小西康陽 : Japanese Pop - [2021-12-17]

[Profile]

音楽家。'85年、ピチカート・ファイヴのメンバーとしてデビュー。解散後も、数多くのアーティストの作詞/作曲/編曲/プロデュースを手掛ける。'11年、PIZZICATO ONE名義で初のソロアルバムを発表。'15年、セカンドアルバム『わたくしの二十世紀』を発表。'20年、ビルボードライブにおけるワンマンライヴの模様を収録したライヴアルバム『前夜 ピチカート・ワン・イン・パースン』を発表。選曲・監修を手がけた『レディメイド未来の音楽シリーズ CDブック篇』、ピチカート・ファイヴのベスト盤『高音質のピチカート・ファイヴ』が発売中。

 

 

 

※順不同

矢舟テツロー / うた、ピアノ、ベース、ドラムス。 (Urban Discos) CD
 プロデューサーという名目でかかわった作品ではありますが、2021年を代表する1枚としていささかの衒いもなくこのアルバムを挙げます。
 いままでに制作やプロデュースを引き受けた作品の中ではもっとも短期間に完成したアルバムであり、条件面でもいつもとは違うスタジオ、いつもとは異なるエンジニアやマスタリング・エンジニアの方と仕事をすることになって、初めのうちはとまどいがなかったとは言えませんでした。
 しかしながら、都内の練習スタジオで矢舟テツローさん、鈴木克人さん、柿澤龍介さんのによる4日間のリハーサルに立ち会ったとき、すぐに「このアルバムはとんでもなく素晴らしいものになる」と確信して、そこからはリズム録りに2日、歌入れに2日、トラックダウンに4日、マスタリングに1日でこのアルバムは完成。まさに目の前で「名盤」というものが出来上がるのを、じぶんはただ呆然と見ていた、というのがじっさいのところです。
 プロデューサーとしてなにか協力することがあったとすれば、いままでそれなりに数多くのジャズ・ヴォーカルのレコードを聴いてきた体験が、「名盤とはこういうもの」という感覚を身体の中にのこしていたから、すべての「素晴らしい瞬間」と、それ以外の「惜しい瞬間」とを判別できたのかもしれない、とは思いますが、もちろんただそれだけのことです。
 いっそ我田引水というほかないことを書くならば。かつてピチカート・ファイヴというバンドをスタートしたときに漠然とイメージしていた「つくりたい音楽」「伝えたい感じ」というものを、矢舟さんと彼のトリオはみごとに具現化してくれたわけです。これこそはピチカート・ファイヴの新作にして最高傑作、到達点なのだ、と言ってしまったら、矢舟さんご当人を筆頭に多くの方々から、おいおい、そりゃ違うだろ、と非難されることは間違いないでしょうけれども、でもそこまで言ってしまいたい、じぶんがこの世の中にのこしたい、のこしてから消えたい、と考えていた「なにか」がこのアルバムにはあるのです。ただし、その中で1曲だけ、矢舟さんがこのアルバムのために書いた「短くて長い歌」という曲だけは、ピチカート・ファイヴの音楽にはなかったもの、もっと真摯であたたかい、たとえばスティーヴ・ファーガスンのアルバムの1曲めのような、珠玉のトラック。とにかくリトル・リチャードのスペシャルティ・レーベルにおけるファースト・アルバムのように短くて、グレン・グールドの米国コロンビア・レーベルにおける第1作のように永遠にフレッシュな録音盤。来年にはアナログLPレコードも発売される予定です。

うた、ピアノ、ベース、ドラムス。

矢舟テツロー - うた、ピアノ、ベース、ドラムス。

小西康陽プロデュースの新作7th.アルバム!!

