーミーな感じが、カリフォルニアの気怠い夏のムードなのかもしれません。フルクサス時代のオノ・ヨーコのパフォーマンスを思わせるような、この曲のオリジナルのMVも好きです。
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