KM : Japanese Hip Hop - [2021-12-17]

[Profile]

ヒップホップに根ざした音楽スタイルを保ちつつ、新しい領域に挑戦し続けている、日本で最も影響力のあるプロデューサーの1人。これまでに多くのアーティストの作品に貢献し、近年は(sic)boyをはじめ最先端のアーティストのプロデュースを手掛ける。自身名義では、2018年に『Fortune Grand』をリリースし、(sic)boyとのアルバム『Chaos Tape』と2枚のEP『(sic)'s sense』、『Social Phobia』、Lil'Leise But GoldとのEP『Sleepless 364』、田我流とのEP『More Wave』等をリリースしている。2021年6月9日に待望の2nd.アルバム『Everything Inside』を発表。

 

 

 

1. Wet / Letter Blue (Self Title) LP
アルバムのラストを飾るトラック、LarabarのKelly Zutrauのヴォーカルは言葉に出来ない美しさを感じました。あぁ、音楽って感動的なもんだったよねと、以前は当たり前にあった感情を呼び起こしてくれた感じです。ヴォーカルの処理一つに注目しても、上手く言えませんが、タイムストレッチを無理やり入れて失敗しちゃったようなデジタルの荒さがあり(おそらくテープリール・シュミレーターを極端に入れた時の効果)、極端に短いアンビエンス・リバーブが加わることで、氷の中で震えてるようなヴォーカルに聴こえます。MVでこの曲を視聴すると、ヴォーカルのKelly Zutrauがそこに居るのに、別の次元に居るような感覚に襲われます。MV by Gia Coppolaヴァージョンではイントロにストリングスのカルテット・アレンジが加わっており、個人的にはこっちのミックスの方が好きです。このアルバムからもう1曲ピックアップするとすれば、"Blades Of Grass"です。不協和音ギリギリまで揺らしたピッチのシンセは、00年代前後のエレクトロニカを聴いているような感覚を味わえます。両曲とも共同プロデューサーにBuddy Ross(Frank Oceanの『Blonde』と『Endless』のサウンドに大きく貢献したプロデューサー)がクレジットされており、彼の功績なのでは無いかと想像しています。

LETTER BLUE

WET - LETTER BLUE

ブルックリン発インディR&B~シンセ・ポップ・ユニットによる激傑作サード!!

LP |  ¥3,850 → ¥1,540 One Day Sale!! | 30SF MUSIC (USA)  |  2022-05-30  | 

 

 

 

 

 

 

 

2. Deb Never / Where Have All The Flowers Gone? (Moonlanding) LP
去年の本企画ではDominic Fikeをピックアップしましたが、同じような流れ(ラップ・シーンと寄り添い、アルバムではインディバンド・サウンドに振り切る)で今年一番輝いたのはDeb Neverなのではないでしょうか。個人的にClarioよりもDeb Neverを聴いてしまうのは、彼女のスタンスやビジュアルだけではなく、曲のミックスが今の現行のラップ・シーンを意識したものだからだと思います(もしかしたらドラムの多くはプログラミングなんじゃないかな)。アルバムの中で一番聴いたのは"Funky"。最近気がついたのですが、この曲のクレジットにKenny Beatsがいました。イントロからヴォーカルのピッチがオクターブ上に上げられているのと、アウトロでのヴォーカル・チョップエディットが素晴らしく、もう一個努力しようというプロデューサー陣の熱意を感じます(笑)。これ日本だったら一生懸命作った挙句、良いんですけどもヴォーカルのピッチ変えるのは無しですねとか言われそう。最近は僕は何も言われなくなりましたけど。ま、頑張って行きましょう。

WHERE HAVE ALL THE FLOWERS GONE?

DEB NEVER - WHERE HAVE ALL THE FLOWERS GONE?

Jam CityとMichael Percyをプロデュースに迎えた2nd.EP!!

