清水三恵子 : Japanese Pop - [2020-12-18]
[Profile]
ロンドン在住30年、シンガー、作曲家、プロデューサー。Mick Karn、Nitin Sawhney、Riz MC等、多数のアーティストとのコラボレーションを行い、Mico、Apache 61、Mekong Zooの名義でもアルバムをリリース。ロンドンのオペラハウス、リバプールのエブリマン、フェニックス・ダンス・シアター等、バレエ、ダンス、映画、舞台、イベント等幅広い分野の音楽を担当し、サウスバンク、バービカン等メジャーな会場からロンドンのアンダーグラウンドのベニューまで、幅広い範囲でライブ活動を行っている。2020年夏から、The Cardiacsの元メンバーWilliam D Drakeとのコラボレーション・プロジェクトを始動。2021年2月に、1990年にコンチネンタル/テイチクから発売されたアルバム『貝の道 (A Road Of Shells)』がJET SETから初アナログ化。2月7日にニュー・アルバム『I Bloom』をUKレーベル"Street Furniture Records"からリリース。春以降、2012年に発売された『Phenomena Of The Mind』と『My Tentacles』、そして1997年に細野晴臣主宰のレーベル、"daisyworld discs"から発売されたApache 61のアルバム『Apache 61』が"Street Furniture Records"より再リリースされる。
1. Arca / Kick i (Xl) LP
Bjork、FKA twigs等の独特なアーティストのプロデュースを手掛けるベネズエラ人のプロデューサー。トランスヴェスタイトである自分を「誰が何を思おうと知ったこっちゃない」と徹底的に主張し、音楽だけでなくビジュアルでもやりたい放題のプロダクションがまるで火炎放射器が火を吹いているようで過激な気持ち良さがある。同時に鬼才溢れる繊細なアレンジ、プログラミングが彼女の底力を見せる。
ARCA - KICK I
ビョーク、ソフィー、ロザリアら豪華ゲスト参加！華麗なる変化を遂げたアルカによる最新作!
2. Matmos / The Consuming Flame: Open Exercises in Group Form (Thrill Jockey) 3CD
44トラック（トータル2時間57分）がCD3枚分に収まるサンフランシスコ出身デュオの大作。細切れにされた様々なサンプルが新爆弾の実験の後のようにバラバラに飛び散り、ビートもメロディも同時に粉々になって散在するような彼らの音は脳を困惑させ、聴けば聴くほど時間軸から外れた図り知れない空間に意識を導き、かつて存在した自分の感覚は実は全く違う形をしているのではないかと、何か自分を束縛するものから逸脱できたようなポジティブなインスピレーションが湧く。ロンドンの第二ロックダウン中にズッポリはまったアルバム。
MATMOS - CONSUMING FLAME: OPEN EXERCISES IN GROUP FORM
99人の異なるアーティスト等に参加を呼び掛けたコンセプト・アルバム!!
3. Eartheater / Below The Clavicle (taken from album『Phoenix: Flames Are Dew Upon My Skin』) (Pan) LP
久々に好きな曲に出会った。直訳すれば「鎖骨の下」という変なタイトル。「帰ってきてよ、どこか連れてって。お喋りは抜きで、フィジカルに何かしよう。」と歌ってるような歌ってないような力が抜けた粋なボーカルが何故かアジアを思わせるようなメロディーに乗って心に沁みる。意味が生まれる前のカオス状態を表したような言葉のリズムが美しい。コーラスの柔らかい叫びがぐっと胸にくる。
EARTHEATER - PHOENIX: FLAMES ARE DEW UPON MY SKIN
Eartheaterの妖艶なる歌声が輝く、エクスペリメンタル・アコースティック・オペラ!!
4. Kaitlyn Aurelia Smith / The Mosaic Of Transformation (Ghostly International) LP
Buchla Music Easelを駆使した電子音楽。エレクトリックなのにそこはかとないオーガニックなサウンドが暖かい海の波のように繰り返し打ち寄せては消えていく。インプロビゼーションをしていくうちで、それぞれの周波数を自分の身体にイメージするビジュアル言語と彼女は呼ぶ。女性アーティストらしい優しさと相反した獰猛さが交わる素晴らしい作品。
KAITLYN AURELIA SMITH - MOSAIC OF TRANSFORMATION
現行の実力派女流電子音楽家による芳醇なアンビエント・サウンド!