CD |  ¥3,000 |  URBAN DISCOS (JPN)  |  2021-12-14  | 

 

 

 

 

 

 

 

ノラオンナ / ララルー (Noraonna) LP
 そろそろ彼女の音楽と、音楽制作、作品の発表に対する独自のスタイルは脚光を浴びるべきときです。完全にご自身のレーベルで制作していて、それがいつも大傑作なんですよ。その反対に、けっきょく小西康陽という音楽家はノラオンナさんのような清廉な態度で作品を制作するほどの覚悟もないまま、いまだにかつての?メジャーなレコード会社で運良くレコードを制作する機会がまわってくるのを待つばかり。いまのご時世、本当にこれで良いんでしょうか。
 なぜここで小西康陽の話を読まされなくてはならないのか、と思う方も少なからずいらっしゃると思いますが、もし、あなたが演奏家だったり、作詞作曲家であったり、音楽制作者であったりするなら、ノラオンナさんの一連の作品を聴いていて、じぶんの仕事を省みずにはおれないと思うのです。
 音楽それ自体の話をしていませんでした。この新作アルバムは、意外にもヴァラエティに富んだアンサンブルで聴き易さという点では随一だと思います。なぜいままで聴かなかったのだろう、と後悔するなんて馬鹿げています。はやく彼女の作品を聴いて、むかしからファンだった、という態度をとるほうがずっとスマートです。

ララルー

ノラオンナ - ララルー

前作『めばえ』から約3年ぶりとなるニュー・アルバムが完成!!

LP |  ¥3,850 |  NORAONNA (JPN)  |  2021-12-31 [再]  | 

 

 

 

 

 

 

 

Yossy / Honey (Bus/Jet Set) 10"
 あのYOSSY LITTLE NOISE WEAVER名義での大傑作シングル「Ghost」は2018年のベストに選定しましたが、アルバム『SUN AND RAIN』は買ってはみたものの、つよい印象をのこすことのなかった一枚でした。しかし、Jet Setの予約情報でこの10インチの発売予告を見たときは、なぜかこれはぜったいに良い作品のはずだ、という当て推量を抱き、発売予定日を大幅に遅れて手許に届いた午後は、やはり確信は間違っていなかった、とひとりで悦に入っておりました。
 このアーティストがどういう人物なのか、何も知らないに等しいのですが、とにかく素晴らしい才能の持ち主だということだけは知っています。XTCの曲を取り上げてカヴァーしている、というのは、それなりに年配の方なのだろうか、あるいは年配の方がブレーンとして暗躍しているのか。まんまと釣り上げられてしまったシニア世代の音楽ファンがここにひとり。
 この人のハーモニーに対する感覚が好きなのですが、さらに言うなら本当にチャーミングな声の魅力。かつて水垣洋子や野宮真貴といった歌手に感じたコケットリーを、じぶんはこの人の歌声の中に見出しています。

HONEY

YOSSY - HONEY

Yossy Little Noise WeaverのYossyによるソロ・デビューEP!!

10" |  ¥2,860 |  BUS / JET SET (JPN)  |  2021-09-07  | 

 

 

 

 

 

 

 

麻田浩 / きみには歌いたいことなんてないのに (Be a Good Neighbor) 7"
 編集者として知られる岡本仁さんの回顧展のために制作された7インチ。元はと言えばコロナ禍のもと、ステイホームを余儀なくされた2020年5月、とつぜん麻田浩さんのアルバムを作りたい、アルバム・タイトルは『カウボーイ・ハットを被った男』としたい、と考え、矢も盾もたまらずにご当人の麻田さんと会ったものの、そう簡単には運ぶことなく、やがてピチカート・ワンの『前夜』という作品に関連して岡本仁さんよりインタヴューを受けた際に、いまいちばん作りたいのは麻田さんの作品、岡本さんがプロデューサーになってくれませんか? とお願いしたところ、そこから半年ほどの経緯は省きますが、とりあえずはデモ・テープを作りましょう、との岡本さんからのサジェスチョンを受けて、すぐに書き下ろしたのがこの曲というわけです。そのあとすぐ、岡本仁さんより、回顧展で紹介する最新の仕事として、この曲の7インチを作りたい、というオファーを受けて録音したのがこのレコードのA面に収録したトラックです。
 ギターとペダル・スティールは麻田浩さんがご紹介くださった若いミュージシャンのオオサキゲンタさん。この曲を作った直後から、なぜか頭の中で「蜂蜜ぱい」の鈴木慶一さんの声がずっとくりかえし聴こえてきて、そこでもしお願いできるのならゲスト・ヴォーカルで参加していただけないか、という連絡を取ったところ、なんとご快諾くださいました。時を同じくして岡本仁さんも、やはり元「蜂蜜ぱい」のベーシストだった和田博巳さんに演奏をオファーしていて、この御二方の参加がとても効果的なアクセントになった、と思います。
 ちなみにこの7インチのB面は小西康陽によるデモ・トラック。麻田さんに歌っていただくつもりの候補曲も準備していましたが、諸事情ありまして「また別の機会に」ということになりました。すでに完売してしまって、入手はむずかしいかもしれませんが、じぶんにとっては2021年を象徴する楽曲のひとつです。

きみには歌いたいことなんてないのに

麻田浩 - きみには歌いたいことなんてないのに

鹿児島のイベント会場のみで販売されていた限定7インチ!!