LP |  ¥3,900 |  MOONLANDING (USA)  | 

 

 

 

 

 

 

 

3. Ross From Friends / Tread (Brainfeeder) 2LP
3、4年前はBandcampでロウファイ・ハウスをリリースしてる印象しかなかったのですが、アルバムではブレイクビーツ、シンセ・ヴァイパーウェイブ、エレクトロニックを縦横無尽に行き来する超大作です。オーガニックなシンセ音がどこか懐かしさを感じさせつつ、"XXX Olympaid"などは聴いていくと、ソウル・サンプルにシームレスにフリップしたり、他のエレクトロニック・アーティストでは聴けない音像が確かにあります。職業柄ついついDAW上でトラック数やオートメーションの複雑さを想像してしまうんですけども、今のフリップどうやった!?、そこで、謎サンプル!!!!www的な驚きが尽きないアルバムです。Aphex Twinと同じ種類の狂気を感じました。

TREAD

ROSS FROM FRIENDS - TREAD

洗練された美しい旋律を持ちながらもダンサブルでノスタルジックなモダン・サウンドを実現!!

2LP |  ¥3,800 |  BRAINFEEDER (UK)  |  2021-11-13  | 

 

 

 

 

 

 

 

4. Special Request / DJ-Kicks (!K7) 2LP
エレクトロニック~アンビエント~(レイブ的な)ブレイクビーツ~テクノ。ここら辺のジャンルについては、リリースを追っているというよりも、アルゴリズムに任せたり、Bandcampでのフィードをチェックするような聴き方をしているので、かなり無軌道なんです。それでも『DJ-Kicks』シリーズだけは家事をこなすついでに聴いてたりして、いつの間にやらリビングのソファで1点を見つめているところを妻に心配されたり。それくらい惹き込まれるDJミックスって今あんまり無いんですよね。もちろん!K7の歴史がそうさせるっていうのもありますけど、それでもこのSpecial Request回は絶品でした。

DJ-KICKS

SPECIAL REQUEST - DJ-KICKS

Special Requestが"!K7"の『DJ-Kicks』シリーズに登場!!

2x12" |  ¥4,100 |  !K7 (UK)  |  2021-03-29  | 

 

 

 

 

 

 

 

5. Pi'erre Bourne / The Life Of Pi'erre 5 (Interscope) 2LP
祝ヴァイナル・リリース。レイジ・サウンドの立役者の1人であるプロデューサーのラップ・アルバム(レイジ・サウンドについてはアボかど氏の記事を是非参照してください)。ラッパーのブレイクには優秀なプロデューサーのサウンドメイクが必要不可欠ですが、Pi'erre BourneもPlayboi CartiやLil’Uzi Vertのサウンドメイクに大きく貢献したプロデューサーです。SNSで見ているとしっかりラップ・アーティストとして自身のショーをソールドアウトさせています。フックはシンプルでシンガロンしやすく、DJがクラブ・プレイもしやすく、生活の中でBGMとしても聴ける(ヴォーカルがやかましすぎない)という、後付けで分析するとこういうテキストになるんですけども、何より、なんとなく上品ですよね彼。レイジ・トラップでTrippie Redd、Playboi Cartiを車で聴く気にならないんですけども(もうキッズじゃないしなぁ、というしょうもない理由)、Pi'erre Bourneは、落ち着きもあるし、なんとなくOKな気がしてます(笑)。応援してます。

THE LIFE OF PI'ERRE 5 (CLEAR VINYL)

PI'ERRE BOURNE - THE LIFE OF PI'ERRE 5 (CLEAR VINYL)

2nd.スタジオ・アルバムにして『The Life of Pi'erre』シリーズ最終作がクリア盤LPで登場。

2LP |  ¥4,350 |  INTERSCOPE (USA)  |  2021-09-14 [再]  | 

 

 

 

 

 

 

 