5. Moses Sumney / Grae (Jagjaguwar) 2LP
カリフォルニア出身のガーナ系アーティスト。正しいのでもなく間違いでもない。黒でもなく白でもない。男でもなく女でもない。ストレートでもなくゲイでもない。国境もない。Moses Sumneyはノンバイナリーな意識をあらゆる側面から歌い上げ、あらゆる音楽のジャンルを砂漠を越えるように渡る。心がはみ出るようなボーカルに脱帽。
MOSES SUMNEY - GRAE (BLACK AND WHITE VINYL)
Thundercat、Jill Scottらが参加した超力作セカンド・アルバム!!
6. Autechre / Sign (Warp) 2LP
マンチェスターのデュオ、Autechreが本当に久しぶりにアルバムを出した。相変わらずの徹底した無機質さは90'sから少しも変わらずで、その頑固なまでの自然体的な彼らの姿勢が私にエネルギーをくれる。このアルバムのすぐ後に『Plus』というアルバムもリリースしているのだが、『Sign』の製作でどっと深くはまった後、その淵から出てきたところで『Plus』ができたのかな、と勝手に想像してみた。
AUTECHRE - SIGN
創造性の火を燃やし続けるAutechreが、2020年代はじめてのアルバムをリリース!
7. Lafawndah / The Fifth Season (Latency) LP
イラン、エジプト系のフランス生まれの女性アーティスト。これまでWarp、!K7等のレーベルから何作かリリースしている。このアルバムは9月にリリースされたもので、ファンタシー作家NK Jemisinの『Broken Earth』3部作にインスパイアされたものらしい。それぞれの音がそのまま空と地に繋がっていくように音の表現に全く境界線がなく、生きている事と死ぬ事の観念さえ境がなくなったような感覚が、まるで香が焚かれたように自然と体に染み込んでくる。
LAFAWNDAH - FIFTH SEASON
待望のセカンド・アルバムが到着!
8. This Is The Kit / Off Off On (Rough Trade) LP
英国でフォークトロニカが生まれて暫く経つが、このバンドはTunngとともにフォークトロニカの先駆者たちの一つだと言える。英国の中世の民謡の香りと古くから伝わる訓話のような口調の歌詞が、少々アフリカンなリズムのフォークギターのストロークに乗ったKate Stablesのスキルフルにナイーブなボーカルが、リスナーを思い切りハグする。大好きな親戚のお姉さんみたいにどこまでも暖かく、深く、ちょっと悲しげな音楽。
THIS IS THE KIT - OFF OFF ON
UKインディ・フォークの至宝ユニット、Rough Tradeからの2作目!!
9. Sault / Untitled (Black Is) (Forever Living Originals) 2LP
常にメディアとのコンタクトを避けているので誰も何者か分からない正体不明の英国のプロジェクト。今年はパンデミックだけでなく、反レイシズムを唱える"Black Lives Matter"のプロテストで英国中が混乱した。奴隷を使って富を築いた白人の貴族、政治家、商人たちの銅像が縄で引き摺り下ろされ川に捨てられるのをTVが繰り返して放映し、あちこちでその行為に対する論議を呼んだ。レイシズムが蔓延る歪んだ歴史の上に成り立つ先進国の現在を批判するこのアルバムは静かに燃える雄叫びのようなメッセージを世界に伝える重要な存在だ。
SAULT - UNTITLED (BLACK IS)
ミステリアスなUKレフトフィールド・インディ・ディスコ・バンド、2020年第2作!!
10. Carl Stone / Stolen Car (Unseen Worlds) 2LP
世の中に存在するあらゆる音がスライスされ、引き伸ばされ、変形され、置き換えられ、散り散りバラバラに撒き散らされて、最後に一つの絵となるカールのエレクトリック・ワールドは、ほんのりと60年代のNYのアートシーンの香りがする。「ストールン・カー」、「盗まれた車」というタイトルを心に入れて全曲を聴くと様々なストーリーや思考が勝手に頭に湧いてくる不思議な作品。
CARL STONE - STOLEN CAR
サンプリング・ミュージックのパイオニアCarl Stoneの新作アルバム!!
[イベント情報]
4/TBA Solo Live @Paper Dress Vintage (Shoreditch, London)
[関連サイト]
https://miekoshimizu.com/
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清水靖晃 - DEMENTOS
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