7" |  ¥2,200 |  BE A GOOD NEIGHBOR (JPN)  | 

 

 

 

 

 

 

 

安藤明子 / オレンジ色のスカート (Softtouch/Jet Set) LP
 このレコードがアナログLP化されたことは快挙です。ギターを弾いて歌う女性シンガー・ソングライターは多いですが、彼女はやはりたいへんに個性的な人だったのだと思います。はじめてこのアルバムを聴いてから、もう10年以上が経つのですね。たしか京都のバンヒロシさんがCDを送ってくださって、それで知ったわけですが、これ以上はシンプルに出来ない、というほどシンプルな音楽に聞こえるのに、なぜか耳について離れない。ギターの伴奏と、歌声のリズムの、微妙なズレ。なんというか、とても音楽的。いま聴いても古くない、ではなくて、永遠に古びることのない音楽。彼女の顔を大きく使ったジャケットもほんとうに素晴らしい。最初からアナログで出るはずだったアルバム。

オレンジ色のスカート

安藤明子 - オレンジ色のスカート

バンヒロシがプロデュースを手掛けた2010年リリースのセカンド・アルバムが初アナログ化!!

LP |  ¥2,860 |  SOFTTOUCH / JET SET (JPN)  |  2021-05-25  | 

 

 

 

 

 

 

 

Bobbie Gentry / Windows of the World (Capitol Nashville) LP
 2021年のレコードストアデイで出た、ボビー・ジェントリーの未発表録音集です。どうやら彼女が残していた夥しい量のデモや未発表音源、あるいはオルタネイト・テイクから選んだ音源、その多くは数年前に欧州でリリースされた彼女のボックス・セットにボーナス・トラックとして収められていたものであり、いわば「落穂拾い」音源の集成のようですが、まるで一枚の未発表作品集が発掘されたかのようにLPレコードとして端正なかたちにまとめられています。ほんの何箇所か、歌のうまいボビー・ジェントリーにしては音程の甘いトラックがあって、その辺りに気づくとき、ようやくこれが「拾遺集」だったことを思い出すほど完成度が高く、アルバム全体をとおして穏やかな気分で聴くことの出来る名盤です。個人的には1960年代後半の作品を中心として、1950年代半ばから1970年代初頭までにリリースされた
「好きな声と好きな曲ばかりが収められた」
「苦手なアンサンブルの登場しない」
「好みではない曲の収録されていない」
「1枚を通して針をあげることなく聴ける」
「ジャケット・デザインも素晴らしい」
「2枚組ではない」
LPを、部屋の中でただぼんやりと聴く、という、いまいちばん好きな「音楽への接し方」を享受することの出来るアルバムであり、こうした作品がこの2021年に新たにリリースされたということがとても嬉しいのです。
 こんなに素晴らしい傑作アルバムを、LPレコードという理想のかたちで出会うことが出来るのですから「レコードストアデイ」もまんざら捨てたものではないわけでして、プリファブ・スプラウト『スティーヴ・マックイーン』のアコースティック・デモ集、タンバ4のやはりお蔵入りしていたCTI録音アルバム『California Soul』など、まるで我が家のレコード棚のいちばん愛聴しているアルバムばかりを収めたコーナーを標的にして発掘しているのか、と思わずにはいられないほど。こうなると、今後の「レコードストアデイ」のリリース作品にも注目しないわけにはいきませんし、レコードを蒐集する趣味をつづけていてよかったな、とも考えてしまいます。ちなみに今年、我が家の愛聴盤コーナーが最も待ち焦がれていたのはブライアン・ウィルスンの『At My Piano』という新作アルバムのアナログLPですが、この12月半ばの時点ではまだ手許に届いておりません。

WINDOWS OF THE WORLD (180G)

BOBBIE GENTRY - WINDOWS OF THE WORLD (180G)

【Record Store Day限定盤】未発表アルバムが初ヴァイナル化され復刻!