6. Tyler, The Creator / Call Me If You Get Lost (Columbia) CD
これは良く聴いてた。この文章を書いている時点(2021/12/3)ではヴァイナル・リリースのアナウンスはされて無いと思います。全編に渡ってDJ Dramaのバックボーカル(ガヤ?)が冴え渡っており、ミックステープ聴いてない世代には、この声何? ラジオ? というハテナマークが出ていそう。ノーDJヴァージョンがヴァイナル化とかだったら面白いのになと思う。フィジカルで持っていたい名作ですね。

CALL ME IF YOU GET LOST

TYLER THE CREATOR - CALL ME IF YOU GET LOST

最高傑作の呼び声高い最新6th.ソロ・アルバム!!

CD |  ¥2,000 |  COLUMBIA (USA)  | 

 

 

 

 

 

 

 

7. Vince Staples / S.T. (Motown) CD
アルバム冒頭を飾る3曲"Are You With That?"、"Law Of Averages"、"Sundown Town"は今年よく聴いたトラックです。アルバム全曲にKenny Beatsがクレジットされています。ちなみに今年の個人的ベスト・プロデューサーはTake A Day Tripp、Monte Booker、そしてKenny Beatsです。

S.T.

VINCE STAPLES - S.T.

自らの名前をタイトルに掲げた4th.スタジオ・アルバム!!

CD |  ¥2,000 |  MOTOWN (USA)  | 

 

 

 

 

 

 

 

8. Maxo Kream / Weight Of The World (Big Persona) CD
ヒューストンのラッパーの最新アルバム。一言で言うならエレガントなギャング・ミュージック。麻薬問題や犯罪行為についてのストーリーテリングが中心になってくるギャングスタ・ヒップホップをベストに入れても良いものか悩んだんですけども、少なくともこのアルバムを聴いて、この文章を書くにあたって、アメリカが抱える慢性的な貧困問題やドラッグの問題に触れることになるわけだし、ピックすることにしました。リリックについて細かくブレイクダウンは出来ませんが、アルバム通してストリートに根ざした言葉と決して明るくないストリートライフの雰囲気を纏っています。とは言えTylerが参加した"Big Persona"やA$ap Rockyが参加した"Streets Alone"はパーティーでもプレイ出来るし、基本的には淡々としたトラップ・スタイルが並びますが、中にも希望の光が見え隠れするソウルフルな部分も感じれる箇所が多々ありアルバム通して好きです。車でよく聴いてました。

WEIGHT OF THE WORLD

MAXO KREAM - WEIGHT OF THE WORLD

ヒューストンのKream Cliccのメンバーによる3rd.スタジオ・アルバム!!

CD |  ¥2,200 |  BIG PERSONA (USA)  | 

 

 

 

 

 

 

 

9. Isaiah Rashad / The House Is Burning (Top Dawg Entertainment) CD
TDE所属ラッパーのカムバック作。未だに聴くトラック"4r Da Squaw"はもう6年前になってしまっていたので、待望の新作でした。作風は変わらずトラップ・スタイルにソウル・サンプルやキー(これがTDE強いですよねほんと)ですでに極上ですが、"Lay Wit Ya"ではメンフィス感を感じました。調べたらThrree 6 Mafiaのサンプリングがあったようです。"True Story (feat. Jay Rock & Jay Worthy)"なんかは日本人には絶対作れないダークさと、煙たさの中にソウルもあって、こう言う雰囲気には強く憧れます。

THE HOUSE IS BURNING

ISAIAH RASHAD - THE HOUSE IS BURNING

from TDE およそ5年ぶりとなる待望の3rd.スタジオ・アルバム!!

