山崎まどか : アイ・キャン・シー・ザ・ミュージック - Vol.10 [2014-04-07]
春は卒業と入学のシーズン。いろんな分野から人が出たり、入ったりします。ミュージック・ビデオの世界も同じです。
写真で活躍している人がミュージック・ビデオの監督をしたり、ミュージック・ビデオの監督を足がかりにして映画の世界に羽ばたいたりします。
近年のミュージック・ビデオから転身組の監督の出世頭といえば、やはりスパイク・ジョーンズとミシェル・ゴンドリーということになるでしょうか。二人は映画監督になっても、時々気まぐれなOBが母校を訪問するようにMVの世界に舞い戻ってくることがあります。
『ウィ・アンド・アイ』、『ムード・インディゴ』と去年日本でも続けざまに新作が公開されたミシェル・ゴンドリー、久しぶりのMVが、エレ・ポップ・バンドのMetronomy のニュー・アルバムのタイトル・ナンバー「Love Letters」。
えんじのお揃いのジャケットを着て、60年代のバブルガム的なポップ・ナンバーを歌うメンバーを、五角形のボックスに入れただけの簡素なビデオです。
カメラ・ワークもそのボックスの周囲をくるくる回るというシンプルなもの。しかし、五つの面に描かれたイラストが素晴らしい。そのイラストで、角度によってはメンバーがスタジオやライブ会場で歌っているように見えたり、森の中や車の中で演奏していたり、パソコン上の動画のように見えたりするという仕掛けになっています。
お金をかけてCGを使わなくても、発想次第でこんなクリエティブなことが出来るというお手本のようなMVです。段ボールでいろんなものを作るのが得意なミシェル・ゴンドリーらしい。スタジオのはしっこで、スタッフたちが手拍子しているのが映り込んでいるという演出も、ゴンドリーっぽいユーモアに満ちています。
映画/ドラマの世界から、ミュージック・ビデオに進出してくる人もいます。
ドラマ「Girls」で話題のクリエイター、レナ・ダナムも先頃、Bleachersの「I Wanna Get Better」という曲でMV監督デビューを果たしました。実はBleachersは、FUN.のジャック・アントノフのソロ・プロジェクト。レナとジャックのSNSをチェックしている人なら知っている通り、二人はラブラブの恋人同士です。(ラブラブって表現はもしかして古いのか)
レナが撮ったビデオは、恋人に捨てられたジャック・アントノフが職場に向かい、業務をこなすというもの。その仕事とは、精神カウンセラー。本当は助けが必要なのは彼のはずなのに、様々なタイプの患者が押しかけてきます。そして悩みをかかえた彼らが、サビの「I Wanna Get Better, Better, Better」というフレーズをスローモーションで絶叫するのです。
ドラマでもセレブリティのカメオ出演が好きなレナらしく、テレビや雑誌で見知った顔があちこちに出てきます。中でも印象的なのが、やせっぽちの少女の患者を演じるアロウ・デ・ワイルド。彼女はインディ・ロック・ファンにはお馴染み、音楽誌やファッション雑誌で活躍する写真家のオータム・デ・ワイルドの実の妹にしてミューズです。
Bleachersの印象的なジャケットも、オータムが撮ったアロウの写真。
人脈が透けて見える、内輪っぽいそんなノリもありかなあと思います。
最後に、日本でも公開中に「レゴ・ムービー」の主題歌のビデオを。
マーク・マザースボーが手がけたくせになる主題歌を歌うのは、Tegan and Sara と The Lonely Island。六歳のマーカス・ジョリー君が作ったレゴの世界に、二組のアーティストもちゃんと登場するんですよ。
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