LP |  ¥4,000 |  CAPITOL NASHVILLE (USA)  |  2021-07-17  | 

 

 

 

 

 

 

 

ビクターMkii / Sunday 日曜日 (Demohauz) LP
 こういうタイプの音楽は、砂原良徳さんの1995年のアルバム『CROSSOVER』が元祖にして、いまだに超えるものが出てきていない、と思い込んでいる、言ってみれば「情報に疎い」音楽愛好家ですが、このレコードにはどこかつよく惹かれました。
 たとえば、あのTV放送版の『エヴァンゲリヲン』の、「第2新東京市」でしたっけ? あの、人々が暮らすのどかな日常を描いた場面の、人物の背後の静止した風景の画の、どこかほのぼのとして空虚な感じ。べつに『エヴァ』でなくても、宮崎駿でも新海誠でも片渕須直でも細田守でも良いのですが、あの背景の、丁寧に描かれているのか、それとも手を抜いたタッチなのか、ちょっと素人には判別し難い、しかし日本のアニメ独特の動きの少ない作品の中でもとくに完全に静止した背景。あの感じを思い出してしまうサウンド。ブライアン・イーノに届けたくなるアジアの音楽。

SUNDAY 日曜日 (PINK VINYL)

ビクター MKII - SUNDAY 日曜日 (PINK VINYL)

「日曜日」をテーマに綴られる計20曲のインストゥルメンタル・ショート・ストーリーズ。

LP |  ¥3,300 |  DEMOHAUZ (USA)  |  2021-06-13  | 

 

 

 

 

 

 

 

Francis / Borelo (Viva) CD
 小里誠さんのひとりユニットのフル・アルバム。この大傑作としか言いようのないポップ・アルバムの、唯一にして最大の欠点はCDである、ということ。男ならアナログでLPを作りましょうよ。できれば、LPにボーナス7インチが付録として付いているアナログ。たのむから2枚組にだけはしないでほしい。このアルバムの内容なら7インチ・シングル6枚組でも良いかも。ぜったい売れます。ぼくがJet Setに売り込みたいです。

BOLERO

FRANCIS - BOLERO

『BurningBear!』から27年ぶりとなる新作セカンド・アルバム!!

CD |  ¥3,300 |  VIVA (JPN)  |  2021-12-18  | 

 

 

 

 

 

 

 

Halfby / Loco (P-Vine) CD
 上記のフランシスとほぼ同じ時期に、このハーフビーのアルバムにも推薦コメントを求められて引き受け、書いて送ったのですが、いまのところ、その推薦コメントがどこかに使われているのをまだ見たことがなくて、もしかしたら書いて送った内容がお気に召さなかったのかもしれません。例によって、なにか言わなくてもよいのに、というような余計なひと言を書いてしまったのかも。だとしたら、申し訳ありませんでした。せっかくなので、ここにその推薦コメントをまるごと再掲させていただきます。

「Fushigi」はやはり、フーシャイジー、と読むのだろうか。
 ハーフビーの新作、じっくり聴かせていただきました。音楽ってこういうのでいいのかな、と考える瞬間と、音楽ってこういうのでいいんだよな、と思う瞬間と、音楽ってこういうのがいいんだよ! と膝を打つ瞬間が交差する、リラックスしているのに刺激的なアルバムでした。まったく知らないアーティストの作品として聴いたら、うわ、こんなスゴイ人が出てきたのか、とてもかなわない、と落ち込んでしまったかも。知り合いでよかった、と思いました。
 とにかく素晴らしいのはリチャード・ナットがヴォーカルを聴かせる甘酸っぱいポップス「Beach Baby, Be Mine」とメイ・エハラのヴォーカルをフィーチャーした「Fushigi」と、そして最高のカットアップ・トラック「Hawaii Calls 2021」。もちろんアルバム全編、聴き流し用にも最高です。
 デビュー20周年、さあ、これからどうするの、と問い質したいところですが、まずは傑作完成、おめでとうございます。アナログをぜひ作ってください。小西康陽