CD |  ¥2,000 |  TOP DAWG ENTERTAINMENT (USA)  | 

 

 

 

 

 

 

 

10. Snoh Aalegra / Temporary Highs In The Violet Skies (ARTium) CD
このベストディスクを書くにあたって一番苦労したのは、フィジカルが出てねぇ!! に尽きる(笑)だってLil Nas X"Montero"とかフィジカル無いんですよ? (あるいはヴァイナル・リリースが年越してしまうケースも多い)。色んなところでPharrellのプロデュースを見かけた気がしますが、中でも印象に残っているのが本アルバムに収録されている"In Your Eyes"でした。808をオクターブ上げたパートでは、サブ・ベースとしてではなく聴かせるところがニクいですね。Tyler, The Creatorが2曲参加。Summer Walkerのアルバムと並べて良く聴いたアルバムでした。

TEMPORARY HIGHS IN THE VIOLET SKIES

SNOH AALEGRA - TEMPORARY HIGHS IN THE VIOLET SKIES

Tyler, The Creatorも参加したスウェディッシュ・シンガーの3rd.アルバム!!

CD |  ¥2,350 |  ARTIUM (USA)  | 

 

 

 

 

 

 

 

11. Brockhampton / Roadrunner: New Light, New Machine (Question Everything, Inc.) CD
ヒップホップのイベントにDJブッキングされてBrockhamptonやらParis Texas(これもフィジカル無し)やらをプレイしちゃうと誰も反応しない、という経験をしたのは僕だけじゃないらしく、仲間内で話していてもこういうアルバムはどうやらオルタナティブ・ヒップホップという別枠に入れられてしまうらしい。だって全くの先入観を削除して、Drakeのアルバムと聴き比べてみて欲しいのだけれど、どう考えてもBrockhamptonの音楽の方がコールドでドープだし、そもそも、オルタナティブな勢いとクリエイティブが無ければヒップホップじゃないと思うんですけど、どうでしょうか。リードシングルの"Count On Me"のMV(Dominic Fikeも友情出演)は最高なんだけど、現状100万再生行ってません。おかしい。ひどい、あんまりだ、確実にアンダー・レイテッド。でも答えは前々から実は自分でも気がついていて、おかしいのは私と、このテキストまで辿り着いたあなたの耳が鋭すぎるからです。合コンで彼女が普段聞いてるのは、まぁ、Brockhamptonとか、、と言っていたら迷うことなく結婚を視野に入れてみてください。とは言えさすが本国ではピークで6位(Billboardチャート・トップR&B/ヒップホップ)とのこと。Brockhamptonとその周りのアーティストは、自分たちの立ち位置とファンの期待値、少しの適切な量のドープが解っていると思う。L.A.のヒップホップ・シーンの最終兵器な気がします。応援しましょう。

ROADRUNNER: NEW LIGHT, NEW MACHINE

BROCKHAMPTON - ROADRUNNER: NEW LIGHT, NEW MACHINE

USヒップホップ・ボーイ・バンド、Brockhamptonの6th.アルバム!!

CD |  ¥2,300 |  QUESTION EVERYTHING / RCA (UK)  | 

 

 

 

 

 

 

 

12. Park Hye Jin / Before I Die (Ninja Tune) LP+7"
これベストに挙げる人多いと思うんですけど、どうでしょうか。個人的には入れるか迷いました。単純に悔しかったからです。やろうと思ってたって言うか、、、なんでこれ日本語で誰かやってくれなかったんだよ、と意味不明にイライラするくらい好きです。この件は、某メジャー・レーベル会議でもだからいっつも、いっつも日本は10歩くらい遅いんすよとプチかましました。それくらい好きなアルバムです。Spotifyのアーリー・ノイズ枠をSNSで勝手に進めないで欲しい、取り下げてとコメントし無しにしちゃうとこも魅力的。規格外です。

BEFORE I DIE (HOT PINK COLOR VINYL)

PARK HYE JIN - BEFORE I DIE (HOT PINK COLOR VINYL)

【ホット・ピンク・カラーヴァイナル】待望のデビュー・アルバム!!

LP+7" |  ¥4,150 |  NINJA TUNE (UK)  |  2021-10-26 [再]  | 

 

 

 

 

 

 

 

 


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