 というようなコメント。しかし、たしかにぼくはこの素晴らしいトラックメイカーに、なにか無粋な注文をつけたい気持ちがあるのかもしれません。正直なところ、ここ数年のハーフビー作品にかならずフィーチャーされている、「なんとなくさわやかで甘酸っぱい歌モノのポップス」をどう捉えるべきなのか、まだよくわかっていないのです。高橋くんの出演するパーティーにおける「アンセム」となるトラックに育て上げたいのでしょうか。今回はGinger Root という音楽家をメインに据えたキャッチーなポップスを7インチで切っているのをはじめとして、Mei Ehara ほか数多くのミュージシャンを招き、極めつけにあのRichard Natto まで登場する。まるで年末に封切りのお正月映画のような豪華ゲスト陣。(<いま「年末の忠臣蔵映画のような豪華ゲスト陣」と書こうとして、いや、それはピチカート・ワンの最初の2枚のアルバムだろう、と考えました。俳優たちがみな悲壮な顔をして出てくるアレ。)それらゲストをフィーチャーしたトラックのどれもが完成度が高く、一貫した美意識に支えられている。そういえば今年、とつぜん登場して数々の目の覚めるような7インチ・シングルを連発した「TYP!CAL」というレーベルがあって、そのどれもが素晴らしいので逆にどうしても1枚だけを選ぶということができずにこの年間ベスト選考からはずしてしまいましたが、ハーフビーの近作における一連のポップな歌モノのトラックはその「TYP!CAL」レーベルの一連の作品に通奏する何かがあると思います。さわやかさ。甘酸っぱさ。インディ感。90年代感。「世界同時多発」感。「MOTORWAY」感。いや、文句のつけようもないのですけれども。
 そのような、にぎやかでカラフルでお祭りっぽいポップスなら、なにか新しくゴージャスな別名義でやったら良いのに、高橋くんなら話題になるのに、とぼくがどこかで考えているとしたら、それはたぶん間違いなくハーフビーにたいする羨望、やっかみの気持ちがあるからで、じぶんもこういうポール・ゴーギャン的な「楽園」をテーマにしたレコードを作ってみたかった、ということなのでしょう。ただ、ぼくが作るなら、それはやはり「隠遁」をサブテーマにした、たとえばサイラス・ファーヤーの『Islands』のようなアルバムかも。
 ここまで、まさしく老害の発想ですね。しかし老害のDJに、これほどの気持ちを抱かせるほど、この『Loco』という新作アルバムのトラックの数々は見事な完成度なのでした。なかでも「やられた!」と悔しがらせたのは「Hawaii Calls 2021」というカットアップのトラック。何年か前に高橋くんが「セカンドロイヤル」のサイトの中で、謎のショップを立ち上げて、そこで奇妙なミックスCDを売っていたことがありましたが、あの奇妙な、ほかに似ているアンソロジーを思いつかない「フランス・ギャル」オンリーのミックスCDでやっていたことが、この短いカットアップにつながっていたのか、という驚き。
 完成度の高い作品を世に出してしまったら、こんどは「これからどうするの?」がつきまとう。試聴した直後に書いた推薦コメントにはズバリそのことが書いてありました。

LOCO

HALFBY - LOCO

3年振りの新作アルバムはデビュー20周年記念盤にしてハワイ3部作完結編!

CD |  ¥2,970 |  P-VINE (JPN)  |  2021-10-05  | 

 

 

 

 

 

 

 

ランランランズ / ロックンロール / レコードのうた (Passion) 7"
 このレコード、ぜったいコニシさんも気にいると思います、というお言葉とともに、元フジロッQ、いまはこのpassion recordsの主宰者である高橋元希さんから頂戴したレコード。たしかに気に入りましたが、フジロッQの「バンドやろうぜ」という曲ほど気に入ったわけではなく。まあ、あれほどの名曲がそう度々作られてたまるか、と思いますが、ぼくの知らない世界では日夜、名曲や傑作が生まれているのかもしれません。高橋さんは、とくにB面の「レコードのうた」を大推薦してくださいましたが、A面の「ロックンロール」もよかった、というか、むしろこちらの方が気に入ってしまいました。高橋さんがぼくに直接届けてくださらなければ、じぶんはこのレコードのことを永遠に知らなかったはずですが、聴いたあとでもっと気になったのは、はたして「甲本さん」や「真島さん」にこの7インチが届いているのか、ということ。日本中、どこのレコードショップに行っても、先月、あの二人が店に来ましてね、という話を聞かされるほど、レコードとレコードショップを愛しているお二方ですから、当然アンテナに引っかかっているとは思いますが、それにしてもこの7インチが届いていたら素晴らしいな、と思いました。高橋さん、ありがとうございます。

ロックンロール / レコードのうた

ランランランズ - ロックンロール / レコードのうた

千葉が誇るグッド・ロックンロール・バンドの新作7インチ!!

7" |  ¥1,320 |  PASSION (JPN)  | 

 

 

 

 

 

 

 

CHiBA-CHiiiBA / HEAVY WEIGHT brasileiro (Mud Dirty Production) MIXCD
 じつはこのDJ兼トラックメイカー、そしてこのミックスCDの存在をつい最近知りました。毎年12月、東中野のラーメン居酒屋さん「ビストロ de 麺酒場 ひかる」でお招きいただいている『東中野は夜の七時』というパーティー、2020年は残念ながらコロナ禍の下、中止を余儀なくされてしまったのですが、2021年はどうにかこうにか無事に開催されて、例年以上に楽しい時間を過ごしたのですが、店長にしてオーガナイザーの高橋さんがいつもぼくの気に入りそうなDJを前後に選んでくださって、今年、じぶんの登場する直前にプレイされていたのが、このDJ、CHiBA-CHiiiBA(千葉チーバ)さんでした。いやー、この方のプレイはスゴかった。スゴ過ぎでした。
 ぼくが会場に到着したときにはすでにプレイは始まっていて、たしか70年代の、いわゆるブラジリアン・ファンク辺りを選曲されていたような記憶。それが次第に1960年代のブラジリアン・ジャズとブラジル・ネタのヒップホップを交互にプレイし始めて、もちろんスクラッチも入れて、だんだんお客さんの耳と視線を2台のターンテーブルに集めていく。おや、背後のレコードバッグからはセルジオ・メンデス&ブラジル’66のA&Mでのファースト・アルバムが2枚、顔をのぞかせている。やがて、ついに、とうとう、セルメンのA&M盤から「Tim Dom Dom」が選曲された、と思ったら2枚使いがスタート。店内は完全にロック・オンされてしまった状態。実況しますと、以下。
L「チン・チン・ドン・ドン」<>「チン・チン・ドン・ドン」R、
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いつの間にかターンテーブルはずっと「ちんちんちんちん」言っている状態で店内は満場の拍手。するとDJはおもむろにジョアン・ドナートのPacific Jazz盤をターンテーブルに乗せて、ピアノで奏でられた「Tim Dom Dom」をさらりとプレイ。須永辰緒さんなら「粋!」と仰ったに違いないはずの呼吸でしたが、そこから畳み掛けるようにテノリオ・ジュニオールの「Nebulosa」をプレイ。白ジャケから取り出されたテノリオ・ジュニオールはSP盤かと錯覚するほどのチリ・ノイズにまみれた音。思い切り使い込まれたレコードでした。前後にさまざまなレコードが挟み込まれていたはずですが、それは現場にいた人だけの楽しい記憶の中にあるはずです。
 そしてパーティーから帰る直前、千葉チーバさんとご挨拶したさいに頂戴した2枚のCDのうちのブラジリアン・ミックスのCD、というのがこの『ヘヴィウェイト・ブラジレイロ』というアルバム。帰宅してすぐ聴いたのですが、これは楽しい。これは素晴らしい。たとえば、まったくクラブに遊びにきたことがない人、あるいはまったくヒップホップに興味のない人がBGMとして聴いていてもきっと満足できるはずの滑らかで洗練された選曲。しかし、聴く人が聴くと驚きと歓びに満ち溢れている、というミックスCDです。とにかく、曲を聴き込んでいる。じぶんのように次から次へとレコードを買っては、ろくに内容も覚えぬまま消費してしまうような人間とはまったく異なるアティテュードに脱帽しました。
 このCD、まさかJet Setには入荷していないでしょう、と思いきや、しっかり取り扱いがあって、さすが、と最敬礼いたしました。ちなみにこのミックスCDには、「ビストロ de 麺酒場 ひかる」の現場で聴かせてくださったプレイは収録されておりません。

HEAVY WEIGHT BLASILEIRO

CHIBA-CHIIIBA - HEAVY WEIGHT BLASILEIRO

ビートメイカー/DJ=Chiba-Chiiibaの新作はブラジル音源ミックス!!

MIXCD |  ¥1,650 |  MUD DIRTY PRODUCTION (JPN)  |  2023-10-24 [再]  | 

 

 

 

 

 

 

 

キングジョー / What Goes on (Presspop) BOOK
 キングジョーさんが近年お描きになった、ご自身がDJとしてご出演なさるイヴェントのフライヤーを集めた画集。ご本人より送っていただきました。森本吉哲、という差出人の名前にまったく心当たりがなくて、玄関先でしばらく立ち止まってしまいましたが。ありがとうございます!!
 ジョーさんはいずれ、間違いなくロバート・クラムやボブ・ゾエルやキース・ヘリング、あるいは湯村輝彦さんクラスのポップ・アーティストとして世界的に評価される人なので、それを考えるとこの本はファースト・プレスのうちに買わなくてはいけません。ジョーさんとはまた関西のクラブでのパーティーの明け方近くの時間に、女友達に関する話をたくさん聞かせてもらったり、聞いてもらったりしたいです。

WHAT GOES ON

キングジョー - WHAT GOES ON

キングジョーによる手描きフライヤー画集!!

BOOK |  ¥3,300 |  PRESSPOP (JPN)  |  2021-12-26  | 

 

 

 

 

 

 

 

 


[イベント情報]
12/17(Fri)
『(((((((((( A ))))))))))』
DJ'S : 常盤響・川西卓・美和子・アイコスくん・木村勝好・小西康陽
at 渋谷オルガンバー
info. 03.5489.5460
http://www.organ-b.net/

12/18(Sat)
『野宮真貴×矢舟テツロー~うた、ピアノ、ベース、ドラムス。~』
LIVE : 野宮真貴(Vo)・矢舟テツロー(Vo, Piano)・鈴木克人(B)・柿澤龍介(Dr)
DJ : 小西康陽
at Billboard Live YOKOHAMA
1stステージ OPEN 14:30 / START 15:30
2ndステージ OPEN 17:30 / START 18:30
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=13054&shop=4

12/19(Sun)
『スナックひろみ』
DJ'S : tatsu(LA-PPISCH)・Soshi Tamura・小西康陽
at 渋谷Violetta Shibuya(4:30pm start)
info. info@plum-beans.com
https://violettatokyo.com/

12/24(Fri)
at 富ヶ谷フランケンの花嫁
info. 03.5454.8555
https://www.facebook.com/pages/category/Bar/フランケンの花嫁-1165331173477191/

12/31(Fri)
at 渋谷オルガンバー
info. 03.5489.5460
http://www.organ-b.net/

12/31(Fri)
at 下北沢LIVE HAUS
info. livehaus.shimokitazawa@gmail.com
https://livehaus.jp/


[関連サイト]
https://www.readymade.co.jp/journal/


[関連商品]

東京の合唱

PIZZICATO FIVE - 東京の合唱

松崎しげるとYou the Rock★をフィーチャーした大名曲が初7インチ化!!

7" |  ¥1,980 |  NIPPON COLUMBIA (JPN)  |  2024-04-23 [再]  | 

高音質のピチカート・ファイヴ

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3カ月連続で配信されてきた全83曲の中からセレクトされた33曲を収録!!

2CD |  ¥3,520 |  NIPPON COLUMBIA (JPN)  |  2021-12-18  | 

THE BAND OF 20TH CENTURY (7"X16 EP BOX)

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小西康陽監修・選曲による7インチ16枚組ボックスセット!!

16X7" |  ¥27,500 |  NIPPON COLUMBIA (JPN)  |  2019-11-23  | 

ラヴァーズ・ロック

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超衝撃の初7インチ化★ソニーミュージック期唯一のシングル曲!!

7" |  ¥1,980 |  SONY MUSIC (JPN)  |  2024-04-13 [再]  | 

女王陛下のピチカート・ファイヴ EP

PIZZICATO FIVE - 女王陛下のピチカート・ファイヴ EP

超衝撃の初7インチ化★ピチカート・ファイヴ版「夜をぶっとばせ」!!

7" |  ¥1,980 |  SONY MUSIC (JPN)  |  2018-05-15  |